サウナ回1- III
※下ネタ注意
「……あの出来事のおかげで僕は救われたよ。ありがとう」
「やめてください……救われたのは私の方です。完璧な女の子を強いていたお父さんとお母さんは、あれ以来私を自由にしてくれましたから」
行き過ぎた愛で水沼さんを縛り続け、それこそ湖沼に映る月に手を伸ばして湖沼に入り込むような行為を娘に続けさせていた水沼夫妻。二人はその一件で目を覚まし、今は娘を愛しながらも自由にやらせる、いい両親になっているらしい。
「殺気遣いになった私も愛してくれています」
人外の力を持つ殺気遣いへの覚醒は、それまでの人間関係を破壊する。赤子の手をひねるどころか血を吸いすぎた蚊をプチっとやるような手軽さで人間を殺せる殺気遣いを、普通の人達は恐れて近寄らなくなる。身内も例外ではない場合が多い。
その中で愛し続けてくれているということはその関係は本物なんだろう。
「んあー、わかったぜ!」
突然、唯我さんが勢いよく立ち上がる。その勢いで身体に巻いていたタオルがはらりと落ちた。よく焼け、運動によって締まってハリのある全身が露わになる。
「おい沁! 私より先に童貞捨てたら……」
唯我さんは一切構わず身体の正面を僕に向け、指を突き付けて来る。色々と丸見えだ。
「……引き抜くからな」
「なにをっ!?」
僕は背筋を凍らせながらも、欲に勝てない情けない視線が唯我さんの身体をなぞるように下がっていく。
「……剃ってるんですね」
「うにょわぁっ!」
背後からの思っていたことを代弁する声に思わず奇声が上がる。水沼さんが身を乗り出して唯我さんの下腹部を凝視していた。
「あぁ? 観月はなにもしてねぇのか? 整えるのも?」
「してません……まだ」
「まぁー、その年ならそうか? でもいつか好きな奴に見せることになるんだし、覚えておいて損はねーぜ? 教えてやろうか?」
「好きな人に……。ぜひ」
力強く頷く水沼さん。水沼さんがいずれ恋をする相手はどんな人だろう。頼りがいがあって格好いい人なんだろうな……僕とは正反対だ。
「よし、なら見せてみろよ。状態を見て考えっから」
「わかりました」
「それだけは勘弁してぇぇぇぇえええええええっっっ!!!!」
僕も慌てて叫びながら立ち上がる。その拍子に腰に巻いていたタオルがはらりと落ちた。
「あ」
「おぅ……Magnum……」
「あ、天羽さん、その大きさは流石に……」
「うぁぁあわぁぁあああああんッッッ!!!!」
僕は全力でサウナを出て、冷たいシャワーで色々と冷やした。




