悪戯な双子ジェフとレイ
突然の告白にウェンディの顔は真っ赤に染まった。
「本当に可愛らしい……だが、しかし」
そんなウェンディを愛しげに見つめていたディルだが、短くため息をつくと彼女の隣を通り抜けて唐突に扉を全開した。
「盗み聞きは良くないといつも言っているのにな」
扉に寄りかかりながら中の音を聞こうとしていたのだろう。ドタドタッと音がして双子が部屋に倒れ込んできた。
「おや、ルネッタまで……」
双子のようにバランスを崩すほど夢中になってはいなかったようだが、ルネッタも中の様子を覗っていたようだ。
彼女は珍しく気まずそうな表情を浮かべた。
「やれやれ、そんなに俺たちのことが気になるか」
「「へへへ……」」
双子は照れくさそうに立ち上がりニッコリ笑った。
「気になるよ、兄様とウェンディさんが仲良くなるか」
「兄様がウェンディさんにどんなことを言うのか」
「そうか……」
ディルがウェンディの手を優しく持ち上げて口づける振りをした。
顔を上げ目を丸くした三人に微笑みかける。
「この通り、ウェンディに愛を告げて何とか妻になってもらおうとしているところだ。邪魔をしてくれるな」
「な、ななな!?」
ウェンディは再びの告白にひどく動揺した。
ジェフとレイは嬉しそうに互いの手の平をパチンッと合わせ、ルネッタはウェンディにつられたように真っ赤になった。
「あなたたち、行くわよ!」
「「え〜っ、もっと二人の様子が見たいよ〜」」
「邪魔したらだめなの!!」
ジェフとレイはルネッタにズルズルと引っ張られて去って行った。
ようやく部屋に静寂が訪れる。
「はあ、すまないな。君が来てくれるのを全員心待ちにしていたものだから」
「私のことを、心待ちに?」
「それはそうだろう。新しい家族なんだ」
ウェンディは淡い紫の目をぱちくりとしてから、ディルに視線を向けた。
「ディル様も、ですか?」
「……」
ディルの耳が赤くなる。先ほど弟妹の前ではあんなに余裕な表情を見せていたのに、ウェンディがつい口を滑らせてそんなことを聞いただけでディルは赤くなった。
慌てて腕で顔を隠そうとしている姿は、なんだか可愛らしい、ウェンディは思わず微笑んだ。
「……結婚についてはもう少し考えたいですが、私、もう皆さんのことが好きになってしまったようです」
「そうか……」
ディルはまだ少し頬を赤くしたまま嬉しそうに笑った。
二人の距離が一歩近づいたそのとき「ママー!!」と泣き叫ぶミッシェルの泣き声が聞こえた。
「ミッシェルが泣いているみたいです」
「ほとんど泣いたことのない子だったが、珍しいな。いや、君に甘えているのか」
ディルとウェンディはそろってミッシェルをあやした。
ミッシェルが笑った頃、ディルは申し訳なさそうに「仕事を残してきた。そろそろ行かねば。侍女たちが急に引退したこともあり、君に図らずも負担を掛け……」
「いえ、楽しいです! ミッシェルもルネッタもジェフもレイもとても可愛らしくて、私幸せです」
「……ありがとう。この埋め合わせは必ず」
ディルは再び辺境伯騎士団の職務に戻ってしまった。
家を出るときものすごく慌てていたから、やはり無理に抜け出してきたのだろう。
ウェンディはそんな彼を見送り、引き続き忙しく働き出すのだった。
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