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9*避難所生活 /3/


……変な時間に、起きてしまった…。


時計を持っていない為正確な時間は分からないが、恐らく、辺りの暗さと他の避難している人が揃って寝ている事から、2~4時くらいだろう。

…周りを見ると、涼葉姉と萌も抱き合って寝ている。

微笑ましい限りだ。


…さて恐らく、今世間…日本は、大変な事になっているだろう。

だとすると、二度寝している様な時間の余裕は無いと考えた方が良い。

俺の場合…能力の練習、情報の整理、状況の把握etc…やる事は沢山ある。


俺は涼葉姉と萌を起こさない様に、静かに移動する。

今から俺が何をするか。それは、食屍鬼狩りだ。


出来る限り、萌と涼葉姉には無理をさせたくない。

今まで無理をさせていたからな…こんな時くらい、いい物を食べさせてやりたい。

その為には、俺の能力の一つである“店”を使う。

店で物を買う為には、怪物を狩らなくてはならない。そこで、先程言った食屍鬼狩りだ。


俺が今まで倒した事のある唯一の化け物、食屍鬼。

朝まで待たず、この時間帯に行くのは、萌と涼葉姉に心配させたくないからだ。

安全マージンは取れていないが、これから常に安全な狩りなんて物は無いと考えていい。


なら、1人で身軽な時に経験を積むのもいいだろう。

……因みに、武器は赤城さんから貰った短刀だ。

初めて倒した時にそのまま貰った。

ありがたい限りだ。



━━━━━━━━━━━




……食屍鬼は基本集団で行動しない。近くに居ても、別々に行動する。

例外は、上位の怪物に指示されていた場合。


今俺は、避難所近くの住宅街に居る。

不法侵入で申し訳ないが、手頃な二階建ての家に入らせてもらって、2階から辺りを索敵する。

……実は、緊急事態で逃げたからか、戸締りをしている家があまり無いのだ。

勿論、物は取らない。


既に犯罪を犯しているとはいえ、罪を重ねる気は無い。

高所から周囲を見た所、夜だからと言って別に凶暴化するとかは無いようだ。



…あいつを狙うか。

俺は、1番近く、他の食屍鬼から距離がある一体に狙いを定める。

命を掛けているんだ。

慎重過ぎるくらいが丁度いいとは思うが、時間をかけ過ぎると涼葉姉が起きる前に帰れない可能性がある。


……涼葉姉、早起きだからなぁ。

そんな戦いとは無縁の事を考え、焦りと恐怖を抑える。


…よし、行くか。

俺は、食屍鬼の近くにある塀に移動する。

食屍鬼は索敵能力がそこまで高く無い為、特に訓練も受けていない俺でも隠れて居れば基本見つからない。


食屍鬼の歩きに合わせて、俺が隠れている場所を丁度通り過ぎるタイミング…。ここっ!

発動!

瞬間、あの時と同じ様に、自分の体が自分の物じゃないような感覚に陥る。


━━━━やっぱり、怖いな。

あぁ、怖い。

この感覚は、何回使っても慣れなさそうだ。

音も立てずに食屍鬼に短刀を振り下ろす。

食屍鬼は反応出来ず、そのまま俺の振り下ろした短刀は食屍鬼の腕に吸い込まれ、綺麗に一刀両断した。


そのまま追撃をせず、一旦距離を摂る。

頭の命令通り、体が後ろに飛んだ。

…ここで、解除!


「っ!」


本の数秒しか発動して居なかったが、それでも中々痛い。

…だが、ずっと発動しているよりマシなはずだ。

見ると、食屍鬼は切られた方の肩から血を大量に流しながらも、切られていない方の腕で、先程まで俺がいた所に拳を入れる。


ただ拳を振り下ろしただけなのに、風がここまで来るのだ。

一撃を食らったら、その時点で即死だろう。

だが、食らわなければいいのだ。そう。結局避けるしか無い。


俺は痛みを我慢し、食屍鬼に走って近付く。……やはり、普通に走るだけで音はなる。

…どうやって、無音移動しているんだか。さっぱりだ。


そして、食屍鬼の攻撃範囲に入るギリギリで、再び武の極みを発動する。

この発動で倒し切りたい!

食屍鬼は、自分の方が射程が長い事がわかったのか、残った腕で薙ぎ払いをし、俺を近付かせんとする。

……普段の俺なら、それだけで避けられず死んでいただろう。

だが、武の極み発動中なら、大振りの攻撃は避けきれる。

普段の状態では確実に出来ない高さの跳躍をし、そのまま食屍鬼の首に短刀を入れる。


行ける…!


「おらぁっ!」


俺…と言うよりは武の極みが放った攻撃は、見事に食屍鬼の首に吸い込まれ、そのまま切り落とした。

物凄い血が吹き出し、辺りを汚す。

確実に首を切り落としたが、油断せず後ろに飛ぶ。

……体は勝手に動くが、やはり言うことは聞いてくれるらしい。

そして、そのまま能力を解除。


「ぐっがぁっ!」


その瞬間、身体中に激痛が走る。全身が焼けるような痛み。


…だが、最初よりマシだ。一応、動けるレベル。

しっかり足で地面を踏み締め着地し、視線を前に向ける。

食屍鬼はと言うと、首を落としたと言うのに、それでも俺を殺そうと、片腕を振り回していた。


…どういう生命力してんだよ…。

そんな食屍鬼も、ひとしきり暴れた後、倒れて動かなくなった。



…俺の、勝ちだ…!

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