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第三幕:揺らぎの真ん中で
旧教室。ひとりがひとりでギターを弾いている。そこへちさとが入ってくる。
ちさと
こんなとこで何してるの?
ひとり
音が響くから。ここ、誰も“合わせて”こない。
ちさと
“わかんないけど好き”って言葉、ずっと引っかかってて。
ひとり
わたし、音が合ってても、“好き”じゃないときがあって。
“わからないまま”でそばにいてくれる人が、いちばん信じられる。
ちさと
……正しさって、安心はくれるけど、人の揺れには届かない。
もしかして、“正しさ”って、“揺れ”のための準備運動かもね。
ひとり
うん……準備したまま、そこにいてくれるって、たぶん……いちばんやさしい。
たきな
(入ってくる)情報密度は低いけど……意味はあるみたい。
ちさと
“好き”って、感染力あるんだね。
ひとり
コード名、付けるなら……“揺らぎソナタ”。