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5*能力Ⅰ


「情報交換と…勧誘?」


言われても、しっくり来ない。

情報交換する程の情報を俺は持っていないし、実質情報を貰うだけになってしまうのでは無いだろうか。

勧誘に関しても、それを切り出した青年が物凄く強いのだ。俺なんて、ただの足でまといになってしまうだろう。


「そうだ。ただ、決めるのは今じゃなくていい。一月後、また来る。その時までに決めて欲しい。」

「…俺じゃあ、役に立ちませんよ。ただの足でまといです。」

「俺はお前の将来性を買ってるんだ。」


将来性…?

…力の事だろうか。

……あぁ、戦闘じゃないかもしれないのか。化け物共を倒している為、それの協力的な物かと思ったが、よく良く考えれば単純に物資の運び屋みたいな感じの仕事かもしれない。


「……一応、話を聞かせて下さい。」

「あぁ。まず情報交換だが…交換するのは、敵、俺の情報。お前の能力の情報だ。」

「っ!」


……言っていいのか?安易に教えていい物なのか?この力は。

…だが、敵の情報はそいつと戦うかもしれないのだからいくらあってもいいし、そもそも自分の能力についても詳しくは分かっていない。

能力についての情報も得られるかもしれない。


……それに、勧誘と言う話が本当なら、騙す事はしない…と、思いたい。

なら…貰える情報の方が多い。

涼葉姉と萌を守るには、俺の能力がバレる事よりも情報の方が重要だ。

この情報交換は、受けた方がいいだろう。


「わかりました。ただ、先に情報を聞きたいです」

「良いだろう。」


既定路線の様に、なんの躊躇いもなく青年は話し始める。


「まず、敵の情報だが…食屍鬼の話はしたよな。」

「えぇ。」

「なら…猟犬からか。猟犬って言うのは、青白い煙を纏っている犬型の怪物だ。すばしっこいし、腐乱臭がキツイから、近接戦闘はオススメしない。他には━━━」





━━━━━━━━




「こんなもんかな。」

「成程。」


星の精だのムーンビーストだの漆黒の追跡者だの…色んな怪物が居るんだなぁ…って感じの説明だった。良く考えれば、いきなり自分より大きいヒキガエルの様な化け物が居るとか言われても、実感が湧くわけが無かった。

そして、名前がそこはかとなく厨二っぽい。特に漆黒の追跡者とか。誰がつけたんだよこれ。


「次は、俺に着いてだな。俺は、赤城 劔(せきじょう つるぎ)。WMHA(World Monster Hunting Association)…世界怪物狩り協会、一班序列第2位。能力は、“貫通”、“瞬風”、“風踏”の3つだ。」

「え?…えっ?」


WMHA…?序列2位?貫通、瞬風、風踏?

…ダメだ、頭がパンクしそうだ。落ち着いて、噛み砕いて考えよう。

説明してくれる筈なのだ。今無理して理解しなくても大丈夫。よし。


「あぁ、すまん。WMHAに関しては後で説明する。」


…もしかして、勧誘って言うのはそのWMHA…世界怪物狩り協会?にって事だろうか。

なら、先に能力について聞いておくべきだな。

後は…取り敢えず、多分偉い人なのだろう。なんて言ったって、2位だし。


「能力って、誰でも持っているものなんですか?」

「いや。能力を持つ人間は全体の1~2割程度だ。全部が全部使える能力とも限らない。俺やお前のような能力、それも近接戦闘向きな物ともなれば、かなりレアだろうな。」


成程。誰でも持っているなら、避難所内で試している人が居る可能性が高いか。

それなら、さっき入った所で見えてもおかしくない。だが、そんな素振りを見せている人は恐らくいなかった…筈だ。じっくり見た訳では無いため、確証はない。


「因みに、能力の入手方法とかはあるんですか?」

「あったら、苦労していない。それに、それならもっと持っている奴が居るはずだろう。」


たしかに。

入手方法が確立されているなら、1~2割ではなく、もっと色々な人が持っていても不思議じゃ無い。

と言うより、全員…は、悪用する奴がいる可能性が高いから出来ないが、ある程度の試験を付けて覚えさせていてもおかしくない。

寧ろ、そうするべきだろう。


「そうですね…。じゃあ、どのタイミングで入手するんですか?」

「あぁ?あぁ。お前、頭痛があっただろ?お前レベルの能力なら…相当の奴だった筈だ。」


……あれか。

…?まて、それなら…!


