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唯我桃

 瓦礫が転がる音がして、水沼さんが近づいてきた。

「元気を出してください……天羽さん。機関員なら仕方のないことです。灰庭くんは少しそれが早かっただけ……」

「くそぉ……」

 僕は握った拳で床を叩く。僕がしっかりとどめを刺していれば……。

「灰庭は訓練の時から油断しがちだったやんな。ロクに相手の手のうちも知らないのに〈剛〉を緩めるとか。まぁ向いてなかったってことやろ。それから殺気堕ちはしぶといからちゃんと殺さないと駄目やで」

 萬屋さんはスマホを取り出し〈機関〉の事務員に殺気堕ち討伐完了と試験終了の報告をする。

「まぁ、元気出して次いこうや! 今からあんたらはB級やで!」

 嘘くさい笑み、嘘くさい口調で、そうのたまった萬屋さんを最後に、僕の意識も暗転していった。僕の左腕は斬り落とされ、身体も散々削られた。気持ちもそうだったが、体が限界だった。

 

「えー、晴れて君達はB級となった。これからは他の戦闘機関員と同様に任務にあたってもらう」

 僕は戦闘指令室の長官、鬼瓦仁室長を前に緊張しながら立っていた。僕の他には水沼さん、そして訓練で一緒になったこともある唯我桃さんだった。

 唯我さんは一言でいうと、才能がある代わりに自尊心が果てしなく高い女性だった。歳はわからないが恐らく二十歳前後だろう。

 僕達と同じ日に別の二人とB級昇格試験を受けていたはずだけど、今ここに来ているのは唯我さん一人。ということは……。

「……あ? なに見てんだよ? 可愛すぎて見惚れたってか?」

「い、いや別に……」

 案の定、睨み返された。

「……ここにいない三人については残念だが昇格見送りとなった。一人は死亡。二人は実力不足だ。そこの唯我が単独で殺気堕ちを討伐して無事だったようだがな」

 僕は先ほどとは違った意味合いで思わず唯我さんに目線をやる。唯我さんは満面の笑みでピースを返してきた。

「……話を戻すぞ。お前らには昨年空きができてそのままになっていたBー3班となってもらう」

 鬼瓦室長はそのスキンヘッドを光らせながら重々しい口調で言った。

「任務は追って連絡が来るだろう。今日は与えられた部屋を確認して班員同士で親睦でも深めるといい。それでは退室してくれ」

 僕達は頭を下げて部屋を出る。唯我さんも意外なことに頭を下げた。

「……あんなんだよ、さっきから」

「いや、頭を下げるんだなーと……」

「別に然るべき相手には下げるぜ? めんどくさいことも随分と省けるしな。それよりアタシはアンタに興味があったんだ。たまーに訓練で見てたぜ? なかなかの出力の〈術〉だったじゃねーか」

 唯我さんはビビり散らかす僕に顔を近づけ、舌なめずりをして言った。

「タイマンしようぜぇ? B級訓練場、使えるようになったんだろ?」

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