7.夜露死苦隊総長・高月
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都内某所、暴力団萩原組事務所にて。
「おい、若ぇの。3人死んだそうだが、黒沢組の奴らの仕業らしいな。どうするんだ?」
萩原組若頭の男は、夜露死苦隊総長である高月という男に問い詰めていた。
「向こうのパシリにも同じ目合わせるしかねぇって思ってます。次の対戦で3人きっちり殺ります。木場の兄貴には死体処理だけどうにかして貰えれば、殺ってみせます」
木場と呼ばれた若頭の男は顔を顰めて高月に語る。
「そうか……あと、いい加減に兄貴はやめとけ。オレはもうこの組の若頭なんだ。お前らゾクじゃなく本職やってんだ。ゾクと本職はしっかり分けなきゃいけねぇ。分かってるな?」
「へい。わかっとります」
「今の時代じゃ敵は黒沢組だけじゃない。他にもヤクザやゾクはいるし、海外勢力も少しずつ介入して来てる。サツと政府は昔からの敵だが、学徒会も厄介になって来た。このままじゃなし崩しでウチの組一つが潰れちまうのもあり得る話だ。今が張らなきゃいけねぇ時だ。やれるな?」
木場は意気込んだ表情で高月に言い聞かせる。木場は今こそが自分が手に入れた若頭というポストを固める為の好機と踏んでいる。
この縄張り争いで木場主導で萩原組優勢に持ち込めれば、木場は確固とした立場を手に出来る。
「しかし木場さん、この件だけで俺を呼んだわけじゃないはず……」
「そうだな。今回萩原組優勢で向こうに無理難題の和解条件を吹っ掛けて停戦まで持ち込めれば、オレの立場だけじゃない。お前も取り立てて貰えるぞ」
「それ本当ですか!? わかりました……こうなりゃ殺るしかねぇ!」
そう意気込んで覚悟を決めた高月に、どこか打たれた木場は、横に飾られていた一本の日本刀を手に取り、それを高月に渡す。
「こいつを持って行け、記念だ。必ずやり遂げろよ。死体処理は任せろ、火葬場をフル稼働させる。ウチの組の敷地内にある焼却炉も土葬場も全部使う。奴らを殺りまくれ、〝任せたぞ〟」
期待に応えるべく、高月は力強く日本刀を受け取った。
「うっしゃあああっ、やったらあああぁぁぁぁあああッ!」