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26*避難所防衛戦 /1/


「見えたぞぉ!」


翌日、夕方。

遠くまで行って、大規模部隊の接近を知らせる為に待機していた熊谷さんの仲間が帰還した。

この調子なら、残り十数分くらいで来るらしい。


「投擲部隊は今すぐ移動しろ!わかっていると思うが、命優先だ!」


熊谷さんから指示が出た為、準備を始める。

この防衛戦では、司令官が熊谷さんと校長先生。能力者の指示を熊谷さんが担当して、非能力者の指示を校長先生が担当する。

現地では、諏訪さんが部隊長みたいな役割を持っている為発言力が高い。細かい指示は諏訪さんが出す感じだ。


俺は涼葉姉と一緒に、西の方向にある民家に向かう。

奥側は掃討作戦時に被害を受けた所が多いため、そこより避難所に近く、やや手前だ。


因みに、これは撤退を考慮した結果でもある。

遠すぎると体力的に逃げきれない可能性があり、近すぎると敵に接近され過ぎてしまう。

防衛部隊18班の面々と、学校側が3時間以上話し合って決めたらしい。

大事な部分なのだし、慎重になるのは仕方ないと思うが、出来れば長くても1時間かそこらで決めて欲しいものだ。そんなに時間は無いのだから。


因みに、涼葉姉が着いてくる理由は能力にある。

やはり屋外で投擲する場合、室内の時よりも命中率が下がるのは風の不確定要素があるからだろう。

それを、殆ど無くす事が出来、更に味方につけ、命中率をあげることが出来る。

ミゴの動きも阻害出来るかもしれないし、“風流”を持った涼葉姉は適任なのだ。





…………………。

………………………………………。





「よし……まだ、見えてないな。」


一先ず持ち場に着き、敵の姿を探す。

未だ見えていない事から察するに、予測より少し遅れた進軍の様だ。

敵が見えていないなら、今俺に出来る事はない。


見える範囲にくれば、直ぐ様諏訪さんから念話が来る。一斉に投擲するのも諏訪さんのタイミングだ。

因みに、諏訪さんの能力である念話。あれは、諏訪さん→通信相手A、諏訪さん←通信相手Aは出来るが、通信相手B→A等の諏訪さんとの会話以外には使えない。

ただ、大声を出そう物なら遠距離攻撃で先制される恐れがある。

だからこそ、敵にバレず、タイミングを合わせる為に諏訪さんの判断で全員に指示を送る。

恐らく、今1番緊張しているのでは無いだろうか。


………いや、涼葉姉も同じくらい緊張しているかもしれない。

責任重大なのは、この2人だからな。

ストレスを出来るだけ少なくしたいところだ。まぁ、こんな状況だし、全く溜まらないと言うことは無理だろう。


「涼葉姉、相手は何回も戦ってきた食屍鬼だ。いつも通りやれば勝てる。」

「うん。……任せて、蒼くん。」


俺がそう言うと、涼葉姉はしっかりと目を見て言ってくる。

…杞憂だったかもしれない。


『見えました!』


そこで、念話が送られてくる。

その言葉に反応し、外を見てみると、小さくこちらに向かっている黒い集団が見えた。


数は……150は居るように見える。

おかしくないか?会議の時、目測ではあるが合計380と言っていた。それを4部隊に分けるとなると、数がおかしい。

いや、先鋒に全力を入れるタイプの可能性はあるが。


「………まぁ、やるしかない、か。」


数に疑問は残るが、俺のやる事が今すぐ変わるわけではない。

ミゴにライターとマッチを投げる。それだけだ。




…………………………………。

……………。





奴らの進軍スピードはあまり早くなく、姿が見えてからも3分程は休む事が出来た。

だが、既に顔が見える辺りまで近付いて来ている。そろそろだ。

先鋒部隊の方を見ると、食屍鬼の黒い巨体で道路が埋め尽くされていて、その上空には、ミゴが浮いている。

雑に数えてみたが、20体近く居るんじゃないだろうか。

敵の情報が間違っていないなら、相手はミゴの3分の2を先鋒に入れた事になる。


…しかし、いざそろそろだとなると、大丈夫だろうか、当たるだろうかと不安、焦りが湧いてくる。

自分で「いつも通り」と言っていた奴とは思えない心中である。

大丈夫、いざとなれば涼葉姉もいる。

大丈夫、大丈夫。

出来る出来ないじゃなく、やる。


「……よし。」


俺は、投擲用のマッチに火をつけ、涼葉姉を見る。

直ぐに能力が発動出来るように、構えていた。


『投擲準備!』


諏訪さんから念話が届く。

それを聞き、火の点いたマッチを振りかぶる。


『2…1…今!放て!』


能力発動…!

と同時に、ミゴに向かって全力で投げる。その軌道を見ずに、直ぐ様ライターを点火する。

恐らく、非能力者は既に逃げ始めているはずだ。


「ふッ!」


1番遠いミゴに向かって投げる。

よし、後は逃げるだけだ!

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