38*避難所防衛戦 /13/
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【赤城 劔】
「つっても、もうやる事ほぼねぇけどな。」
蒼を回収した後、逆鱗から血を吹き出し、暴れ狂っている新種の怪物を見る。
図体は大きいが、特殊な能力はテレポート、防御のみ。強さとしては中の上って所か。……一応、接敵の知らせはしておいた方がいいな。
「あ、こちら赤城。新種の怪物と接敵。……スカーレット、そっちは頼むわ」
『ああ!任せろ!っしてもコイツと戦うの久々だなぁ!あっ!劔━━』
…はぁ。バトルジャンキーかよ。 いや、バトルジャンキーだったな。
あんな奴はほっといて、こいつを片付けるか。
━━瞬風。━━貫通。
「ふッ!」
こう言う奴相手には、この能力は本当に強い。………後、2、3撃ってところか。
避難所の方向に行かせないよう、敵を調整しながら攻撃する。
被害を出そう物なら、膨大な書類を書かされてしかも扱き使われるからな。
…にしても、良くここまで削った物だ。
俺が能力に目覚めてから2週間だと……まぁ、間違いなく無理だっただろうな。
そのくらいの強さはある。
「はッ!」
蒼が作った傷に、二回追撃を加える。ただでさえ、防御が薄くなっている所に貫通されるのだ。
ダメージは他の場所の2倍はあるだろう。
実際、その竜は聞くに耐えない雄叫びをあげ、地面に倒れて行く。……動かないな。中身は柔らかかったのか。
新種の怪物を殺すと言う目的は達した為、どうするかを考える。
「よし。あっちは……まぁ、大丈夫だろ。あいつが居てビヤーキー程度に負けるわけが無いしな。」
それより、この辺の食屍鬼を減らしておくか。俺が援軍に行って民間に被害出すと怒られるからなぁ…。
瞬風、瞬風。腕と足に能力の重ね掛けをする。身体に負担はかかるが、これならただ瞬風を発動するより早く動ける為、重宝している。硬い化物を相手にする時には、更に刀にも掛けるのだが…まぁ、食屍鬼なら問題ないな。
既に慣れた作業だ。初めて遭遇した頃は恐怖で動けなかったが、もう何千体も屠っている。
コイツは、本当にどこにでも出るからな。日本、ロシア、アメリア、イギリス。どの国にも数の差はあれど現れる。
他の化物は、大体それぞれの居る場所が決まっているのだが。
……まぁ、一振で倒せる敵と言うのは、ストレス解消にはいいのかもしれない。
食屍鬼に殺されてしまった人も沢山いる為、間違っても口には出せないが。
スパッ。スパッ。スパッ。
スカーレットや夕日の様な豪快さ、派手さはないが、確実に、一体ずつ減らしていく。
そろそろ、あっちも終わった頃だろうか。
『こちらブラウン。目標を達成した。帰るか!』
噂をすればなんとやら。
「あぁ。報告しに帰るぞ」
………一応、避難所の人にも伝えておくか。
1番近いのは…あれか。
「おい」
「うわっ!な、なんだ?兄ちゃん」
流石に、いきなり話しかけるのは不味かっただろうか。…まぁ、いいか。
「WMHAの援軍だ。目標を達成した為、帰還する。では。」
「あ?あ、あぁ…。」
それだけ言い残し、走る。
……毎回、移動拠点まで走るのはどうにかならないのか。迎えに来てくれれば良いのにと、何度思った事か。
「劔!」
「なんだ」
「報告が終わったら久々にやろうぜ」
「やらねぇよ。このバトルジャンキーが」
スカーレットと合流し、並んで走る。俺が居なくなってから、アイツも居なくなったようだし。暇してたのは分かるが。
だからと言って、戦いを吹っ掛けて来るのは本当にやめて欲しいところだ。お前は戦いが好きでも俺は好きじゃない。
「そうか、残念だ。…そうだ、こっちになかなか良さそうな奴がいたぞ」
「そっちにも誰かいたのか?」
見た限り、戦力はかなりギリギリだったはずなんだが。遠い方に戦力を割く余裕があの避難所にあったのか?…いや、いいか。面倒だ。
「無表情で、目は死んでたがな!」
「そうか。……まぁ、引き入れたいなら勝手に勧誘しろ。」
「そうだな!」
解除。
「スカーレット様、劔様、お疲れ様です。」
普段、受付をしている職員が出迎える。人を向かわせるなら、この移動拠点を向かわせて欲しい所だ。
「敬語は要らないと言っただろ。」
「そうだぞ!劔もこう言ってるしな!」
「あの…仕事ですので…」
まぁ、辞める気がないなら良いのだが。
…何故か、スカーレットの絡み方が前より酷い気がする。4ヶ月も放置したからか?
はぁ。面倒過ぎる。