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「アンナリーゼ‼︎」


バンっと勢いよく開け放たれた扉から現れたのは、レンブラントだった。アンナリーゼはベッドの上で読書をしていたのだが、ノックもなしに部屋に入ってきた彼に驚き手から本を落としてしまった。


「レンブラント様、如何なさったのですか……」


「君が倒れたと聞いて、居ても立っても居られなかったんだ!でも、その様子だと大丈夫そうだね」


レンブラントはベッドまで歩いてくると、アンナリーゼを抱き締めた。


「レンブラント様⁉︎」


「君が倒れたと聞いた時、心臓が止まるかと思った」


辛そうに顔を顰めるレンブラントに、アンナリーゼはこんなにも心配してくれるなんて、と不謹慎だが嬉しくなった。


「でも、どうして倒れたの?もしかして、どこか悪いの⁉︎」


「……」


い、言えない。原因はレンブラント様から頂いた手紙です……なんて言える訳がない。

彼の事だ。そんな事を言えば『僕は自分で自分が許せない!』と自身を責めるだろう。


「アンナリーゼ?」


「あ、あの……具合が悪い訳ではないんです。その……」


どう誤魔化そうかと口籠っていると、レンブラントは「そういう事だね」とある結論に至った様だった。


「僕の子供を産むための準備の日なんだね」


瞬間、部屋の空気が凍りついた。アンナリーゼは、一瞬何を言われたのか分からず間の抜けた表情を浮かべたが、直ぐに意味を理解して真っ赤になる。

余りの事に、アンナリーゼはまた、倒れそうだった……。


「レンブラント様っ⁉︎その様な事は」


後ろに控えていたルネがレンブラントを注意する。その隣では、フロラも顔を赤くして俯いていた。

だがレンブラントは、よく分かっていない様子で肩を竦めた。









「あの、レンブラント様。お仕事は……」


「今日は休むよ」


あれからレンブラントは城へは戻らず、アンナリーゼの側にいてくれた。彼とは幼い頃からの付き合いだが、こんなに長い時間一緒にいるのは初めてかも知れない。


彼は忙しい人だ。昔から王太子としての教育を休む暇もなくこなし、今は公務に追われている。アンナリーゼも、無論王太子妃としての教育は受けてはいるが比にはならない。そんな彼が一日休むなど大変な事だ。申し訳なくなってしまう……。


「レンブラント様、私の為にお手間を取らせてしまい申し訳ございません……何か、お礼をさせて頂けませんか」


「何でもいいの?」


「は、はい……」


良識的な範囲でしたら……と心の中で付け加える。


自分で言って不安になってきた。一体何を言われるのか……。


「じゃあ……頭を撫でて欲しいな」


意外な言葉にアンナリーゼは、戸惑った。もっと凄い事を要求してくると思っていたのに……。


ナデナデ。


アンナリーゼは遠慮がちにレンブラントの頭を撫でてみた。すると彼は、幸せそうにはにかんだ。


か、可愛い……も、もう一度!


ナデナデ。


レンブラントの見た事もない可愛らしい姿に、アンナリーゼは調子に乗って再度撫でた。


「アンナリーゼ、ありがとう!嬉しいよ」



チュッ。


「⁉︎」


「僕からのお礼だよ」


一瞬だったが、確かにレンブラントの唇がアンナリーゼのそれに触れた……。



レンブラント様の唇が、わ、私の唇に……ふ、触れて⁉︎


「アンナリーゼ⁉︎」


再びアンナリーゼは倒れた。


恥ずかしくて死んでしまいそう……。














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