『さしすせそ』
さ『サロメ(ワイルド作)』
し『失楽園(上下巻)(ミルトン)』
す『すぐに役立つ! 配色アレンジBOOK(グラフィック社)』
せ『聖書の名シーン集 マリアのウィンク』
そ『ソロモンの指輪 (コンラート・ローレンツ)』
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さ『サロメ(ワイルド作)』
出ましたヤンデレ!
ぶっちゃけ話の運びとしては「とある王女が叶わぬ恋に狂い、想い人の首ちょんぱ」ってだけなんですけど!(我ながらえらいざっくりだな~)
でも正直、この薄い本に内容なんてあってないようなもの! この本はね! 美しい言葉のカタログなんです! 過剰なほど華麗な言葉に、甘く悪酔いするためのものなんですよ!(あくまで持論)
『月を見るのはすてき! 小さな銀貨そっくり。どう見ても、小さな銀の花。冷たくて純潔なのだね、月は……さうだよ、月は生娘なのだよ。生娘の美しさが匂っているもの……さうとも、月は生娘なのだよ。一度もけがされたことがない。男に身を任せたことがないのだよ、ほかの女神たちみたいに。』
どうですか、この一文! このくだりで「良いなあ……」と思えたら多分ハマれます! 個人的に特に好きなのが、王さま(サロメの義理の父)がしどろもどろに「ヨカナーンの首が欲しいなんて言うな……代わりにこんなものをあげるから!」って説得を試みるくだり。白孔雀に紫水晶、トパアズにオパール、月長石……。もう言葉の限りを尽くして心変わりをうながすんですが、そのセリフの異様に過剰で美しいこと! セリフが長いんでここでは引用しませんが、個人的にはここが白眉と言っても過言ではない!
あとこの話に欠かせないのは、オーブリー・ビアズリーの描いた挿絵! 自分、特にビアズリーが好きと言う訳ではないのですが、やはりサロメにはこの絵でないと! 時代がかった画風、絶妙ないかがわしさ! たまらんわ~!
と言うわけで、個人的には「岩波文庫版」をおすすめしたい! さっきの「さうだよ」みたいに古めかしい表記もあって、少々読みづらくもあるんですが……。本自体の厚みも薄いし、読みこめば慣れてくると思います。
感想とおすすめの最後に、私が読み初めに魂持ってかれた一文を……。
『王女のあの蒼ざめた顔! あれほど蒼い顔をしてゐるのを、おれはついぞ見たことがない。まるで銀の鏡に映る白薔薇の影そつくりだ。』
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し『失楽園(上下巻)(ミルトン)』
好き(告白)
同名の小説は読んだことないけど、自分は絶対こっちの本の方が好み! 天界での天使たちの大戦、大敗して割れた地の底へ堕とされるサタン(ルシファー)、楽園の人間たちに「罪の実」を食わせるというサタンなりの神への復讐……。
こんなんもう厨二脳がたぎりまくりですわよ奥さん!(誰)初めは読みづらく感じるけど、この時代がかってかつ壮大な語り口!
てかもうサタンのキャラが良い! 常に尊大な態度をとってるかと思いきや、誰もいない場所で己の過ちを恥じてみたり、「いや、もうはや後戻りは出来ないのだ。仮に神に赦しを請うて、赦されたところで自分は再び同じ過ちを犯すだろう。かくなる上はこの重黒く暗い地獄を引きずって生きてゆく他はないのだ(ざっくりニュアンスでまとめてみました)」とか煩悶した挙句にあきらめきって再び決意を固めてみたり……。
あーもう! もう! こちらの性癖にダイレクトアタック!! やばいわ、好きすぎる!
そもそもこの本がきっかけになって、自分の手に負えない長編を書こうとして精神状態ぐらぐらになった訳ですから、自分的には『元凶』と言っても良いくらいのブツなのですが……やっぱ好きだわ(断言)そんなんなるほど個人的に影響を受けちゃったということで! そのくらいのエネルギーを秘めたミルトン様の御作ということで!
ただこれね~、ハマる人はがっつりハマると思うんだけどぱっと見めっちゃ読みづらくって……。しかも「大長編叙事詩(詩!)」なので苦手な方はホントに見た瞬間「うわこれダメ! この形式ダメ!!」ってなると思うのですよ。う~ん自分ホントに人にすすめづらい本にハマるな~……。
自分が持ってるの岩波文庫版なんですが、上下巻で二冊そろえると2000円超えるしな! 「気になったら手にとって見てみてください……」としか言えない自分が歯がゆい……;
あと仮にハマったらハマったで、文字書きさんは影響されて思いっきり読みづらい小難しい文章を書き出してしまいかねない……あれ、もしかしてこの本自体が「禁断の果実」?(うまいこと言ったつもりでシメる!)
