縁下優視
「お前らがB-3の後継だァ? こんなクソ弱っちそうな奴らがァ?」
桜君は単に近くにいたからなのか、おどおどしていて怒鳴りやすいのか、僕にその強面な顔を寄せてくる。
「こんな、なよっちくて覇気もない奴がB級とはなァ……。来いよ。テメェらがB-3隊に相応しくねェってことを思い知らせてやる。」
そう言って桜君はその巨体を揺らしながら出て行ってしまう。出て行った後、桜君の後ろにもう一人いたようで、女性が顔を出した。申し訳なさそうな顔で両手を合わせている。
「あ、縁下さん?」
昨日、山中で合流して唯我さんを治してくれた〈癒〉の使い手だった。確か歳は二十五だった気がする。ちなみに桜君はこの春に大学生になったらしく、十九歳の代。
「私も七瀬君と同じB-1隊なんです。ごめんなさい、謹慎明けで気が立ってるみたいで……」
「いや……元B-3隊の玖凪シラヒと仲が良かったんですか?」
「そうなの。シラヒ君が敵に洗脳されて行方不明になった後、命令も聞かずに探し回ってシラヒを探すように機関長を脅したりして謹慎を食らったの」
「そうですか。それは残念です……。えっと、これ行った方がいいんですかね?」
僕が戸惑いながらそんなことを聞いていると後ろからバールが降ってきた。ゴギンと脳天に直撃する。
「痛ッ……唯我さん、何するんだよっ」
「あんな舐められっぱなしで終わらせられるかよ。いくら相手がB級最強とはいえな。来いッ! あんなクソモテなさそうな自己中不良野郎、ブッ飛ばしてやるッ!」
そう言って唯我さんはバールを背負って飛び出していく。
そんな唯我さんを縁下さんは微笑ましそうに見送り、僕に囁いた。
「苦労されてるんですね」
僕は号泣するかと思った。そうなんですよぉ~。
後ろから服の袖が引っ張られた。振り返ると水沼さんが僕の上着の袖をつまんでいる。
「行きましょう……。B級最強の力を知れるいい機会です」
僕らは先に出て行った二人の後を追い、屋外にある凹型訓練場に辿り着いた。




