表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

冒険者パーティーを追放になった後、美少女が助けを求めて来たが、そこから、ほどほど成り上がる雰囲気のあるおっさんの話

作者: 山田 勝

「ドズル、追放する!」


「理由は?」


「おっさんだからだ!」



 冒険者御用達の酒場で追放宣言を出された。

 俺は冒険者パーティーを追放になったのだ。


 喧噪が止り。皆、耳目を集中する。


 まあ、35歳だ。そろそろ体力がキツくなってきた。

 それに、



「この歳でD級だなんて、辞めた方が良い」


 リーダーの赤毛のガルドを宣言する。言われなくても分かるが、こいつは20歳、若いな。

 冒険者はすぐに死ぬ。だから、30前に引退し。ギルド職員、師匠役、運が良ければ大金を得て第二の人生を歩むのがセオリーだ。


 俺はこのギルド最年長だ。いや、だったか?



「用はおしまい。早く出て行け」

「ほい、今までありがとうな。じゃあ、皆は上を目指しな」



 俺はこの街を出ようと決意した。

 第二の人生だ。

 しかし、スキルねえな。



 木々が所々生えている道を歩く。そろそろ昼飯にしようか。

 道沿いに丘がある。そこで昼飯をとろう。


 すると、絹を切り裂く悲鳴が聞こえた。



「キャアー、助けて、助けて~」

「待てェ~」


 美少女だ。その後をおっさんが追いかけている。金髪がゆらゆら揺れている。お嬢様走りじゃないな。

 服装から村娘か。

 だから、無視をしてパンをほおばった。


「キャアー、助けて、助けて~!」


 丘を登ってきやがった。


 女は12,3歳か?男は髭ズラの大男だ。

 親子か?

