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23*避難所生活 /9/


「なぁ、お前、物を買えるんだって?」


考え事をしていると、不意に後ろから声を掛けられる。

振り返ると、男子大学生3人組が立って居た。

ニヤニヤと笑いながら、まるで下僕でも見るような目を向けてくる。

……よく見ると、何処かで見たような…?


「……はぁ。なんでしょうか。」


面倒だが、騒ぎを起こす方が面倒だし、一応話を聞く姿勢を摂る。


「いやぁ、俺らな?食屍鬼狩り、頑張ったんだわ。」

「はぁ。」

「なのによ?報酬がしょっぼい訳!」


そうそう、このチームは食屍鬼を殺した数が最多と言う事で、追加報酬を貰っている。

まぁ、ポイント3じゃ買えるものが限られているし、ある程度しょぼいのは仕方ないところが大きい。

諦めてもらうしかないな。


「そうですね。」

「だからな?俺らのモチベを上げる為に、ピザでも買ってくんね?ほら、困った時はお互い様だろ?」


と、高圧的な笑みを浮かべ、顔を覗き込んでくる。

……あぁ、思い出した。

この3人組、家の近所に住んでた3人組だ。

前見た時は高校生だったから、分からなかった。

1年前、俺達が両親を失った時、やたら嘲笑したり、ちょっかいかけたりして来たヤツら。

ストレス発散に親を失った年下を使う奴が、困った時はお互い様?


「ははっ。」


思わず、笑みがこぼれてしまう。

「困った時はお互い様」は、助ける側が相手に気を遣わせないために本来言う言葉であるし、そもそも俺達が困っている時、こいつらは全く助けなかった。

何がお互い様なのか。


「なんだよっ!」


俺が笑った事に不服なのか、煽られたと思ったのかは分からないが、急に怒り出す。

………子供かよ。


「いえ、自分達は人を助けないのに助けてもらう時だけお互い様って、何がお互い様なのかと思いまして。」

「あぁ!?」


図星を付かれると、直ぐに相手を威圧して抵抗させない様にする。

……やっぱり、子供だ。

最早、萌の方が精神年齢は高いんじゃないかと疑うレベルである。


「だってそうでしょう?親を失った、歳下の他人をストレス発散に使って、自分達は必要最低限の物じゃない嗜好品を強請る。そんな人がお互い様?笑わせてくれますね。」


笑顔で言い返す。

悪いが、食屍鬼よりも、武の極みのオートよりも怖くない。

死の恐怖を感じない。


「何やってるんですか!?」

「あ、諏訪さん。どうも」


笑顔で睨み合っていると、騒ぎを聞き付けたのか、諏訪さんがやって来た。

……今まで俺に要求を出して来ていた大学生は、諏訪さんが来た途端、高圧的な態度を辞め、笑顔になる。

……諏訪さんが好きなのか?……いや、どうでもいいな。

こいつらを制御してくれるなら、なんでもいい。


「諏訪さん!どうも!」

「何やってたんですか?」


俺達が最初の問いに答えないからか、聞き直してくる。

横を見ると、言ったら承知しねぇぞと言わんばかりの目でこちらを睨み付けてきている。

後ろの2人は……あぁ、こいつがリーダーなのか。

リーダーを怒らせない為に、極力目立たないようにしているようだ。


「いえ、ピザを強請られた物で。お断りしていたんですよ。」

「そうなんですか?」


俺がそう言うと、諏訪さんは若干訝しんだようで、ジト目で大学生を見ている。


「え、えぇ。頼んでみたんですが、断られちゃって。」

「なんだ。それなら良かったです。」


と、諏訪さんは溜息をつきながらやれやれと手を振る。


『で、どうなんですか?』

『急に念話されると驚いて心臓に悪いのでやめてもらっても?』

『言ったらバレるじゃないですか。』


納得している振りをして、どうやら、俺が脅されている可能性を追ったようだ。

……まぁ、都合がいいかも知れない。


『そうですね。あ、そうそう、お願いがあるんですけど』

『なんですか?』

『彼…この大学生に問題を起こしたら嫌いになるって言って貰えませんか?』

『え?…まぁ、良いですけど。』


疑問に思いながらも、承諾してくれた。


「でも、問題を起こしたりしたら、私、嫌いになりますからね?」


ほぼ指示通りに言ってくれた。

大学生を見ると、首をブンブンと縦に振っている。

……諏訪さんに手網を持たせておけば、普通に戦力として頼りになるのでは??


『で、実際さっきのはなんだったんですか?』

『普通にピザ寄越せって脅されただけですよ?』


因みに、ビザやカレー、肉じゃが等の材料が1種じゃない物や、作るのに時間がかかる料理は基本的に消費ポイントが多い。

その代わり、焼き魚とかは少ないポイントで買える。

そういう物を食べたい時は、素材を買って作った方がポイント消費は半分以下になる。

今は買う物がある為、そんなにポイントを無駄遣い出来ないのだ。

……まぁ、作った方が安いと言っても、ピザを焼く設備なんてないと思うが。


『脅されたって…』

『食屍鬼とかミゴの方が怖いですし』

『…まぁ、そうですね。』


そう言いながら、諏訪さんは微妙な表情をしている。

それを見て、大学生は頭に?を浮かべている為、諏訪さんには念話使用時のポーカーフェイスを磨いて欲しいものだ。

下手をすれば、不審に思われてバレるのだから。

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