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28*避難所防衛戦 /3/


━━━発動


能力を発動し、食屍鬼に突撃する。

敵は固まっている為、手動だと荷が重い。手動VS食屍鬼複数体はまだ勝てないだろう。掃討作戦で学んだ。

オートは消耗が激しすぎる事を考えると、やはりセミオートだろう。

一体ずつ、機動力…足から削いでいく。…とは言っても、俺が出来ることと言えば、出来るだけ情報を視界に入れることだ。

身体は勝手にやってくれる。周りを良く見て把握する事が大事だ。


どうやら俺と殆ど同じタイミングで、近接部隊全員が食屍鬼に向かって突撃したらしい。

右隣には、防衛部隊18班の斧使いの人がいる。

斧使いの人はボディビルダーかと思う程の筋肉持ち主で、快活に笑っていた所を数回見かけている。恐らく脳筋タイプの人だ。

因みに、俺より足は早い様で、重そうな金属斧を片手で持って走っている。

相手が人間なら、恐怖で足が動かないのではないだろうか。物凄い形相だ。


その奥には、気弱そうな小学校高学年くらいの少年。眼鏡を掛けていて、常に伏せ目がちだ。

こんな前線に出して、大丈夫なのだろうか。いやまぁ、それをいえば俺もまだ義務教育を終えていないのだが。


更にその奥には無表情な少年…青年?恐らく俺より年上かタメだろう。

ロボットかと見間違う程、表情が無い。凍り付いたような目をしていて、ピクリとも動かない。表情筋が死んでいるのでは無いかと思ったくらいだ。


反対側には、30代くらいのスーツを着た男性がおり、防衛部隊から借りたのであろう槍を持っている。

無表情の少年と気弱そうな少年は武器が見えない事から、ナイフ等の小さい武器を持っているのでは無いだろうか。


「ふんっ!」


1番前に出ていた斧使いの人が、食屍鬼の頭に斧を振り下ろす。

そのまま流れる様に左へ蹴飛ばした。

一見雑に蹴ったように見えるが、しっかり仲間に当たらないよう計算しているようで、邪魔にもなっていない。

因みに、一撃で倒し切れた訳では無いようで、食屍鬼は起き上がろうとしている。


「っ!」


俺は近くまで来た食屍鬼を視界に捕える。

目からは殺意しか感じ取れないが、身体は攻撃のタイミングを教えてくれる。

腕を横に。これは薙ぎ払い前の動作。涼葉姉は今居ない。射程範囲外ギリギリで止まるのが1番いいが、事故が有るとその時点で死ぬ可能性もある為、余裕を持って後ろに回避する。