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す『すぐに役立つ! 配色アレンジBOOK(グラフィック社)』
何冊かある配色本のうちの一冊。
確か一番初めに買った配色本は「配色アイデア手帖(桜井輝子)」で、この本は二冊目だったはず。初めに買った方がずっと有名だと思うけど、写真やイラストを多用した「見ているだけで楽しい配色本」という絡みでは、「すぐに役立つ!」の方が元祖だそうな。
自分的にどっちが好みかは……有名なシリーズ(今三冊ほど出てるはず)の方はシリーズ最初の一冊だけ、「すぐに役立つ!」の方のシリーズは三冊全て本棚に並んでるという事実が証明。
まあ正直、全国チェーンの大きな本屋で「売れてます! 今一番売れてる配色本のシリーズですよ!」ってノリで平積みされてると、それだけでややゲンナリするという天邪鬼な気質のせいもありますが。「本の形」としては売れてる方のが使いやすいのですけどね(←横長でページ開くと閉じにくい。デジタルで絵を描かれる方は、キーボードあってもすき間に置ける)
実を言うと、こういうのに手を出す前は「配色本んん~? そんなの使ってイラスト描いたら、自分の絵にならなくない?」とか変につっぱってたんですが……いざ手に入れると、使ってみても無問題! 超便利! 考えてみりゃ、どの色をどこに配置してどういう風に描くのかは、描いてる人の感性ばりばりですからね! 別に「配色のパクリ」でも何でもないし!
あとこの本、配色のイメージタイトルがいちいち素敵。「スウィートココア チェリーパイ」とか「フェアリー ガーデン」とか「秋の果樹園」とか!
まあこういう本は実際見てみんと分からんと思うので、気になった方は検索かけて試し読みしてみてくださいな。眺めてるだけでも楽しいですよ~w
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せ『聖書の名シーン集 マリアのウィンク』
もうだいぶ前に手に入れたシリーズのうち、一冊がこれ。
ちなみに他に手元にあるのは「天使のひきだし」「悪魔のダンス」と「ヴィーナスの片思い」。要するにテーマを絞ってそれぞれまとめた、いわゆる名画の解説集って感じですかね。
ただこれ全然堅苦しくなくて、さらっとした解説イラスト(ちょいちょいまんが仕立ても)たっぷりのライトな読み口なので、肩こらずにさくっと読めます。オールカラーなのでちょっとお高いんですが(税抜き2000円弱)聖書とか神話系のエピソードや名画に興味のある方、かつ高尚な雰囲気が苦手な方にはおすすめです。
ちなみに同シリーズの「黙示録の解読ガイド オレたちに明日はない?」はいったん手に入れたんですが、ほどなく売っちゃいました……テーマはばりばり興味あったんだけど、挿絵がな! なんか殴り描きみたいでな! 他の四冊はおすすめですが、この殴り描きは個人的にはおすすめしにくい……;
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そ『ソロモンの指輪 (コンラート・ローレンツ)』
これも本棚のお気に入り!
もうだいぶ前に出版された本なんですが、要するに「ドイツの動物行動学者の」……う~ん何だ? エッセイ? なのか?
何て言うんですかね、とにかくめちゃくちゃ怖げな顔してて、でもよ~く目を見ると少年みたいな澄んだ目をしたおっちゃん(ちなみにノーベル賞受賞者)が鳥やら魚やらを「愛しい!」と思ってあふれる愛を込めまくった文章の結晶……とでも言ったら良いか?
なんせこのおっちゃん、本の中の可愛げなイラストまで自分で描いちゃってますからね!(アニー・アイゼンメンガーって方も描いてますが)ちょっとアカデミックな側面もありますが、私に言わせれば「萌え語り」! 読んでると自然と口角が上がってきちゃうんですよ!
コンラート博士に恋をして(ちなみにオス)ミールワームを博士にプレゼントしようとするコクマルガラス。博士のお父さんがお昼寝してる間に、お父さんのズボンのボタンをひとつ残らずむしり取ってしまったオウム。挙句の果ては「おうい、窓をしめてくれ! オウムが(カラスが、オマキザルが)家の中に入ってくる!」
こんな具合であふれ出るほのぼの感、古典と言っても良いくらい時代のついたこの本と同じ雰囲気の本にはいまだ巡り逢えず! 「カラスの学者」の松原 始氏、雑草研究の稲垣 栄洋氏……そういう方面で好きな方々は数あれど、この一冊はずんずん日焼けして色あせて見た目にぼろっちくなっても、ずっと本棚にいるのです。