プロローグ
ツッコミだけで裁判やってます。異世界で。
異世界に転移して、まず思った。
あ、俺……スキルもチートも、なーんも持ってないやつだ。
でもその数分後、突然こう言われた。
「おめでとうございます! あなたの天職は《弁論術士》です!」
は?
「契約を解釈し、論理を操り、世界の法則を書き換える職業ですよ!」
「それただの屁理屈じゃねぇか!!」
──俺の名前は、イチノセ・レンジ。
元・司法試験浪人。6年目。
本当は弁護士になりたかったけど、現実は全然なれなくて。
毎日バイトと六法全書に挟まれて、人生詰みかけてたら……
目が覚めたら異世界だった。
それで、スキル適性を測ったらまさかの「屁理屈MAX」。
異世界初の“ツッコミ専門”職に任命されたってワケ。
しかもこの世界、なぜか争いごとは全部“裁判”で解決する文化らしい。
魔法の詠唱じゃなく、契約の文面で殴り合う。
呪文の代わりに「異議あり!」が飛び交う。
しかも――
依頼人はアホ。
被告もアホ。
検察官はイケメンなのにやっぱりアホ。
裁判長は寝てる。
まともなの、俺だけじゃね?
いや、ツッコミ精霊のコモリもいたか。
あいつ、関西弁で毎回「せやな」とか言ってくるけど、だいたい合ってる。
というわけで、俺――イチノセ・レンジは、
弁護士に“なれなかった男”として、
なぜか異世界で“弁護士っぽいこと”をやっている。
理屈(とちょっとの屁理屈)だけを武器に、
世界一どうでもいい争いを、ガチで論破する日々だ。
異議あり! それ魔法じゃなくて、ただの屁理屈です!!
異世界転移×ツッコミ裁判コメディ、いよいよ開廷!!