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2*崩壊する日常/2/


くそっ!

俺は悪態を付きつつ、多少の怪我は承知で塀を降り切る前に飛び降りる。

少し足が痛みを訴えてきたが、気にせずそのまま、後ろを振り返らずに走り出す。

……去り際、後ろから、近くで先に塀を登っていた男子生徒の悲鳴が聞こえた…気がした。



━━━━━━━



「はぁっはぁっはぁっはぁっ…くそっ!あとちょっと…!」


目的の、集合地点まであと少しの距離だが、最近はあまり運動もしていなかった事が災いし、息が切れてしまう。


その集合地点までの距離は、俺の通っている中学が1番遠いのだ。

皆を待たせてしまう…


「はぁっはぁっはぁっ…皆!」

「蒼にぃ!」

「蒼!」

「蒼くん!」


息切れしながらもなんとか集合場所に着くと、予想通り皆は既に集まっていた。


「ごめん!遅れた!」

「いや、いい。…この辺にはまだアイツらは居ないみたいだ。蒼の休憩を兼ねて、情報共有しよう。」


暁兄がそう言うって事は、中学以外にもあの怪物達が居た可能性が高い。

……そう言えば、あの頭痛。

タイミング的には今の状況と何か関係が有りそうだが、どうなのだろうか。

他のクラスメイトは特に苦しんでいる様子は無かったから、俺だけだったのか?

……取り敢えず、皆に聞いてみるか。


「…そう言えば、あの化け物が現れる直前に激しい頭痛があったんだけど、皆はあった?」

「あ、俺もあった。」

「私もあったけど、そんなに激しくなかったよ」

「私も頭痛自体はあったけど、殆ど痛くなかった。」


上から暁兄、萌、涼葉姉、だ。


「って事は、頭痛の激しさに差はあっても一応皆あったのか。」

「そうみたいだな…。」

「……そう言えば、あの化け物って何体いるんだろ?」


涼葉姉がふと呟いた。

確かに、気になる所ではある。一体では無い事は確定しているが。


「俺と涼葉の所には7体居たな。」

「私の所は…多分2体。」

「俺の所も多分2体だった。」


7、2、2。

高校だけ多かったのか?……それとも、何か立地的な問題か…?

……いや、今考えても仕方ないな。どうせ、今考えてわかる事ではないのだし。

そろそろ息切れも治まってきた。ここにもあの怪物は来るかもしれないのだから、他の、隠れられる場所か避難所に移動した方がいいかもしれない。早めに移動するのはアリだろう。…と言うか、既に他の人は避難しているかもしれない。


「…そろそろ移動しよう。1箇所に留まるのは得策じゃない。」

「賛成。」


と、皆で荷物を持って移動を開始した時。

奥から、アレが姿を現した。

━━もうこんな所まで来てたのかよっ!


「一足遅かったか…!逆方向に逃げろ!」


暁兄の指示に従って、一斉に反対方向に逃げる。

しかし、目の前の通路から別個体が現れた。2体はそれぞれ俺たちを見つけ、こちらに歩いて来る。


「くっそ!挟み撃ちかよ!」


思わず悪態を付く。

暁兄も苦虫を噛み潰したような表情で、何かを悩んでいるようだ。

そんな事をしている内に、前後からジリジリと距離を詰められる。このままだと不味い。


「…っくそが!蒼!涼葉!俺が囮になるから萌を連れて逃げろ!これは自己犠牲じゃない!お前らより俺の方が動けるんだ!俺が残った方が全員生存出来る可能性が高いんだ!早く行け!」


悪態を着きつつ、暁兄が言う。

確かに、俺ら4人の中では暁兄が1番運動神経がいいし、足も早い。

俺や涼葉姉が囮になるよりも、数倍は全員で生き残れる可能性があるだろう。


「……っ!わかった!すぐ戻るよ!」

「おう!……化物共はこっちだ!」

「萌、涼葉姉!行こう!」


そう2人に言って、俺は暁兄を置いて逃げ出した。

早く助けを呼ばないと…!

……でも、こんな状況で、助けてくれる人等、居るのだろうか。

…いや、今は少しでも希望に縋るしかない。



………………。

………。



「誰か!兄が化け物と戦っているんです!誰か!」

「何方か居ませんか!」


涼葉姉と俺は、走りながら藁をも掴む思いで声を張り上げる。

……分かっては居たけど、やっぱり誰も返事をしてくれない、か。

…そもそも、まだこの辺りに人が居るかどうかすら怪しい。生きているなら避難しているだろうし、怪我を負って動けないなら、助ける事は出来ないからだ。


「おい」

「…えっ?」


急に、右から聞き慣れない男の声がした。

思わず立ち止まり声がした右の方を見ると、10代後半くらいの、腰に刀を2本差した青年が立って居る。

帽子を目深に被っていて顔が見辛く、そこはかとなく怪しい。

そして、そのすぐ後ろにはあの化け物が。


「あっ…!後ろ!」


思わず声を出してしまう。

が、その化け物が腕を振り下ろした瞬間、青年が刀を抜いたかと思うと、後ろの、化け物が真っ二つに切られていた。


「え?」

「何処だ。」

「えっ…?」


驚くべき光景に、頭が追い付かない。

何が起こった?青年が刀を抜いて…?


「お前の兄が戦ってるのは何処だ。」


…もしかして、助けてくれるのだろうか。

助けてくれるのなら、今は細かい事はいい。


「っ!こっちです!涼葉姉と萌は先に避難所に行ってて!」

「…っ!わかったわ!蒼くん、お願いね!」

「蒼にぃ!」


萌が心配そうにこちらを見ていたが、俺は構わず案内をしつつ来た道を走る。

早く、早く行かないと…!手遅れになる前に!


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