婚約と王家と辺境伯一家 3
王太子と国王夫妻、彼らそれぞれとお茶会をする機会はあれど、全員とテーブルを囲う機会などまずない。
「よく来てくれた」
「はじめまして」
「待っていたよ」
国王夫妻と王太子はにこやかにバルミール一家を出迎えた。
王家主催のお茶会に招かれているのは、王国の重鎮、高位貴族、神殿の高位神官など、国の中枢を担う者ばかりだ。
王太子の婚約者の決定は、国の重要事項だから招かれた者たちの顔ぶれがあまりに豪華なのも当然のことと言えよう。
しかし、そこに現れたバルミール辺境伯家は堂々たるものだった。
国王夫妻と王太子の前に歩み出た当主、ディル・バルミールは優雅に礼をしてから口を開く。
「お招きいただきありがとうございます。ディル・バルミール参上いたしました」
「いつも以上に堅苦しいな、王家の縁戚になるのだ。もっと砕けても良い」
「ありがたきお言葉」
ディルは青い目を細めて笑った。
美貌の辺境伯、凜々しくも美しいその笑みに誰もが感嘆した。
「お招きいただきありがとうございます。陛下に祝福を」
続いてウェンディが一歩歩み出た。
良い噂のない聖女を笑いものにしようとしていた人々は、彼女があまりに美しく神秘的だったため唖然とした。
いつも汚れた服装で神殿の床を磨き、騎士と一緒に血や泥にまみれていた彼女しか知らない神官たちはもはや呆然としていた。
唯一、中央神殿長フェルディナント・リリングだけは、すでに知っていたとばかりに口の端をつり上げた。
次いで歩み出たのは、本日の話題の中心であるルネッタ・バルミールだ。
彼女の美しさは筆舌に尽くしがたい。
今後恐らく、王国中の画家がこぞって彼女を描こうとするだろう。
「ルネッタ・バルミールでございます。両陛下並びに王太子殿下にお招きいただいたこと誠に光栄でございます」
「君はこちらへおいで」
「……ええ」
王太子が差し出した手に手を重ね、ルネッタは王家側へと歩んだ。
これから先、彼女の扱いは王族に準ずるものとなる。この場でそれが明らかとなった。
「ジェフ・バルミールでございます」
「レイ・バルミールと申します」
双子も揃って挨拶をした。
悪戯している姿ばかり見ているウェンディは、四歳にしてはあまりに完璧な挨拶に驚きを隠せなかった。
最後にちょこちょことミッシェルが歩み出て「ミッシェルです」とルネッタの真似をしてスカートの裾を摘まんで挨拶をした。
「っ……可愛らしいこと!」
「おうひさま」
王妃が感激して手を差し伸べると、怖いもの知らずのミッシェルは彼女の腕に抱かれた。
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