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VS七瀬桜3

「……ハッ、勿論だぜ。あの雑魚にはロクに削られてねぇからなァ」

 そんな桜君の煽り文句を聞きながら、僕の身体が泥の中へと沈んでいく。そのまま泥を通って崖の上に吐き出された。そばには水沼さんと縁下さんが待っていた。

「今、治療しますね」

 縁下さんの身体が殺気に覆われる。こちらへ腕を伸ばすと無数の殺気の粒子が流れ出て、僕の身体を包む。

 僕は苦痛が和らいでいくのを感じながら、凹型訓練場の底で対峙する二人を見下ろした。

「オラ、来いよ。俺ぁ格下には先手を譲ることにしてんだ」

「はっ……、戦闘後にはテメェが格下になってるだろうぜッ!!!」

 唯我さんは思い切り地面にバールを叩きつけ、そして桜君へ向けて振り抜く。

 殺気を纏った土砂の散弾が桜君へ襲い掛かる。殺気には唯我さんの〈術〉によって重量が付与されている。

「目くらましかァ?」

 桜君は横へ跳躍してそれをかわす。散弾は地面に幾筋もの痕を残しながら桜君の横を通過していった。

 そして桜君の目の前には既に唯我さんがいる。

「《重ライジング》ッッッ!!!」

 地面を削りながらバールが振り上げられる。桜君はそれもかわす。

「《重スイング》ッ!! 《重スラスト》ッ!!」

「当たればデカそうだな。当たれば、だが」

 桜君は手をダボダボのズボンのポケットに突っ込み、その状態で唯我さんの連撃をかわしていく。

「まあ……格闘センスは上の下ってところか?」

 格闘センス。そう、桜君の動きは殺気がどうこうという話ではない。ほぼ桜君自身のセンスだけで、唯我さんのバールを避けていく。

「チッ……」

 それを追う唯我さんの瞳が僅かに紅に近づいたような、そんな気がして思わず見入る。だが一瞬後には普段との違いが分からなくなっていた。

「《重パンチ》ッッッ!!」

 バールだけでは攻め手がなくなりかけていた唯我さんが状況を変えようと拳を放とうとする。

 しかしその拳は、出だしで桜君の足に止められた。

「当たる寸前に威力を加えてるんだろ。なら伸びきる前に止めりゃあいい」

「チッ、《重サイクロン》ッ!」

 唯我さんは身体を沈めながら桜君の足へ地面すれすれの回し蹴りを放つ。桜君はそれを軽く跳躍してかわす。

「はッ、油断しやがったなッ」

 唯我さんが沈み込んだ姿勢から回転の勢いを乗せてバールを振り上げようとする。空中にいる桜君は身動きが取れない。手は未だにポケットに入っている。《空撃》も飛んでこない。

 桜君は顎を上げ、顔を頭上へと向けた。しかしその視線はしっかりと唯我さんに向けられている。

「《空撃・ヘッドバット》」

 目の前の空間に頭突きをするように、頭が引き戻される。そしてその額から、なんと《空撃》が飛び出した。

「なッ!」

 バールを途中まで振っていた唯我さんの腕の動きより早く、硬い《空撃》が顔面に叩き込まれる。唯我さんは鼻血を撒き散らし、顔を顰めながらその場に倒れ込んだ。

「俺の《空撃》は打撃を飛ばす殺気術だ。勘違いしてんじゃねーぜ。まァそう仕向けたのは俺だけどなァ」

「ク、ソ……」

 唯我さんが血の滴る鼻を押さえながら立ち上がった。桜君は見下して煽る。

「おいおい、まだやんのか? テメェの攻撃は全て見てからかわせるぜ?」 

「オラァァァアアアッッッ!!!」

「ぶっ潰されねぇとわからねぇのか?」

 激突寸前の二人の間の地面が、突如盛り上がる。分厚く盛り上がった地面は泥のように二人の攻撃を優しく止めた。

 そしてその泥は中央から割れるように溶け落ちる。中には水沼さんがいた。いつの間に移動してたんだ……。

「唯我さんは下がって。私がやる」



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