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幼馴染枠は序盤で消費されるって本当ですか?〜〜青髪幼馴染による負けヒロイン回避戦争〜〜  作者: ペンタス


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6/8

第6話 現実の生徒会とか事務仕事してれば良いんだよ!!



 体育が終わったあとの教室というのは、だいたい混沌としている。


 ジャージのまま座る者、机に突っ伏す者、なぜか元気な者。

 そして私はというと──


(はぁ……今日も、どうにか生き延びた……)


 星宮ゆらによる『しずくの正妻擬似体験会』を、精神的ダメージ大程度で切り抜けたところだった。


 正直に言おう。

 体育中、私は八割方しずくしか見ていなかった。


 怪我してないか。

 疲れてないか。

 星宮ゆらが距離を詰めすぎていないか。


(保護者か私は……)


 いや違う。

 言うなれば、古参オタクだ。


 最初期から推しているアイドルが、後からバズった曲で来たにわかファンに囲まれているのを、無言で見守るタイプのオタク。


 私はジャージの袖で汗を拭きながら、しずくの席へ戻ろうと向かうと──


「──んん!?」



 そこで、足が止まった。


 しずくが、知らない女子と話している。


 星宮ゆらじゃない。

 もっと、こう……雰囲気が違う。


 背が高くて、姿勢がきっちりしている。

 長い髪をきちんと結んでいて、声は落ち着いているけど、どこか柔らかい。


(誰だ……?)


 私の脳内ラブコメレーダーが、静かに警告音を鳴らし始める。


 その女子は、しずくに向かって微笑みながら言っていた。


「朝霧さん、さっきの体育大丈夫だった?」


「……え、あ、はい……」


 しずくが、少し戸惑いながら答える。


(なんだそれ、やめろやめろやめろ)


(大丈夫だった?とか、距離を縮めるための基本会話だろ!?)


 私は内心で警戒レベルを一段階引き上げた。


(しかも、星宮とはまた違うタイプ……)


 星宮ゆらが『明るく距離を詰めるタイプ』なら、

 この人はそう『自然に隣に立つタイプ』


 また違う厄介度が高いヒロイン。


 私は、なるべく自然を装いながら、二人に近づいた。


「しずくー、おつかれ」


 声のトーンは明るく。

 心の中は修羅場で、相手を睨みつける。


「ひなた……」


 しずくはほっとした顔をする。


(その顔で安心されるの、普通に致命傷なんですよ)


 新キャラらしき女子が、私を見る。


「あ、朝霧さんの幼馴染の……たしか結城さんですよね」


(私を知ってる!?)


「はい、そうですけど……」


 私は一瞬で理解した。


(この女、情報収集が早い)


 ダメだ、危険すぎる。

 ラブコメ世界において、事前に関係性を把握しているキャラほど信用ならない奴はいない。

 途中参加の糸目キャラぐらい裏切ってくるタイプだ。


「私、あの生徒会の──」


(生徒会ぃぃぃぃぃ!?)


 私は心の中で盛大にずっこけた。


(出たよ! 清楚系生徒会ポジ! だから、まだ登場するには早いって言ってるだろ!)


 だが、相手はあくまで穏やかだ。


「朝霧さん、さっき歩いてる時転びそうになってたから、気になっちゃって」


「……あ、はい……ありがとうございます……」


(はああああ、もう!!)


 体育後のさりげないフォロー!!

 積み重ね系!!

 後半効いてくるやつ!!


 私は笑顔を保ちながら、内心で絶叫していた。


(なんでこの学校、しずくにだけイベント集中してるんだよ!!)


 はやく、しずくを助けたい。

 でも、口を挟めなかった。


 邪魔したい。

 めちゃくちゃしたい。


 「大丈夫?」とか言われる前から

 「水飲んだ?」とか

 「疲れてない?」とか

 そういう役は、ずっと私がやってきたから。


 あんな、ぽっとでの新キャラなんかに


(ここで私が割り込んだら、絶対しずくに、変に思われる)


(独占欲強いメンヘラ幼馴染とか、需要なさすぎる最悪の属性付く)


 私は一歩、引いた。


 その選択が正しいのかどうかなんて、分からない。

 分からないけど。


 しずくが、困らないように。

 しずくが、嫌な気持ちにならないように。



「じゃあ、またね」


 生徒会の女子はそう言って去っていく。


 しずくは、少し不思議そうにその背中を見送っていた。


「……親切な人、だったね」


「……そうだね」


 私は笑いながら、内心で床を転げ回っていた。


(親切な人だって! あんな奴のどこが!? 絶対あいつ今頃しずくをおかずに──)


 私はしずくの横顔を見て、深く息を吐いた。


(ふぅ……まだだ)


(これは、ただの前哨戦)


 ラブコメ的には、

 まだプロローグの範囲。


 そう自分に言い聞かせながら、

 私は今日も、しずくの隣をキープすることだけに全力を尽くすのだった。


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