表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/74

VS海堂王威 Re2

 ぷんぷく丸の左足には今雀ちゃんから受け取った殺気が凝集されている。〈剛〉の滑らかな攻防力移動だ。この操作自体は雀ちゃんがやっている。

 僅かに顔を顰めた海堂だったが、ダメージはそれほど通っていない。しかし体勢を崩したここが攻め時だと僕は判断した。

「《劫心・三連》……ってうぉおおお?」

 ぷんぷく丸の腕を噛み砕かんとしていた紅龍は、ぷんぷく丸が瞬間移動したあとも追うかと思ったが、僕に狙いを変えてきた。放たれた《紅鳴砲》に対し、僕は海堂へ発動しようとしていた殺気術の発生位置を変えて迎撃する。

 とはいえ三連では完全に防ぐには威力が足りず、〈剛〉を強化して受ける。

「クソ……ッ!?」

 吹き上げられた河原の小石の向こうから顎を大きく開いた紅龍が迫っている。僕はとっさに開かれた上顎に腕、下顎の先に足をかけ、なんとか噛み砕かれることは回避する。

 紅龍は突進の勢いのまま僕を連れて斜めに宙を駆け上がる。そして再び口腔を紅く輝かせた。

「ッ……!」

 僕は《劫心掌・翔》で真横に移動し、〈放〉をかわす。しかしその先にいたのは《尖蓋龍》だった。

「いつの間に……」

 しかし僕の殺気術と《尖蓋龍》は相性がいい。近くで《爆心》を使えば大体脆い胴体部分に当たるからだ。

 僕へ向けて突進を開始する《尖蓋龍》の真横で殺気を爆発させる。確実に胴体に当たった、はずだった。

「嘘だろッ?」

 しかし《尖蓋龍》は爆発に一切構わず、突っ込んで来る。僅かに狙いが逸れたおかげで、その鋭く伸びた額は僕の左肩に突き刺さった。激痛が全身を走る。

 間近に見たことで気がついた。《尖蓋龍》じゃない。胴体部分まで堅い鱗に覆われている。《尖蓋甲龍》とでも言うべき龍だった。

 萬屋さんとの戦いのあとに自分の戦闘スタイルを見直した、というようなことを言っていた。紅龍以外の成果の一つが、これか。複数匹同時に出すのが基本の《尖蓋龍》だが、一匹しかいないところを見るとリソースをこの一匹に集中させたのだろう。

「でも直接、ならどうだ……っ!」

 左肩に突き刺さった《尖蓋甲龍》を右手で掴む。全身から《爆心》を大幅に出力を上げて発動した。流石に至近距離の強力な爆発に耐えきれず、小龍は光の霧となって霧散する。肩の貫かれた傷は縁下優視さんが付与してくれた〈癒〉が即座に塞ぎ始めた。

 しかしその治療が済むの待つような相手ではない。小龍に意識が向いている間に、紅龍は僕の身体を取り巻くように移動していた。

 その輪を描く紅龍の胴体が一気に締まる。その輪の中央にいた僕の身体は万力のような力で締め上げられた。全身を砕かれそうな激痛に顔が歪む。このままだと絞られる果物よろしく、血と内臓をぶちまけることになる。

「《爆心》……マジかっ?」

 《尖蓋甲龍》を倒したのと同程度の出力の《爆心》で隙間を作って抜け出そうとしたが、紅龍はびくともしない。さすがに親龍と子龍では硬度も段違いってわけか。

 頭上で紅龍の咢が開かれた。その口腔はやはり紅く光っている。

「自分の身体ごと? まあその硬さじゃあ関係ないかっ……!」

 光線と息吹の中間のような殺気の奔流が放たれ、僕の視界を覆い尽くした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