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千物語  作者: 松田 かおる


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2/8

ある夜の出来事

「お疲れさまー」

「…んー、お疲れー」

そう言うと、なみなみと酒が注がれた大ぶりな湯飲み茶碗をごちっとぶつけて、二人の男が乾杯をした。

そして二人は、黙って一気に酒を飲み干した。

「ふー、ひと仕事終わった後の酒はうまいねぇ」

片方の男はそう言うが、もう一人の男の方は、

「…そうだな」

と、どこか煮え切らない反応を返した。

「どうしたよ、『青さん』?」

『青さん』と言われた男はそれに応えず、空になった茶碗に新しく酒を注いで、また一気に飲み干す。

「…」

『青さん』に声をかけたもう一人の男は、それを黙って見つめたままでいた。




「…痛いんだよ、『赤さん』」

しばらくの沈黙の後、『青さん』がぽそっと口を開いた。

「痛い?あんなくらいで?」

『赤さん』が意外そうな表情で返す。

「…いや、あれそのものじゃなくてさ、心が痛いんだよ」

『青さん』が静かにつぶやく。

「…」

「つぶらな瞳の子がさ、あんなすごい顔をしてオレに向かってくるんだよ」

『青さん』が続けると、

「…仕方ないだろ、務めなんだから」

どこか割り切ったような口調で『赤さん』は答えた。

「まぁ、そうなんだけど…」

「『青さん』子供が好きだもんな、確かに辛いかもなー」


そしてまた黙々と酒を飲み、つまみをつまんでいく。




ピンポーン♪


しばらくして、玄関のインターホンが軽やかな音を奏でた。

「俺が出るよ」

『赤さん』がそう言って、インターホンに向かう。

しばらくやり取りをした後、一人の老人が部屋に入ってきた。

「…爺さん」

『青さん』が口を開く。

『爺さん』と言われた老人は、

「今年もありがとうございました」

そう言いながら包みを差し出した。

中には特上のお寿司と、高そうな日本酒が入っていた。


老人も加わった酒宴が静かに続く。


「悪く思わんで下さい。みんな、あんた達の気持ちは解ってますから」

老人がぽつりと口を開き、

「あんた達が、この村を災厄から守ってくれてるってことも」

そう続けた。

「まぁ、こっちもお務めだしね」

『赤さん』はそう返したが、『青さん』は黙ったままだった。




「そうだ、これを預かってきてたんだ」

老人はそう言うと、一通の手紙を『青さん』に差し出した。

『青さん』が手紙を受け取って目を通すと、そこには


「いたくして ごめんなさい」


とだけ書いてあった。


『青さん』が目頭を押さえると、すかさず『赤さん』が

「『青さんの目にも涙』か?」

と茶化す。

「ワサビだよ」

『青さん』はそう言って、なみだ巻を口の中に放り込んだ。

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