思い出せ、確かあの時…そうだ!

確かに、あの時、涼葉姉も、萌も…暁兄も、頭痛がしたと言っていた。

なら、能力を手に入れたのは俺だけじゃない。


ただ青年…赤城さんの口振りから察するに、頭痛の酷さで能力の強さが変わる。

なら、俺と暁兄の能力が強いんだろう。

暁兄が赤城さんでも手間取る怪物相手にあそこまで戦えていたのも、その能力のお陰なんだろう。


「確かにありました。」

「よし、じゃあ俺の能力の説明するぞ。」


思考を切替える。俺はまだ、自分以外の人の能力を全く知らない。

純粋に興味があるし、知っていて損は無いはずだ。人と対立する可能性もあるのだし。


「はい。」

「まずは貫通。どんなに硬い物質も貫通して攻撃できる。単純に強い。」


それは…強いな。

敵がどんなに硬い皮膚を持っていても、どんなに硬い盾を持っていても、ある程度のダメージが見込めるという事だろう。


「次、瞬風。風の力を使って普段の8倍程度のスピードが出せる。数回なら連続使用もいける。」


これは奇襲でも、逃走でも、戦闘でも使える汎用性の高そうな能力だ。

偵察や連絡にも使えるだろうし、かなり便利そうだ。

……もしかすると、会った時の食屍鬼を倒した時、これで体を加速させたのかもしれない。


「次、風踏。その名の通り、風を踏める。風を足場に出来るって事な。」


これも強い。

風を踏んで滞空できるという事は、空中戦も行けるのだ。疑似飛行も出来るかもしれない。

さっき聞いた怪物の話によれば、飛んでいる奴もいる。そう言うやつと戦う時に重宝されるだろう。


「成程。次はじゃあ…俺ですね。」

「あぁ。」


俺の能力は3つ。

“倉庫”、“店”、“武の極み”だ。


倉庫は、物を異空間に仕舞う事が出来る能力。

但し、仕舞えるのは俺が両手で持てる程度のサイズ迄で、手の平の上にしか出せない。

それに、中に入れていた物は俺が死ぬと亜空間から取り出せないままだ。

今は…暁兄の遺体が入っている。


店は、化け物を倒すとポイントが加算されて行き、そのポイントを使って色々な物を購入出来る能力だ。これだけで生きていく為の物資を賄えるルートだが、俺しか使えない。

俺が死んだらアウトだ。涼葉姉と萌も使えたら嬉しかったのだが。


武の極みは…化け物を倒した時に使った能力で、ありとあらゆる武器、武術を、達人レベルで使う事が出来る。

俺があの化け物…食屍鬼を倒した時に発動させたのはこれだ。

だが、無理をして体を使う為、鍛えたりしていない状態で使うと解除した途端物凄い痛みに襲われる。

最悪…死ぬらしい。

そりゃあそうだろう。こんな素人でも、あんな化物を殺せる程の能力だ。代償が無い方がおかしい。


さて、全部伝えるべきか…。いや、伝えるべきだな。


「俺の能力は3つです。」

「何?」


そう言うと、初めて…いや、俺が暁兄に駆け寄った時もだから…2回目の動揺を見せた。

目を見張っている。


「えっ?…赤城さんも3つでしたよね。」

「あ、あぁ…。おめでとう、お前は世界で6人目の━━トリプルアビリティだ。」

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