サウナ回3ーⅡ
「自然発生した殺気堕ちを捕まえて、洗脳しているんじゃなくて?」
「俺もそれは考えたが、それだと十人集めるのも相当な苦労のはずだ。実験として簡単に使い潰したのとつじつまが合わない。それに使い物にならなかった失敗作がいるかのような口ぶりだったんだろう?」
「そう……だね。それもかなりの数の」
「そいつら全員が自然発生なわけがねぇ。千本桜が何かやっていると想定するのが妥当だ」
桜君はそこまで説明を終えると、内面の苛立ちを表すような不快気な表情を浮かべた。額にしわが寄り、目が細められ、鼻が持ち上がる。元々不良然としている強面が更に怖いものになる。
「それをあのクソ上層部がありえねぇとして斬り捨てやがった。どんだけの脅威かわからねぇのか? あの愚図どもがッ!」
桜君の虚空に向けられた視線の先には誰がいるのだろうか。作戦指令室の鬼瓦室長?
「まぁとにかく、それだけの殺気堕ちを生み出す『実験』をするなら、元になる人間が必要だ。そいつらをどう確保しているのか。お前がいない間に俺たちで調べたものを、今さっき優視にまとめてもらった。今日話をしたかったから、徹夜でな」
「七瀬さんはほとんどなにもしてませんでしたが……」
水沼さんが恨みがましい視線を桜君に向ける。まあこの外見じゃあ通行人に声を掛けても逃げられるだけだろう。
「あ? 俺は警視庁やら県警で色々データをもらう交渉をして、手に入れた後は整理と分析をしてたんだが? 〈機関〉は警察とは別系統の公安委員会直属組織だからな。思ったより渋られて面倒だった」
「それですら縁下さんにほぼ丸投げで後ろから指示を出してただけって聞いてますが……」
縁下優視さんは今、B-1の隊室で仮眠を取っているらしい。お疲れ様です……。縁下さんは〈癒〉を遣えるけど、それでも正常な肉体反応としての眠気はどうしようもないんだとか。
「……でもそれだと桜君も徹夜ってこと? 眠くないの?」
「データ整理のときは寝てたぞ。起きてても意味がないからな」
「…………」
「フン。それで結論だが、千本桜は今、千葉の山奥の廃工場にいると思われる。山奥すぎて寮を立てたり賃金を上げたりしても、娯楽施設がなく交通も不便すぎるせいで人が集まらず、何年か前に廃棄されたらしい。そんな土地だから買い取り手もつかず放置されていたんだが、夜間にそこへ向かうスモーク張りの車や不審なトラック、更に竜のような飛行物体を周囲の街の住民が目撃している」
「竜のような……海堂王威の《紅龍》か……」
「そうだろうな。まぁなんの理由があってそんな目立つことをしたのか知らんが、ほぼ確定でいいだろう」
拠点は割れた。ならば次にやることは……。
「潰しに行くぞ」
エロ要素あんまなくてすいません。とりあえず早くバトルさせたい