 目が真剣じゃ無い。


 人が本気で逃げる時の、人が本気で襲う時の目じゃない。



「はあ、はあ、はあ、はあ、そこの旅人さん。助けて下さい!」


 やっぱり俺目当てか。こっちに来やがった。


「無理」


 聞きもしないのに、大男が話し出した。


「やい、お前の父ちゃんの借金を返してもらおう。金貨30枚だ。今日、いくらかでも入れてくれたら少し待ってやる」


「はあ、はあ、はあ、はあ。グスン、グスン、お父さん病気で、治療費がかさむの・・・」



 どうしようか。でもな。一応、男に話しかけた。



「俺はドズル、稼ぐ方法を知っているよ」

「ほお、出来たら、その剣をもらえば、この娘は娼館に行くのを待ってやるぜ」


 男はニヤニヤ笑っている。

 騙す気ないだろう。



「いや、剣は困るな。あ、そうだ。この前、遺跡で拾ったコインがあったんだ。鑑定に出していない。それをやるから、その子、娼館に行かせるのをまってくれないか?」


「本当かよ!」


 俺は袋を出す。男が袋をのぞき込もうとしたので、


「な、何だ!」


 みぞおちを剣の柄で強打した。


 気絶してくれるかな。悶絶しているだけか。

 そのまま手を縛った。


「ヒィ、お父ちゃん!」


 美少女は震えている。やはり、親子で寸借詐欺をしていたのだな。



 そのまま親父を放り。穴を掘り。口に空気穴用の管をくわえさせて埋めた。




「ヒィ、何をするの!人殺し!」


「お金儲けをする方法を教えてやるのさ」


 三日三晩埋めたままにしておく。


 そして、少女には食料を与え。


「ヒィ、何故?」


 街に行き。安いアクセサリーや小綺麗な服を買ってあげた。


「何故?」

「だから、お金儲けの方法さ」



 3日後、親父を救出する。げっそりしているな。良い具合に汚い。みすぼらしい。


 親父をロープで縛ったまま少女を連れ市場の見世物コーナーに行った。



 二人をむしろに座らせて、高らかに叫ぶ。



「右や左の旦那様、見て下せぇ、子孝行者でございます。母親が亡くなり。男手一つで娘を育てた貧乏人でございます!」


 すると、見物人は・・・



「まあ、子供の方は身ぎれいね」

「自分の食費を削ってまで子供に使ったか」

「いいわね。では少しだけ寄付をするわ。お父さんも少しは食べなさい」


「ええ、そうです。子供が可愛すぎて、自分の食べ物を減らし服も買わずに、子に良い食事をあたえ。アクセサリーを買い与えました。

 どうか、この親父に免じてお恵みを頂けないでしょうか?」




 チャリン♩チャリン♩

 と少しずつ銅貨、中には銀貨が混じるようになった。



「あ、貴方、何をしたかったの!」


「いや、善行さ。あんたら、どうやっても詐欺の世界から足を抜けだせねえだろ?だから、正しく人を騙す方法を教えてやったのさ」


 客に良い事をしているような気分にさせて金を出させる。あんたの父ちゃんをみすぼらしくすれば良い。

 男単体なら何やっているのだ。働けとなるが、小綺麗な子を隣に置けば信用する。


「嘘は言っていない。ギリギリな」


 合計、銀貨3枚と大銅貨3枚・・・これは腕の良い大工の給料よりも上だ。技能兵と同じぐらいか?


 この芸は、


「親父、お前はいつもみすぼらしくしろ」

「ウグ、へグ、グスン」


 いつも親父の方をみすぼらしくしなくてはならない欠点がある。

 群衆は馬鹿じゃない。結構、見抜く。



 俺は親子と別れ、しばらくこの街に住むことにした。


 何か、商売できないかな。

 あの親父は一週間ほど大入りだったらしいが、すぐに贅沢を覚え。

 場所代も払えないほど落ちぶれ。市場を追い出された。他で芸をしているらしい。


 やっぱり、五流の詐欺師だ。人を本気で騙す気がないのかな。


 しばらくすると街のストリートチルドレン達が相談に来た。


「あんた、グズルっておっさんだろ。俺にも何か金儲けの仕方教えろ」

「アホ、敬語を使え。ドズルだ。ボケ!」




「分かったよ。教えて下さい!」

「まあ、良いだろう。善行をするんだ。その代わりおひねりの1割をもらうぜ」

「1割って何だよ」

「ああ、そうか、指十本あるだろ?そのうちの一本分もらうって事さ」



 街にはコジキがいる。

 コジキギルドに話を通し。老婆を一人雇う事にした。


「ヘン!わたしゃ、昔は街一番の娼婦だったのさ!お大尽は競ってわたしを競ったものさ」


 こいつの経歴ロクでもないな。


 やることは、そいつを10歳くらいのストリートチルドレンに背負わせて、今度は親孝行者さ。街中をねり歩く。


「皆様、聞いて下さい。こんな小さな子が老婆を背負っています。この子はトム、札付きの不良でございます。しかし、生きるために不良をやっていた。

 同じ境遇の老婆を、自分の母に見立てて孝行をしているのでございます」


 これも何人か感心をした。


「俺も母親と離れて暮らしている・・・グスン、親孝行しなければ、それを思い出してくれたお前におひねりをやる」


 チャリン♩


 と籠にお金を入れてくれた。籠はストリートチルドレンの見栄えの良い幼女に持たせている。

 良い具合に鼻水を流している子だ。


「グスン、お兄さん。ありやとー」

「ああ、頑張りな」


 これも父性、母性本能をくすぐるだろう。


「フン!トム、重くないかい?」

「グスン、軽過ぎるよ。お婆ちゃん」

「フン!生意気に気を使うな」


 あの老婆は少しだけ変わった。



 何組か作り。街の人もこれは芸と認識しだした。

 俺も小銭を稼ぎ。ストリートチルドレンの帳簿係になった。


 家を借り。時々、子供達に読書計算を教え。ほどよくノンビリと暮らせるようになった。





 ☆☆☆領主館



「旦那様、税収があがりました・・」

「な、何と、盗みが減ったと報告が来たが」


 ワシはこの地の領主、マッケイン・フォルスト

 知らないうちに街の治安が良くなっている・・・


 頭を悩ませていた。領都のストリートチルドレン問題が解決に向かっているだと!


「どんな知恵者がついた」

「はい、ドズル、元冒険者35歳・・だそうです」

「よし、視察に行く」



 何でも、家を一軒借りて子供達と共同で暮らしていると言う。

 貧民街の元教会だ。

 門からこっそり中をうかがった。



「よおし、皆、今月のノルマは金貨3枚だ!」


 リーダーらしき少年が子供達を集めて発破をかけている。

 だが、大人が現れた。あれがドズルか?


