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VS疼白修爾1


 疼白、と呼ばれた白衣の男はそう言うと胸の前に左手を掲げた。

 ズチュっという肉の音がして、手の甲側の白衣の袖から一メートルほど真っ白い骨が生えてきた。その先端の方はまるで剣のように薄く尖っている。

 更に右肩の肩甲骨の辺りから白衣を突き破って血が噴き出す。血液はその場にとどまり、網状の細い血流で構成された片翼のような形状を成した。

「うげぇ……」

 唯我さんは冗談めかしてえづく真似をする。僕も顔を顰めた。しかし〈術〉から考えるに……。

「この村の人を殺しまわっていたのは、あの人で確定だろうね」

「だろうな」

 僕は腕を構える。疼白はおよそ三十メートルほど離れた位置。僕の〈創〉は射程が二十メートルと少し。《爆心》を当てるには踏み込む必要がある。

「私が突っ込む。お前らは後ろからサポートしろ」

「了解」

「分かりました」

 唯我さんが右手に持っていたバールをクルクルと回す。そのまま軽く放り投げ、空中で回転しているバールをぱしっと取り、左腰に構える。

 直後、唯我さんは爆発的な加速で白衣の男へ突っ込んでいった。一瞬遅れて後方から僕も追う。水沼さんも〈湖沼の月〉の中へと沈んだ。

「《血穿》」

 そう言った疼白の右肩から生えている血の翼が蠢いた。先端から幾筋もの血流が勢いよく伸び、僕と唯我さんを襲う。

「《爆心》」

 僕はその、血流の根元に近い部分を爆破した。幾筋にも分かれる《血穿》も元をたどれば右肩の翼だ。ほとんどの血流が翼と分断され、推進力を失ってただの血液に戻る。

 残った三筋の血流のうち、二本が唯我さんを襲う。

「……」

 唯我さんは避けることも出来たのだろうが、殺気で強化したバールでその二筋の《血穿》を受けた。ギョリギョリギョリという金属音が響く。

「なるほどね……」

 音からしてただ血流をぶつけているわけではない。螺旋状に回転させている。それで貫通力と殺傷力を上げているんだろう。そういった操作を得意としているなら〈操〉の使い手である可能性が高い。

「唯我さんナイス……」

《血穿》をあえて受けることでそれだけの情報を引き出してくれた唯我さんに感謝をしつつ、左方から僕へ向かってきた一筋の血流の対処を、もう一人の殺気遣いに託す。

「水沼さん、お願いします」

 走り続ける僕の左前方で地面がうねり、柔らかく液体のようになったそれが持ち上がる。《血穿》の威力を殺しきってくれていることを横目に見つつ、僕はその傍らを駆け抜けた。

 そして疼白を僕の〈創〉の射程範囲に収める。

「《爆心包み》」

 伸ばす腕の先、疼白の周囲で数個の光球が瞬き、直後に爆発が起こる。その全方位からの爆発の衝撃を、疼白は左腕から骨剣とは別に出現させた、卵の殻のような防殻で受けた。

「《骨卵》」

 左側を中心にほとんどを骨の防殻で受け、右側の防御が間に合わなかった僅かな部分は、血の翼を殺気で強化して防いだ。

「発動が速い……だけどその分あの骨剣ほどの強度はないはずだ」

「いい崩しだぜッ! その卵、ブチ割ってやんよォッ!」

 唯我さんは《爆心包み》の余韻が残る僅かな時間で疼白との距離を詰め切る。勢いよく跳躍すると疼白の頭上からバールを叩きつけた。

「《重インパクト》ッッッ!!!」

 ……ネーミングセンスはさておき、威力は凄まじい。おそらく最大加重まで強化した一撃は《骨卵》を容易に打ち破り、その下の骨剣での防御を余儀なくさせた。ミシミシペキペキと骨剣にヒビが入るような音がした。

「くっ……」

 疼白は右手も骨剣に当て、両腕でなんとかその初撃に耐えきる。同時に血の翼を蠢かし、空中の唯我を貫かんとした。

「おっ……」

 

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