6*能力Ⅱ
「トリプルアビリティ…?」
「トリプルアビリティって言うのは、3つの能力を持っている人間の事だな。」
称号みたいな物だろうか。
にしても、世界で6人目…?
「そんなに、3つ能力を持ってる人って少ないんですか?」
「あぁ。…理由としては、能力が強すぎると脳が耐えられないんだ。そのまま、死んじまう人間が一定数居る。」
確かに、あの頭痛が強さと量に比例するなら、そこまで多くないかもしれない。
俺のだって、もう少し強ければ耐えられたかどうか怪しいくらいだ。そんな激痛だった。
………運が良かった…か。
「成程。」
「よし、お前の能力の中身を教えてくれ。」
既に動揺から立ち直った様で、メモ用紙とペンを取り出している。
「わかりました。……まず1つ目。倉庫です。」
「倉庫…?もしかして収納系か?」
「はい。」
「なるほど、戦闘も行けてサポート、バックアップの能力もあると…。」
聞かれた為そのまま答えると、赤城さんは嬉しそうにぶつぶつと何かを呟きながら、ペンを滑らせている。
「因みに、俺が両手で抱えられる程度の大きさじゃないと仕舞えません。」
「オーケー。……よし、次言ってくれ」
内容もしっかりとメモを取っているようで、ずっと顔を下げたまま言ってくる。
「次は、店です。」
「店?…って、あの店か?」
顔を上げ、怪訝そうに聞いてくる。
確かに能力で店と言われても、しっくり来ないかもしれない。俺だって、急に能力は店ですとか言われれば「は?」となってしまうだろう。
名前が簡潔なのはいいが、もう少し分かりやすくして欲しいものだ。…誰に?と言われれば答えられないが。
……と言っても、この能力は店以外に表せないかもしれない。
あるとすれば…ポイント交換所、みたいな感じだろうか。
「はい。その店です。多分、食屍鬼とかの怪物を倒すと、その分色々な物が購入出来ます。」
「それってもしかして、水なんかも買えるのか?」
「…そうみたいです。」
「なんて能力だよ。よく生きてたな、お前…」
そう言った赤城さんは特に悪気がある訳ではは無いようで、心から思った事が思わず漏れたようだ。
まぁ、俺としてもかなり凄い能力だとは思う。
これだけで、屍喰鬼が簡単に倒せる人間なら生きて行くことが出来るのだ。最悪、人間が自分1人になったとしても。
「3つ目行きますよ。」
「あぁ。」
「3つ目は、武の極みって能力です。ありとあらゆる武術、武器を達人レベルで使える能力…だそうで。もちろん代償はありますが。」
「…はぁ。」
そこまで聞くと、赤城さんは呆れたように溜息を着いた。
「お前、本当に良く生きてたな。内容も込ならフォーアビリティ並じゃねぇか。」
「フォーアビリティ…って、4つの能力を持ってる人ですよね、居るんですか?」
俺がふと気になり、話の流れのまま赤城さんに聞くと、赤城さんは途端に険しい表情になる。
悔しさが顔から滲み出ている程だ。
…過去に何かあったのだろうか。…いや、あったんだろう。だから、こんな表情をしているんだ。
さっきの涼葉姉と、表情が似ている。
「あ、言いたくないなら言わなくても…」
聞かれたくない事だったか、と、慌てて取り下げる。誰だって、聞かれたくないことの一つや二つくらいあるだろう。
「いや、いい。フォーアビリティは…過去に1人だけ居た。」
そう言って、赤城さんは話し始める。
過去に1人だけ…と言うことは、もうこの世には居ないのだろう。
……もしかして、赤城さんの友人や家族なんかの、近しい人だったりしたのだろうか。
「…そいつはWMHA、一班序列第1位、命蓮坂夕日。……WMHAが誇る、エース……だった、女だ。能力は“剣聖”、“風雷”、“聖癒”、“導”の4つ。そして、俺の目指した人でもある。」