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悪癖

 少女が姿を消した数秒後に桜君が飛来する。アスファルトに小さなクレーターを生みながら着地した桜君は額に青筋を浮かべ、鼻息荒く辺りを見渡す。敵は既に誰もいないことを悟ると「クソがッッッッ!!!!!!」と怒鳴りながら路面を殴りつけ、更に大きなクレーターを生んだ。

 そうしているうちに縁下さんが現れた。〈湖沼の月〉の中に沈んだまま距離を取っていた水沼さんと唯我さんも沼から出て来て、三人まとめて治療を受ける。

「それじゃあ〈剛〉を解いてね。殺気を纏ったままだと治療できないから」

 縁下優視さんの粒子状の殺気が〈剛〉を解除した僕らの全身を包み込み、じんわりと癒していく。

 僕らは治療を受けながら現在の戦況を聞く。異形の殺気堕ち達は、僕らが玖凪シラヒと戦っている間に他のB級部隊に掃討されたらしい。

 まだ肩をいからせながらも、だいぶ怒気を収めた桜君が近づいてきたので、僕はボーイッシュな少女について聞く。

「ああ、あれが千本桜(せんぼんざくら)(りょう)だ。空中でシラヒの電撃とお前の殺気術がぶつかるのが見えたから、向かおうと思ったんだがな。そこに割り込まれて、池袋駅の反対側の、要町あたりまでぶん投げられてた。あのクソ女……」

 怒りが戻ってきたのか、殺気が漏れだす。

「次会ったら髪の毛引き抜いて、ボーイッシュを通り越した坊主にしてやらァ……」

 僕は坊主の千本桜を想像して吹き出しそうになったが、辛うじて堪えた。唯我さんが治療を受けながら聞く。

「つーか、シラヒのやつ、そこまで殺気量が多いようにも見えなかったぜ? よくあんな巨大なレーザー砲を撃ったり、何度も電磁装甲やらを発動してるのに殺気枯渇を起こさねぇよな」

「殺気術の練度の違いだ。二分の一の殺気量で発動できれば発動回数は二倍になる。逆にその状態で普段の殺気量で発動すれば、おおよそ二倍の威力になる。どれだけ殺気を効率よく使えるか、というところだ。訓練あるのみだな」

「そうかよ……だがもう訓練は切り上げる予定だっただろ? この後はどうすんだ?」

「……そうだな。既に決めていたことはあるが、その前にお前らがどうシラヒと戦ったのか、聞かせてもらおうか」

 僕らは玖凪シラヒとの戦いの様子を話す。

「……ハッ、シラヒめ、更に強くなってやがる」

 桜君は嬉しそうに顎を撫でる。全て聞き終えると、

「わかった。テメーは別メニューだ、沁」

「え?」

「話を聞いた限り、テメーは最後の最後で戦いを投げる癖がある。最初の俺との戦いの時もそうだった。最大火力をぶちかまして、防がれたら負け。そんな運否天賦の勝負に逃げてしまう癖がある。訓練の時は出なかったから気がつかなかったがな。そんな腐った根性じゃあ一番大事な勝負で背中を預ける気にはならねーな」

 桜君は極道もかくやという形相で僕を見下ろしながら、ドスの利いた声で告げる。まるで脅されているかのようだ。

「その根性を叩き直す為にテメーには、萬屋に同行して《同盟》の頭のネジが外れた連中と戦ってもらう」

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