ヒュッと風を切る音と共に、かなりのスピードで食屍鬼の赤黒い腕が眼前を通り過ぎる。

…恐怖を殺せ。俺が動じなければ、能力はしっかり殺ってくれる。


「はッ!」


薙ぎ払い後の硬直を狙って、足元に飛び込み刀を入れる。

が、食屍鬼が避けようと足を引いたため、切る事は出来なかった。

そりゃあ、そうだよな。今までがうまくいきすぎだったのだろう。何せ、狙った所に毎回当たっていたのだし。


「動くな、よ!」


願望を口にしつつ、体を反転させてもう一度同じ場所を狙う。

食屍鬼は━━━━


「っ!?」


咄嗟に身体を捻る。いや、捻ってくれた。

薙ぎ払いで使わなかった方の腕を、俺を狙って振り下ろして来ていた。

その拳は俺の体スレスレの所に落ち、地面を抉る。

服の一部が持っていかれたが、物理的ダメージは無い。

無理を通して攻撃する。

食屍鬼もかなり無理な体勢での攻撃だったのか、狙い通りに通ってくれた。

片足を切断した為、これである程度楽になるだろう。

飛び退きつつ、食屍鬼の拳が刺さった地面を見る。

アスファルトの地面は、その部分だけ歪にへこんでしまっており、生身で受ければ間違いなく一溜りもないだろう事を伝えてくる。


「本当に…」


良く避けてくれた。

やはり奇襲で一撃入れるのと入れないのとでは大きく違う。

周囲では、斧使いの人が奮闘しているのが見える。2対8くらいだろうか?気弱そうな少年を助けに行って囲まれた、という感じか。

助けに行った方がいいか?…いや、先にトドメを刺すべきか。


片脚を失い、バランスを崩している食屍鬼の背後に回る。

巨体故、四肢のひとつを失うと、途端にバランスを保てなくなるのだ。

安全マージンを取って、先に腕を切る。

近くに居た他の食屍鬼は現在、他の人がヘイトを買っている。安全マージンをとっている時間はある筈だ。


「ふッ!」


食屍鬼は直前で気付いた様だが、無傷の状態ならいざ知らず、足を失っている状態では録に反撃することも出来ず、一撃で切断できた。そのまま直ぐに体勢を戻し、後頭部へ短刀を振り下ろす。


下まで切る事は出来なかったが、それでも十分致命傷だろう。

俺はその食屍鬼を放置して、13体に増えた、少年と斧使いの人を囲んでいる食屍鬼の内一体の後ろに回る。

どうやら、無表情の青年も助けに来ていた様で、攻撃を始めている。

あれは…何をやっているのだろうか?青年が触った所が無くなるように消えて行く。

そう言う能力…だろうか?俺より強い避難民が多すぎる気がする。いや、俺のも充分強いのだが。…若しかすると、俺がこの能力の力をちゃんと引き出せて居ないのかもしれない。


まぁ、今考えることでは無い。

頭を振り、食屍鬼を見る。…そう言えば、既にミゴが居ないと言うのに、食屍鬼達は協力している。

……いや、まだ居るのか?生きてるミゴが。

可能性はある。打ち漏らしか、元々隠れていたのか、死んだフリか。

俺が考えている内に、身体の方は既に先程視界に入れた食屍鬼一体を倒していた。


斧使いの人の方を見る。

手間取っては居るものの、斧使いの人、気弱そうな少年の2人でヘイトを買い、後ろから無表情の青年が不意をついて倒している。

恐らく、俺が居なくても大丈夫だろう。そう判断し、食屍鬼達を無視してミゴの死体を探す。

…少しでも消耗を抑える為に、ここは能力を解除すべきか。


━━━解除。


その瞬間、激しい、刺すような痛みが身体中に走る。

激しい動きをすると、それだけ痛みは強くなるのだ。体を捻る動きがかなり負担になっていたのだろう。何とか座り込まずに耐え、閉じていた目を開ける。

よし。

ある程度痛みが引いてから、走り出す。最初に上を見た時は居なかったのだから、恐らく地面に居るだろう。


━━食屍鬼、食屍鬼、食屍鬼、食屍鬼、食屍鬼、食屍鬼、食屍鬼、食屍鬼、食屍鬼。

地面に広がる食屍鬼の死体。

この辺は、近接部隊が殺った奴らのようだ。という事は、ミゴはもっと奥。


━━━食屍鬼、食屍鬼、食屍鬼、食屍鬼、ミゴ…居た。

この辺りだ。

一先ず見付けたミゴの、首と思われる場所を短刀で断ち切る。

既に燃えて焼けているからか、掃討作戦で戦った奴より柔らかい。サクッと刃が入った。…こいつじゃない。

近くの民家の中に避難とかされていたら、俺一人で見つける事は難しいだろう。

取り敢えずはこの近くのミゴで探そう。





…………………。

……………。





「…ん?」


あのミゴ……羽が無いが、鎌と頭部、首の辺りは燃えていない。…あれか?


━━━━━発動。


俺はマッチの残りを取りだし、火を起こす。一応練習したからか、最初よりは早く灯せるようになった。

それを、ミゴの頭を狙って投げる。

狙い違わずしっかりと当たり、火が燃え広がる。動かない的になら、能力を発動して居なくても流石に当てられる。

すると、そのミゴは急にジタバタと暴れだした。すぐに気付けなかったのは不安要素だが、ミゴが死んだフリをする事が分かっただけ、良しとしよう。

因みに、見た目は生きたまま焼かれ、跳ねるエビに近いだろうか。

まぁ、食欲は湧かないが。

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