【電子書籍配信記念SS】ご褒美の小さな薔薇
ミッシェル・バルミールは間もなく3歳。
金色の髪に青い瞳の可愛らしい女の子だ。
彼女の目に時々浮かぶ美しい光は花の形をしている。
「……ママのお花」
ミッシェルは空を見上げた。
そこには雲が浮かんでいるだけだ。
しかし、彼女の瞳には何か別のものが映っているようだ。
ミッシェルが持つギフト『彼方の目』は未来を見通す。
時々彼女が発する不思議な言葉、それは未来を視たがゆえだ。
「どこかな〜?」
ミッシェルはウェンディを捜し始めた。
兄、ディルの妻として迎えられたウェンディは、ミッシェルにとって母親代わり。
いつも優しいウェンディが、ミッシェルは大好きだ。
「ママ!!」
短い手足をちょこまかと動かして走り寄ったミッシェルは、洗濯を干していたウェンディに抱きついた。
ウェンディは、手を止めてミッシェルを抱き上げる。
「ジェフとレイはどうしたの?」
「兄さまたち、たたかってる」
「……剣の練習でもしているのかしら?」
双子の兄妹ジェフとレイ。二人のギフトはディルと同じ『戦神の両手』だ。
どんな武器でも扱える力を持つ二人の事だ。周囲が見ればヒヤリとするような戦いを繰り広げているかもしれない。
「ママーお花!」
「花? 聖女の薔薇のことかしら?」
「うん、ほしーの!!」
「いつでも出せるわけではないのよ?」
元聖女であるウェンディは、精霊が祝福したものに与えるという聖女の薔薇を生み出すことができる。
だが、それだって思い通りに出せるというわけではない。
精霊は気まぐれなのだ。
「ミッシェル、おてつだいする!!」
「そう、ではお願いね」
洗濯物はあとタオルを3枚干すだけ。
ウェンディが抱き上げると、ミッシェルはご機嫌でタオルを干す。
3枚のタオルが、他の洗濯物の一緒に風に揺れる。
すると空からいつもよりずいぶん小ぶりな薔薇が一輪降ってきた。
「まあ……お手伝いして偉いと精霊様が褒めてくださったのかしら?」
「わーい!!」
ミッシェルの髪に飾られた聖女の薔薇。
ミニチュアのように小さな薔薇は、その日一日で消えてしまう。
だが、その後もミッシェルがウェンディのお手伝いすると、時々空から降ってくるのだった。
今日もミッシェルはご機嫌だ。
「せいれいさーん、お花たくさん!! ありがとー!!」
彼女の鼻歌に答えるように、空気がキラキラと輝いたように見えた。
ウェンディは、もしかしてミッシェルこそが誰よりも精霊に愛されているのではないか……そんなことを思うのだった。
本日、電子書籍配信です。
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