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短編(ヒューマンドラマ)

あの日食べたクレープの味は忘れない

作者: 御厨カイト


ここは未来郵便局。

未来の自分に手紙を送ることが出来る不思議な郵便局。



今日もここには未来の自分に手紙を送りたい人が続々とやってくる。


そんな私はここで働く郵便局員。

今宵は私がここで働いてきた中で1番印象に残っていることをお話ししましょう。






「おじさん!この手紙、おねがいします!」


そう言って手紙を差し出してきたのは10歳ぐらいの男の子。


「はい、分かりました。内容確認いたしますね。」


そう言って私は手紙を受け取り、内容を確認する。


なぜ、手紙の内容を確認するのかと言うとその内容によっては未来と今を繋ぐ時空がおかしくなるケースがある。

そう言ったケースが起こってしまった場合、色々な不都合が起こってしまう。

だから、そういったことが起きないように手紙を受け取る際は局員が確認することになっている。


さぁ、今回の彼の手紙はどんな内容だろうか。



「未来の自分へ

 今なにしていますか?どんな仕事をしていますか?

 友達はいますか?お返事ください!

                    ○○より」



こういう手紙を見るとほっこりする。

やはりこういう制度を悪用する大人とかもいて辟易としていたが子供の手紙は純粋で良い。


「確認いたしました。それではこちらの手紙はどの自分にお送りいたしますか?」


「うーんと、10年後!」


「分かりました。それでは10年後のあなたにこのお手紙をお送りしますね。」


「あっ、未来の自分からの返事もおねがい!」


「畏まりました。それでは少し時間が掛かりますので、そこの椅子に座ってお待ちください。」


「分かった、おねがいします!」


そうして私はジャケットを羽織って帽子をかぶって、いつも通りタイムリープ機能を使って、10年後へと移動する。


えっと、彼の住所は……

10年後なだけあってやはり変わってるようで思いのほか探すのに時間が掛かった。



ここが彼の家か。


コンコン

「どうも、未来郵便局です!10年前のあなたからのお手紙をお届けに参りました!」


……反応がない。

留守なのだろうか。

うーん、どうしたものだろう。

返事をもらってきてと頼まれたのだが……。


そう思って、ドアノブをひねってみるとドアが開いた。


私はまぁ開かないだろうと思ってドアノブをひねったのだが、まさか開いているとは。

だが、そう考えると何故声がしないのだろうか。

いやな予感がする。


そう考えた私はおそるおそる中に入ってみることにした。


「○○さん!○○さん!いらっしゃいませんか?」


やはり返事がない。


すると奥に扉が少し開いている部屋があった。

いや、まさかなと思って覗いて見る。


するとそこには……




首に縄をかけて、動かなくなっている彼の姿があった。



私はいきなりのその光景に身動きできなかった。

まさか亡くなっているとは……


少し時間が経ち、動揺からの体の硬直も少し解けてきた時、彼の近くに紙が落ちていることに気づく。

遺書だろうか。

少しだけ目を通した私はまたしても固まってしまった。


「・・・」


それから私は彼に黙祷をして、その場を後にした。


彼について何もしないのかですって?

生憎、私たち局員に未来で許可されていることはその手紙で指定された人に対して手紙を渡すことだけなのです。

それ以外のことをしたら、私たちは違反をしたと言う事で捕まってしまう。

だから、未来の処理は未来の人に任せます。

薄情と言われればそれまでですが仕方がないのです。




「おじさん、返事貰って来た?」


「今」に帰ってきた私に少年は開口一番聞いてきた。

どうしようか……


「いやー、申し訳ありません。返事をもらってくるの忘れていました。」


私は結局ヘラッとした笑顔でそう答えた。

噓をつくことにしたのだ。


「えぇー!楽しみにしてたのにな~。」


少年は案の定不満そう。


「ホントに申し訳ない。お詫びと言っては何ですがクレープをご馳走しましょう。」


「ホント!?やったー!」


私がそう言うのに対して少年は目をキラキラさせる。


「えぇ、それでは行きましょうか。」


「うん!」


そうして私は近くのクレープ屋でクレープを2つ買って1つを彼に渡す。


「はい、どうぞ。」


「うわぁー、ありがとう!」


「いえいえ、さぁ召し上がってくだ、あ、もう食べてますね。」


彼は満面の笑みでクレープを大きな口で頬張る。


「おいしー!」


「それは良かったです。」


私も久々にクレープを食べる。

あ、美味しい。


あまりのクレープの美味しさに二人ともあっという間に平らげてしまった。


「クレープおいしかった!おじさん、ありがとう!」


「いえいえ、元々こちらが悪いので。」


「ううん、僕の手紙渡してくれたんでしょう?」


「それはもちろん。」


「じゃあ、それでいいよ。今日はありがとう、おじさん!また10年後も一緒にクレープ食べようね。」


彼が笑顔で言ったその言葉に私は彼の遺書を思い出しながらも笑顔で「えぇ、そうですね」と答えた。













「あの時の郵便局員のおじさんへ

 また一緒にクレープを食べられなくてごめんね。

                   ○○より」













皆さんこんにちわ 御厨カイトです。

今回は「あの日食べたクレープの味は忘れない」を読んでいただきありがとうございます。


読んで「面白い」とか思っていただけたら、感想とか評価のほどよろしくお願いいたします。

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