「阿呆、トム、この仕事、ノルマなんてねえ!出来る仕事をしてその結果だ。お前達、いや、俺も街の皆様のおかげで暮らしている事を忘れるな!」


 少年の頭をコツンと叩いた。


「今日は街の皆様に感謝の掃除の日だ!行け!」


「「「はい!」」」



「そこの方、ドズル殿か?ワシは、この地の領主、マッケイン・フォルストである」


「どうもです。ドズルです」


 話を聞いた。


「子供達は何故、ワシが資金を出している孤児院に入らない」

「それは、軍隊式だからです。いえ、正確には歪んだ軍隊式だからです。心をゆがめます」


「ほお、貴殿は軍隊出身か?」

「ええ、十代の頃、兵卒でした・・」

「何故、辞められた?食うに困らない生活は出来ただろう?」

「いえね。全滅をしたのです。俺以外全員ね」


 話を聞いたら、ユーグリッド戦役に参加した二等卒と判明した。


「あれはヒドい戦いだった。四方向から魔王軍に攻められた・・・でね。怖くて、怖くて仕方ないのです」


「なら、何故に名乗り出ない!君のいた部隊のおかげで魔王軍の侵攻を遅らせ。大反攻作戦が出来たのだ。生き残りには報償が授与されると聞いたが・・・」


「・・・出来ませんね。皆、最期まで勇敢に戦ったのに、俺は当時の上官から、全滅する直前、新兵は地中に隠れろと命令を受けて、筒をくわえて穴に埋められたのです。新兵で生き残ったのは俺一人でした。

 軍隊って優しさがあってこその厳しさです。子供達は厳父は受け入れますが、ただ折檻をするだけの孤児院は嫌いなのではないですか?」


「なら・・・屋敷に来てくれ。頼みたい事がある!」

「はい、仕事なら喜んで」



 ワシは悩みを打ち明けた。娘の事だ。気を病んでずっと部屋に籠もっている。婚約を破棄されからは部屋に食事を運ばせている。何とか元気に出来ないか?


「なら、少し、お待ち下さい。うってつけの人材がいます」





 ☆☆☆伯爵邸



 俺は冒険者パーティーを追放になった後、最初に出会った美少女を探し出した。

 街の外れでまだ子孝行の芸をしていた。


 二人ともげっそり痩せていて誰も子孝行と思わずにおひねりを出していない。

 人は一度成功をしたらその方法に固執する傾向にある。

 俺のやった事は、美少女を伯爵邸に放っただけだ。



「キャアー、こんなに美味しい食事!」

「キャアー、ドレスにネックレスまで!」

「キャアー、執事イケメェ~ン!」


 触れ込みは義妹候補だ。

 わざとお嬢様の部屋の前で騒ぎを起させた。


「まあ、この家の跡取り様!イケメン!リディを・・何だっけ。エスコートして下さい!」

「君、姉上の部屋の前で、騒がないで頂きたい」

「でも、姉?知らないわ。わたし、この家の跡取り娘になるんでしょう」



 調子に乗っているな。

 お嬢様の部屋から物音がするが出てこない。


 じゃあ、今度は第2幕だ。

 ストリートチルドレンからハウスチルドレンに出世した子供達を集めて、お嬢様の部屋の前でパーティーをした。



「グスン、これ、食べていいの?」

「そうさ。チキンだ」

「チキン?今日はお祝いの日?」

「違うさ。貴族は毎日食べているのさ」


「パンもスゲー柔らかい、スープに浸さなくても食べられるよ」


 ワイワイ、ガヤガヤしていたら、


 バタン!とドアが開き。お嬢様が出てきた。

 あれは寝間着?俺が見ていいのか?


