4*避難所生活 /1/
「蒼にぃ!」
「蒼くん!」
俺は今、青年に出会った場所から1番近い避難所である、俺達兄弟姉妹の誰も通っていないそこそこ大きな小中一貫校まで送って貰い、避難所の中に入り萌と涼葉姉と合流した所だ。
2人は俺に気付くと、すぐさま駆け寄ってくる。
あの後は、中学校に現れた奴━━青年が言うには、食屍鬼と言う種族名だそうだ━━しか出なかった為、発見次第青年が全て切り殺していた。
正直、アレは鬼と言うより人体実験に失敗した被検体の方がしっくりくる見た目だ。
“屍を食う”に関しては、生きている人間も食べるのだから、肉食で良いだろう。
因みにだが、道中鳩を食べている食屍鬼も居た。……別に、人間である必要は無い様だ。
「人じゃなくても良いなら人を食うなよ」と、思わず自己中心的な愚痴を漏らしてしまったが、青年は「人を食う必要は無くても、人を好んで食べる」と言っていた。
人で言う好物のような物だと。どんな生物だって、わざわざ好物の美味しいご飯が目の前にあるのに、不味いご飯は食べないと。
暁兄を吹き飛ばした方は、深きものと言う種族だそうだ。
硬い鱗のような皮膚に覆われ、泳ぎが得意なそうだ。まぁ、陸上でもかなり早いそうだが。
普段は海等の水場にいるらしく、何故あんな所にいたのか、青年にもわからないらしい。疑問符を浮かべていた。
「後で話がある。」
「わかりました。」
青年に耳打ちされた為、小声で返す。
なんの事…かは、考えても分からないだろうし、そのうち分かる。
考えるだけ無駄だ。そのまま青年は避難所の入口部分で引き返し、中に入って来ない。
避難所の中には、人が俺の思っていた数倍居た。……あんなに、外は化け物が溢れているのに、こんなに生き残ったのか。なのに、暁兄は━━いや、やめよう。
「ただいま…かな。」
「…暁にぃは?」
「…っ……ごめん。」
「っ!」
萌に…暁兄の事を聞かれた為、つっかえつつも、謝る。助ける事が出来なかったと。俺じゃあ、役不足だったと。
……それを聞き、涼葉姉は悔しそうな顔をしている。
━━涼葉姉は何も悪くないよ。あぁ。悪いのは俺だ。俺が無力だったから。
萌は…今にも泣きそうだ。
目尻に水玉をくっ付けて、必死に涙を我慢している。
━━ここは人が沢山居るから、迷惑をかけないようにと必死に我慢しているんだろう。
家族を失ったのに、他の人の事を考えられるなんて、強いな。
俺は……我慢出来なかった。
「ごめん…。」
「違うよ…蒼くんが、謝る事じゃ…ないから……。」
「ちょっと…さっきの人に呼ばれたから、行ってくるね。」
「うん…」
涼葉姉にそう告げて、逃げる様に青年が待っている避難所の前に行く。
避難所の前にも、そこそこの人が居る。人数確認の為の受付、それに並んでいる人々…という感じだ。
避難所に今の所化け物達が入って来ていないのは、化け物を倒せる、青年のような人達が守っているかららしい。
…今も、その人達に感謝の言葉を投げている、小学三年生くらいの少年がいる。
ああいう子が居るから、守っている人達も頑張れているのだろう、と、勝手に思った。思った所で、何にもならないが。
避難所の人々から微笑ましい目で見られている少年から視線を外し、青年に声を掛ける。
「……お待たせしました。」
「あぁ。」
「話って、何ですか?」
それを聞くと、青年は、被った帽子を取りながら言った。
「情報交換と、勧誘だ。」