15.奇襲で次々倒れる夜露死苦隊たち!
午後11時、武蔵村山市内中原4丁目の路上にて。
この中原4丁目は武蔵村山市の端であり、市内では数少ない農耕地が辺り一帯に広がる場所である。
街灯はなく、上を見れば広がる宇宙と何ら変わらぬ夜闇が周囲に広がっていた。
追手を一度撒いた漆紀と七海はすぐさま奇襲を仕掛ける為に市内を歩き始め、この中原4丁目に足を運んだ。夜露死苦隊は念入りにも農耕地の広がる中原4丁目でも巡回を行っていた。人数はたった7人で、農耕地ゆえかバイクで走るには不向きな地形ゆえに彼らはその足で歩いていた。
夜露死苦隊の7人の男達は周囲の農耕地を散りじりになって捜索していた。手には懐中電灯を持っており、夜露死苦隊の本気度が伺える。
夜闇に紛れて漆紀と七海は夜露死苦隊の男達に殴りかかり、喧嘩を始めた。隊を成していればまだしも、散開して周囲を捜索しているのが仇となった。
「ッ!」
「ぐえっ!?」
漆紀と七海はほぼ同時に夜闇から飛び出し、夜露死苦隊の男の顔面へとドロップキックをぶち当てた。たった一撃だが、顔面にドロップキックを当てればいかに喧嘩慣れした暴走族だろうとひとたまりもなく悶絶し地べたに倒れてのた打ち回る。
「おい、どうした! おいどこだ、なにがあった!」
異変に気付いた他の夜露死苦隊の男へと奇襲すべく、撃破したばかりの構成員の顔面を強く踏みつけてから夜闇に隠れて敵の現在地を確認する。
(他のゾクはあと5人でこっちに来てるのが2人、奥の畑を調べてる3人は気付いてない)
(アタシらに気付いてるのはたった2人……イケる!)
畑に置かれた農具の陰に隠れつつ、近付いて来る夜露死苦隊の2人をじっと待つ。
(まだか……もうちょい……ここだ!)
漆紀が飛び出すと、同時に七海も物陰から飛び出して、夜露死苦隊の2人に飛び掛かった。
「うわっ!?」
「うぐっ!!」
漆紀は先程と同じくドロップキックを、七海は飛び膝蹴りを敵の顔面に当てて一気に打ち倒す。
二度も不意打ちの初撃が成功したとはいえ、漆紀と七海は油断する事無く打ち倒した男へと追い打ちをかける。倒れ込むなり男の顔面を二度、三度と素早く踏みつけて痛めつける。
(仕上げだ!)
漆紀はしばらく行動不能にさせるべく、今度は股間を思いっ切り踏みつけた。すると、七海も良からぬ笑みを浮かべて打ち倒した男の股間を踏む。
「ぎゃあぁぁぁぁ!?」
「うっ……」
この金的攻撃は強力ゆえか、悶絶しつつも汚い金切り声を上げる。金切り声は悪目立ちして、離れた位置の畑を捜索していた夜露死苦隊の男達3人がこちらの方を向いて何があったのかと探りにやって来る。
「次だ、あいつらもやるよ辰上」
「わかってら」
こうも簡単に奇襲が上手くいくと、漆紀と七海は夜露死苦隊の一人一人は脅威には見えなくなってしまった。再び二人が夜闇に紛れて隠れて僅か数十秒後、男三人分の新たな悲鳴が武蔵村山市中原4丁目に響いたという。