ゆいこのトライアングルレッスンU〜バスケ部たくみと中秋の名月〜
トライアングルレッスンウィーク!
毎日投稿中。
巽さん誕生日おめでとうございます!!
「ゆいこ、誕生日おめでとう」
「ひろし、ありがとう!」
わたしは、ひろしからプレゼントを受け取った。
「見てもいい?」
プレゼントを開けると、ぬいぐるみが顔を出した。
「わぁー! これ、前に水族館に行った時、わたしが可愛いって言ってたペンギンさんだ!」
「実は、あの時、こっそり買っといたんだよ」
「そうだったの!? さっすが、ひろし!」
「ゆいこは、ペンギンが好きだもんな」
「ありがとう! 一生大切にするね!」
「一生って…」
ひろしは、クスッと笑った。
「そういえば、今日、たくみは?」
「アイツかぁ…。いつもの場所で、バスケの練習でもしてるんじゃないか?」
「そっか…」
「薄情だよな。まったく、ゆいこの誕生日くらい祝ってやれってのに…」
× × ×
「やっぱり、ここにいた」
「あれっ? ゆいこ!?」
「こんな時間まで、1人で練習してたんだ」
「試合も近いからな」
「たくみがバスケしてるところ、カッコイイんだよね〜」
「それ、もっと言ってくれる? ゆいこに応援されると、めっちゃ頑張れるんだぜ!」
「うん、分かった」
わたし達は顔を見合わせて笑った。
「その練習着、まだ着てくれてたんだね」
「あ、これ? だって、ゆいこが誕生日に俺にくれたものだから」
「誕生日…」
たくみは、バスケに夢中で、わたしの誕生日は忘れているのだろうか。
でも、今は大事な時期だ。たくみを困らせたくはない。
「まんまるお月様は、空が明るいなー」
たくみは、夜空を見上げた。
「ゆいこも早く帰らないと、狼男が現れるぞ」
「もう、何言ってんのよ!」
「俺が変身しちゃうかもよ? ワァオーーン!」
たくみは遠吠えしてみせた。
「ホント、何やってんの?」
わたしは笑った。
「でも、その前に、誕生日プレゼントをあげないとな」
「忘れてなかったんだ!」
「ゆいこの誕生日、忘れるわけないだろ?」
たくみはそう言うと、わたしに微笑んだ。
「俺、決めたんだ。もう、ひろしに遠慮しねぇって」
「ん?」
たくみは、おもむろにバスケットボールを手にした。
「ゆいこ、このシュートが決まったら、抱きしめてもいいか?」
「へっ…、な、何よ急に!?」
突然のたくみの言葉に、わたしは困惑した。
たくみは、真剣にゴールリングを見つめ、迷うことなくシュートを打った。
ボールは放物線を描き、リングにすっぽりとおさまった。
どうしよう! 入っちゃった!
胸がギュンと締めつけられた。
たくみは、わたしを抱き寄せると、耳元で囁いた。
「ゆいこ、お前が好きだっ…」
「っ…!?」
声にならない声が、わたしから漏れた。
今夜は、中秋の名月だ。
お月様だけが、わたし達を見ていた…。
明日は、バーテンダーたくみの、ちょっと大人な夜です。