3.配達、そして不穏
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情報通りにコンビニに着いた漆紀だったが、コンビニ前にはパンクヘアーの男だけでなく他にも暴走族の名に合う髪型の男が3人いた。
少し気が引けて来るが、仕事は仕事なので四人組に近付いて、小包を出す。
「あのー、受取人の方で間違いないでしょうか?」
恐る恐る漆紀が尋ねると男たちはまず最初に睨みを効かせた。ここで下手に臆するとかえって機嫌を損ねるので真っ直ぐ恨みなく目を合わせて小包を前に出す。
「んん? あー、こりゃオレらのだわ。ご苦労な、帰っていいぜ」
そそくさと小包を受け取るなり、男達はすぐさまバイクに乗り轟音を立てて走り去って行った。
「ふぅ……やっぱりあの中身ってクスリかなんかなのかな?」
そんな事を思いつつ漆紀はそそくさとバイクに乗った。先程の暴走族四人組の轟音が徐々に小さく虫の羽音の如く聞こえて来て安堵していたのも束の間。
その轟音を掻き消すかの様に、遠方からボンっと中学校の理科で水素を集めて火をつけた時の小さな爆発音のような音が聞えてきた。
「なんだ、今の?」
音のした方を確かめるべく、コンビニから車道に出てみると。
先程暴走族が向かった方向の空に黒煙が細々と立っていた。
(まさかさっきの暴走族の連中が事故って爆発が……? いや、あいつらは警察を何度も撒いてるような逃げと避けのスペシャリストだぞ。こんなあっさり事故なんて……)
しかし野次馬根性で行ってもどうにもならない事だし、先程の暴走族でないにせよ事故が起こったのなら迂回する必要があるので野次馬行為など持っての他だ。
「とにかく帰るか」
漆紀はターンして早々と帰宅を始めた。
一抹の不安を残したまま。