VS疼白修爾2
《血穿》を察知した唯我さんは残っていた《骨卵》を蹴って跳躍。空中を一回転して距離を取った。
僕の左側に着地した唯我さんは、不敵に片唇を釣り上げて笑う。
「よぉ、随分押されてるじゃねーか。そこのリーゼント頭に助けを求めなくていいのか?」
僕は余計なこと言わなくていいってぇ~~~と心の中で絶叫する。疼白は厳しい顔で《骨卵》を解除しつつ、砕けかけていた骨剣を修復していた。さらにそれだけでは終わらず、左前腕の外側から肉を破って骨が生まれ、左右に広がりつつ上下に伸びていく。最終的に左腕の外側は細身の盾のようなものに覆われた。腕の先からは変わらず骨剣が伸びている。
腕組みをして廃屋にもたれかかり、僕達の戦いを静観していたリーゼントの男が少し身体を起こして、口を開いた。
「B級下位の割にはなかなかやるみたいだな。バール女は戦闘センスがあるし威力も申し分ない。それからそこのお前は〈創〉持ちだな? 希少種じゃねぇか」
リーゼント男は僕に向かってニヤっと笑みを向けた。
「だが〈創〉持ちはただ『遠隔発動』させるためだけに一枠持っていかれてる分、近づけば脆かったりするからな。まあ、精々頑張れや」
リーゼント頭はそれだけ言うと、再び廃屋に体重を預ける。
「……ふん、水を差されちまったが、手札を知るための小手調べは十分だろ。ギアを上げていくぜッ!」
唯我さんは〈剛〉の身体能力強化を生かして斜めに跳び上がった。バールを肩の上に振りかぶる。
「《彗星バール》ッッッ!!!」
「あ、それそんな名前になったんだ」
バールの投擲。手から離れた直後、殺気同士が触れている間に限界まで重量が付与されたバールが、斜め下の疼白を強襲する。
「ちっ……」
疼白は端正な顔を歪めながらかわそうとする。しかし軟化した地面に足を絡み取られ、その試みは失敗に終わった。水沼さんの〈湖沼の月〉だ。
「クソっ!」
吐き捨てるように言い、疼白は骨盾を斜めに構える。直後、中央付近に《彗星バール》が直撃した。バキバキボキボキと骨の折れる音が響き渡る。
「力を逸らせッ……」
斜めに構えられ、角度がつけられた骨盾の上を、《彗星バール》が滑っていく。地面に激突したバールは鈍い轟音と土砂を撒き散らし、地面深くまで潜っていってしまった。
体勢の崩れた疼白の目の前に、唯我さんが着地する。
「クソッ、だがバールを拾わせさえしなければッ……」
「関係ねーんだよなァ。《重ナックル》ゥッ!」
「ごほォッ!」
バールを守ろうと体を傾けた疼白の脇腹に、唯我さんの強化された拳が突き刺さった。
「二発目ェッ!」
「クソっ、調子に乗るなッ」
しかし二発目は骨盾に防がれる。ミシミシという音は微かにするものの、バールの時よりは遥かに小さい。
「ふん、不意を打たれて一発は食らったが、やはり《骨盾》を突破できるほどの威力ではないな。生身の体では負担が大きいのかッ?」
三発、四発と拳を繰り出すが、全て《骨盾》に阻まれる。
「ハッ! やはり、バールを拾う隙さえ与えなければ問題ないなッ」
「いやぁ、それも関係ねーんだよなァ」
唯我さんは右腕を背後に伸ばし、手のひらを上に向た。背後でぬるり、と盛り上がった地面からバールが出てくる。
「水沼の〈湖沼の月〉に重さは関係ないみたいでな。こういうとき助かるぜ」
「なっ、なっ、なんだとォォォオオオッ!」
「終わりだな。《重スラッシュ》ッ!!」
ズバン、と。
横薙ぎに振るわれたバールは、疼白が防御に構えた《骨盾》をなんなく砕き、その胴体をあっけなく真っ二つにした。
「へっ、やっぱ大したことなーー」
「やっと油断してくれましたね」




