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VS海堂王威1

 僕は唯我さんを抱いたまま後ずさり、水沼さんと共に跳躍した。二十メートルほど後方に着地すると村の中を駆け抜け、森の中に飛び込んだ。

 〈剛〉の出力を落とし、〈陰〉でその上から気配を消すと、木々を避けながら山肌を駆け上がる。十分に距離を取ったと判断すると、腰をかがめ、視覚と聴覚を殺気で強化して二人の周囲に全神経を集中させた。疼白もどこかへ姿を消していた。

「さて、邪魔者はいなくなったし、おっぱじめるか?」

「あんたもさっさと消してやんで」

 二人の〈剛〉の密度が上がっていく。僕達の二倍? 三倍? ともかくもの凄い〈剛〉だ。

 萬屋さんの姿が消える。いや、消えたように見えただけだ。萬屋さんはジグザグに動きながら超スピードで海堂に接近していく。

 それに対し海堂は薄笑いを浮かべたまま、紅龍に指示を出した。

「《紅鳴砲》」

 紅龍の尻尾の先端が、べこんと身体に飲み込まれたように短くなった。直後に顎が開かれ、その口腔から殺気の奔流が放たれる。

 萬屋さんは一度フットワークでその殺気の奔流をかわすものの、それは方向を変えて萬屋さんを折って来る。萬屋さんはちっ、と舌打ちをした。

「〈創〉×〈硬〉、《断界》」

 萬屋さんが《紅鳴砲》へ手を向けながら銘を発する。すると萬屋さんの横に長方形の殺気の壁が出現した。やや傾斜をつけて構えられた《断界》は、《紅鳴砲》の威力を斜め上へと逃がしながら、殺気の奔流を完全に防ぐ。

「お? お前も〈創〉使いか」

 萬屋さんは何も言わず右手に殺気を集中させる。膨大な密度・量の殺気が圧縮され、更に硬質化される。キーンと高い金属音が響き渡り、すぐに可聴域を越えて聞こえなくなった。

「〈縮〉×〈硬〉、《神貫手》」

「〈龍如覇気〉×〈硬〉、《龍鱗》」

 僕が見てきた中で最硬の矛と最硬の盾が激突する。矛盾。だが僅かに矛の方が強力なようだった。ギギギギギと金属音が響き渡る中、僅かに、だが確かに《神貫手》が《龍鱗》を突破しつつある。

「やるな……だが、紅龍を忘れたわけじゃねぇよな?」

 紅龍が牙をむき出しにして背後から萬屋さんに襲い掛かる。

「忘れるわけないやろ……《断界・双》」

 二枚の空間を断つ壁がそれぞれ上顎と下顎を防御する。

「ふん……だがこの状態で《紅鳴砲》をかわせるか?」

「なに?」

 紅龍の尻尾がべこんと引っ込み、紅龍の口腔が光り輝く。射線上には萬屋さん、そして海堂がいる。

「SHOOT」

 殺気の奔流が二人を飲み込んだ。

 



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