「貴方たち!わたしが苦しんでいるのに!何で騒ぎを起すの。何故、楽しそうなの・・・そして、何て可哀想なのーーーー!」


 ウワ~ンと泣き出した。伯爵と同じ黒髪を肩甲骨まで伸している。

 これが貴族令嬢か。肌は白いな。美人だな。何で男は振るかな。


 そして、俺は金をもらって退散しようとしたら、令嬢が俺の袖を掴む。


「ねえ。教えて、何でこんな方法を採ったの?」

「お嬢様は怒らせたら部屋を出てくるのかなと思いました」

「どうせ、令嬢の恋の悩みなんてお気楽でいいなとか思っているでしょう」

「いいえ。そもそも令嬢とは初めてお会いしました。分かりませんよ」


「婚約を大勢の前で破棄された私はどうすれば良いかしら。もう、傷物令嬢だわ」


「大丈夫です。お嬢様は優しい。怒ったが子供達の事を悲しんだでしょう。

 だから、きっと、素敵な恋が出来ますよ。市井の演劇ではスパダリものが流行っています。傷ついた令嬢の前にさっそうと年上男性が現れる。

 一度、見に行かれては如何でしょうか?」


 と気休めにもならない事を言って邸を去った。


 あの美少女は、何と使用人になった。

 伯爵は何を考えているかは分からないがお代をもらったから文句は言えない。


 あのお嬢様とバトルを繰り広げているそうだ。


「お嬢様!いらないドレス下さい!欲しーわ!」

「まあ、これはチャリティーに出しますわ。ドズル様の孤児院に寄付しますのよ」


 欲しがり使用人として名が広まっているらしい。





 ☆☆☆冒険者ギルド


 俺はガルドに呼ばれた。


「ドズルを追放してから、何かおかしくなった。お前、何かしたか?」

「いや、何もしてないよ」

「教えろよ。皆、ギグシャクしている。怪我人が出たし辞める奴も多い」

「銀貨1枚だ」

「チィ」


 舌打ちをしながら銀貨を机の上に置いた。俺は懐にしまいながら教えてやった。


「それは俺を追放したからさ。それも、酒場で大勢の前でな。普通、追放するにしても、労をねぎらい。俺のプライドを立てて追放すれば、皆の見方は変わった。

 最年長冒険者だったけど、冒険者の間では生き残っているだけで尊敬される風潮がある」


「俺はどうすれば良い?」

「叱る時は周りに人がいないときだ。ガルドは俺を皆の前で叱り飛ばした。今は、俺の代わりにパーティー員を無遠慮に人前で叱り飛ばしているのではないか?」


「・・・・・・」


 黙ったよ。

 他のパーティーから引き抜きされて、今は解散の危機らしい。

 あのような追放するリーダーなら、引き抜きも遠慮がないと言う事らしいな。



 その時、ガタン!ドアが勢いよく開いた。

 あの令嬢が冒険者ギルドまで来やがった。


「ちょっと、ドズル様!私との約束を破って、男と会う何てヒドいですわ!男色家かしら」

「はあ、事前にお知らせしたはずですが・・」

「この前、スパダリものを見に行けと言いましたよね。今から行きますわ!」

「はい・・・では」


「フン」

「あの、フンって」

「エスコートですわ!この前、教えて差し上げましたわ!」



「え、ドズル・・・」


 ガルドが手を伸して俺を止めようとしたが、こちらは今の顧客だ。

 うちのハウスチルドレンに寄付をしてくれている。


「行きますわよ!」


 何だか、皆、幸せそうで良いな。俺はこのまま領都の役人になるらしい。

 孤児院関係のな。


「あら、私も財産管理人補佐になりますわ。慈善関係ですわ。貴方は部下になりましてよ」


「それは、誠心誠意を込めてお仕えさせて頂きます」


「フン」


 しばらくして、身分差婚が世間を賑わせ。領地は繁栄し王家まで耳に入る事になる。

 ドズルは人の事は分かるが自分の事は分からない。

 無自覚おっさんの宿命なのかもしれないと広く吟遊詩人が出世譚として昔話風に歌いまくったと伝えられている。




最後までお読み頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ドズルって名前だとどうしてもあの紫髪のゴリラ顔が浮かんでしまうw
傷ついた令嬢の前にさっそうと、甘やかさないけれど優しくて隠れ有能な年上男性が現れる…w 年齢差は倍くらいなのでしょうが、婚約破棄された傷物令嬢であればこそ、身分差結婚もなんのそのですねw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