8*避難所生活 /2/
「ただいま。」
「蒼くん、おかえり。」
赤城さんとの話を終え、避難所の中に戻ると、萌は寝てしまっていた。
涼葉姉と小声で会話する。
……さて、涼葉姉と情報を共有しないとな。
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「…って事は、私も能力があるのかな?」
頭痛があったと言っていたのが本当なら、あるはずだ。
涼葉姉にも…萌にも。
「うん。多分ある筈。」
「わかった。ちょっとまってて。」
涼葉姉はそう言って、頭を抱えてうんうんと唸り出した。
数秒待つと、ゆっくり顔を上げる。
そして、俺の方を向くと、口を開く。
「えーっと、風流だって。」
そのまま能力の詳細を聞くと、どうやら支援系の能力のようだ。
風の流れを作り出し、矢の軌道を変えたり出来るらしい。
中々使えるのではないだろうか。
聞いた話によると、空を飛んでいる化け物も居るらしいし、そういう奴には天敵だろう。
何せ飛行を妨害されるのだ。
空を飛んでいる奴は大体、その長所を生かした攻撃をしてくると赤城さんが言っていた。
…ただ、周りに迷惑にならないように少し使ってみた所、制御がかなり難しいらしい。
それと、使い過ぎると頭痛で倒れるかもと。
俺の能力と違って、大規模戦闘の方が力を発揮するのではないだろうか。
……ただまぁ、俺は涼葉姉を戦場に出す気はさらさらないが。
涼葉姉と萌が出るくらいなら、俺が3倍出る。
その覚悟で行かないと、守りきれないと思った方がいいだろう。
「涼葉姉、俺も疲れたし、ちょっと休むよ。」
「うん。お疲れ様、蒼くん。」
そう言って、横になる。 ……暁兄、俺、頑張るよ。
*
【赤城 劔】
「あら赤城君。久しぶりね。」
俺に声を掛けてきたのは戦友の稲荷 穂花。
あったのは…4ヶ月ぶりだろうか。
「あぁ。」
「…何、楽しそうじゃない。何かいい事でもあった?」
確かに、いつ頃ぶりかに気分がいいかも知れない。
「そうだな。良い人材がいた。」
「ふーん。ねぇ、どんな人なの?」
それを言った途端、穂花の目が変わる。
…WMHAは人手不足だ。
そして、穂花は勧誘担当。
………言えば、色仕掛けでも人質をとるでもして無理やり引き込むだろう。
最近は特に切羽詰まっているようだしな。
「言わねぇよ。あいつには自分で入る判断をして欲しいんだ。」
「…あら、もう勧誘してたのね。…ふふ、貴方が楽しみにするほどの人材、私も今から楽しみだわ。」
「あぁ、そうだ。枠を3つ開けといてくれ。」
「え?3人もいるの?」
あぁ、そうなるのか。
「いや、そいつの大事な人だ。そいつだけだと首を縦に振らないと思うぞ」
「そう…わかったわ。」
穂花はそう言って、踵を返す。
……さて、久々に挨拶回りしねぇとな。