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27*避難所防衛戦 /2/


ただ、逃げるとは言っても涼葉姉は未だ能力発動中だ。自分で動く事は出来ない。

その為、直ぐに背負える様に準備しておく。

風流は発動時に頭に負担がかかる。そして、今はそこそこ広い範囲の投擲物を操作しているのだ。

今までは1つのものを操作していた為、どれだけ負担がかかるか分からない。

頭痛で直ぐに動けない可能性がある。


涼葉姉を見ていると、頭を片手で押さえ、顔を歪ませながら目を開けた。

連続使用より、1度の大規模発動の方が辛いのかもしれない。

涼葉姉を背負う。

……流石に、萌よりは重いな。

因みに、涼葉姉を背負うのは初めてだ。萌なら数回あるが。

背中に重みを感じるが、素の状態でも動けない程ではない。能力発動中なら走ることも出来そうだ。


そんな事を思いつつ、窓を開ける。

早く逃げないと捕まりかねない。仮に隠れて捕まらなかったとしても、この状況で孤立するのは駄目だろう。

避難所には萌も居るのだし、逃げて合流する以外の選択肢はない。


━━━発動。


ここで余計に消耗する訳には行かない為、オートではなく手動で動かす。

恐らくスピードでは、オートの方が早いと思う。だが、オートと手動、セミオートでは身体への負荷がかなり違う。

完全に任せるオートは未だに数秒で身体中が痛くなるレベルだ。セミオートはオートよりマシだが、それでも数分も経たずに解除時のダメージが辛くなる。

手動なら、恐らく10分程度なら大丈夫なのでは無いだろうか。


そのまま開けた窓から飛び降り、しっかり着地する。

足が地につき、落下の衝撃で倒れそうになるが気合と根性で耐える。

涼葉姉に頑張ってもらったのだから、俺も頑張らないと。

衝撃を逃がしてから、走り出す。


……………どうやら、手動発動のスピードでも、食屍鬼の移動スピードよりは早い様だ。





━━━━━━━━





「戻り、ましたっ!」


全力疾走で避難所まで来た為、息切れが激しい。

何とか近くに居た諏訪さんに報告し、後は任せる。俺は涼葉姉を保健室に連れて行かないと。


「了解。休んでて大丈夫ですよ。」


それを聞きつつ、保健室に向かう。


「蒼くん、そろそろ大丈夫……ちょっと恥ずかしい…」


すると、涼葉姉に肩を叩かれそう言われる。

確かに歳下にずっと背負われているのは、恥ずかしいかもしれない。


「あ、ごめん」


そう言って、涼葉姉を降ろす。

一瞬保健室の前までは背負ったまま行こうと思ったが、涼葉姉が大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう。




…………………。

…………………………………。




保健室に涼葉姉を預け、萌と合流し、体が反動で少し痛む中体育館に行くと、丁度遠距離能力部隊が3回目の一斉攻撃をした所の様で、食屍鬼の大群に火、土、水、黒い物体が幾つも飛んで行く。

恐らく、風と雷のような電気系の物もあったと思うが、どうやら風は単純に見えず、電気系は早すぎて既に敵に当たった後の様だ。

目立っているのは、やはり火だろうか。僅かに残ってしまったミゴに直撃し、燃やしている。

ただ、火は能力者の数が少なかった。逆に多いのは、土と風。

水も少なかったと思う。


因みに、水の能力者と火の能力者がいるなら、水問題なんてないかと思ったら大間違いで、水を出せるのは一日に2~3人分が限度だ。どうやら、土、風より燃費が悪く、飲める水を出そうとすれば休みながらでも頭痛が酷い様だ。ただ、戦闘に使う為に出すなら風、土と同程度の頭痛らしい。

既に1人が無理をして気絶してる為、その辺はかなり緩くなっている。

火は、扱いが難し過ぎて、単純に火起こしに向かないのだ。

黒い物体は、未だに何なのか分かっていない。

これは、土の塊より強いらしいが、その分燃費が悪い。

RPGの魔法で言う所の、土系統中級魔法、みたいな物らしい。


熊谷さん達も攻撃しているからか、既にかなりの数を倒している様だ。

パッと見、最初の半分程度は減っているだろうか。

ただ、そろそろ避難民能力者の頭痛が酷くなってくる。頭痛で集中出来なければ、敵に当たるものも当たらないだろうし、そもそも倒れられたら困る。

近接部隊が出る頃合いかもしれない。…あぁ、俺は最初の放火に組み込まれた為、ローテーションは後の方だ。

まだ休む時間はある。




…………………………。

……………………………………………。




「時間だ!交代しろ!」


仮眠をしていると、叫び声が聞こえる。

どうやら、交代の時間のようだ。チラっと確認したところ、敵の数は残り凡そ30体。全て食屍鬼だ。


「おっ!兄ちゃん、頑張れよ!」


と、帰ってきた琴葉に、笑顔で声を掛けられる。琴葉は萌の友達になってから、俺の事を萌の兄ちゃんと言う意味を込めて、兄ちゃんと呼ぶようになった。

俺の中で、俺より強い疑惑がある為あまり心配はしていなかったが、やはり返り血こそある物の、琴葉自身に怪我は無いようだ。俺に向かってサムズアップしている。


「あぁ。お疲れ、琴葉」


因みに、琴葉呼びは許可を取っている。…というか、前にちゃん呼びしたら怒られた。

軽く返事をしてから、俺は外に出る。


遠距離能力持ちの能力者は既に、殆どやるだけやって、今は休んでいる。

俺の他に戦うのは、熊谷さんの仲間である斧を持っている人と、俺と同じく避難民の3人。

後は遠距離能力者が2人。風と土だ。

この数だと、部隊と言うより班の方が近いかもしれない。

そんな事を思いつつ、短刀を取り出す。

ローテーションを繰り返し過ぎると、その内次の敵が来てしまう。

準備の時間を確保する為にも、今回で倒しておきたい所だ。

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