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18*食屍鬼掃討作戦 /5/


「この辺りだったはず…涼葉姉、萌!あの建物を登ろう!」


近くにあった、3階建ての建物を指さしつつ、そう言う。

今、やっと食屍鬼とミゴが現れたと言う場所の近くまで来た。

道中、何回も食屍鬼に遭遇し、その都度戦闘し殺していたせいで、かなり時間がかかってしまったのだ。

……全滅していないといいが。

因みに、俺の服は既に返り血まみれで、最早元の色が分からない所まで来ている。

涼葉姉と萌は勿論無傷だ。


「うんっ!」

「わかった。」


そろそろ戦闘に備え、体力を温存したい為、駆け上がったりはせずに、ゆっくりと登る。

と言うか、ここまで急いで来たせいで、萌の体力が既に限界なのだ。

涼葉姉は…少し疲れの色が見えているが、萌ほどでは無い。

………まぁ、俺もかなり疲れて来ているのだが。

こんな事なら、こうなる前から運動をもっと頑張るべきだった。

今更思っても仕方ない事ではあるが、思わずには居られない。


「はぁ…はぁ…ふぅ。」


取り敢えず階段を登りきり、3階から周囲を見渡す。

………居た。

戦っている少数の人と、十数体が固まっている食屍鬼の集団。

その上空に浮かぶピンク色の物体…。

どうやら、まだ持ち堪えているようだ。

…ただ、位置が聞いた所と少しズレているのと、戦闘している人数が明らかに30人も居ないことが気になる。

………余り、休んでいる時間は無さそうだが、かと言ってそれで萌と涼葉姉を危険に晒す訳には行かない。

どうするか…。


すると、そこに物凄いスピードで参戦する人影が見えた。

燃えているナイフのようなものを持っていたし、あの琴葉と言う幼女だろう。

その幼女は、上手くヘイトを買って、食屍鬼を誘導している。

これなら、休む時間を貰えそうだ。


「他の援軍が間に合ったみたいだから、少し休もうか。」

「…賛成。萌が限界だから…。」

「蒼にぃ、助かる…はぁ…はぁ…」


とは言っても、俺だけでも直ぐに行ける様に、戦況を見続ける。


…見た所、現在も戦っている能力者は幼女を入れて8人のようだ。

因みに、その中で涼葉姉やあの男子大学生3人の様な魔法系を使っているのは6人。


………ただ、よく見ると全員がある程度傷を負っている。

…あれは、食屍鬼の攻撃による傷じゃないな?所々切れている服を見るに、切り傷の様だ。

そこでふと、ミゴは何をやっているのかと思い、上を見ると、何やら鎌状の腕を振っている。

上空に居て、その場で振っても当たるわけないが…………もしかして、あれは何か、魔法の様な遠距離攻撃なのだろうか。


思い当たるのは、透明の攻撃…?

なら、傷を負っている能力者達が、既に倒れていてもおかしくない。

風の刃か?それで、完全な透明ではなく、近くだと薄らと見えるのかもしれない。

それなら、気付くのが遅れて避けきれなかったから、少しだけ切られたと言う状況なのだろうか。

有り得る。

………そろそろ、幼女1人であの数の食屍鬼を引き付けるのが難しくなって来たようだ。


「萌、涼葉姉、大丈夫?」

「えぇ。」

「うん!もう大丈夫っ!」


俺は、萌と涼葉姉に体力が大丈夫か確認する。

よし、行くか。


「ねぇ、蒼にぃ」

「ん?どうした?」

「私、あの人達、助けたい。」


すると、萌から声をかけられた。

……もしかして、治癒で負傷者を治したいと言う事だろうか。

……正直、俺としてはやって欲しくないが。

誰かを治せば、他の奴も治せと言ってくる。そいつらは最初は感謝するだろうが、何回もやれば増長し、回復して貰えるのは当たり前と思う、考える様になる。


もし萌の治癒に限界が来て、治す事が出来なかった時…治せなかった奴、それに近しい奴から罵倒を受ける。

そんな光景が目に見える様だ。

……だが、萌の気持ちは尊重したい。


「………いいぞ。」

「本当!?」

「蒼くん、いいの?」

「その代わり、条件がある。」

「うん!」


恐らく、俺に掛けていた時に汗をかいていたって事は、少なからず代償があるんだろう。

だから、これだけは守ってもらわねば。


「絶対に、無理はするな。俺が大切なのは、萌が治す人じゃなく、萌だからな。」

「うん!」

「よし、行こう。」



━━━━━━━━



「援軍に来ました!状況を教えて下さい!」


俺は戦闘している人達が行かせたくなさそうにしていた方向で、建物がそこそこ綺麗に残っている所を探すと、直ぐに怪我人達を隠している所を見つけた。

そこで、WMHAの熊谷さんの仲間と思われる人を見付けた為、声を掛ける。


「助かる!時間が無い。簡潔に話そう。戦えるのは残り11人。重傷者が27人、死傷者が4人だ。敵は浮いてる奴が遠距離攻撃を使って来る。良く見れば回避出来るが近くまで来ないと分からない!気をつけてくれっ!」

「了解です。この子…俺の妹なんですけど、怪我人の所に連れてってやって下さい。役に立つと思います」

「お願いしますっ!」


そう言うと、その人は一瞬考えた後、顔を上げた。

恐らく、回復系の能力者だと思い当たったのだろう。


「わかった。こっちだ!」


そう言って、萌を案内して行った。


「よし、涼葉姉、援護お願いね」

「任せて。蒼くん!」


それだけ言って、俺は建物を出る。

…まず、ミゴの攻撃を見ておきたいが…


「……ここじゃあ、まだ見えないか。」


どうやら、もっと近くないと行けないらしい。

仕方無い。

そろそろ本当に幼女がやばいので、突撃する事にする。ヘイトを買うなら…叫びながら行くのが1番か?


………石でも投げて見るか。

俺は恐らく食屍鬼が壊したであろう塀の瓦礫を1つ拾って、能力を発動する。

そのまま、思い切りミゴに向かって投げる。


……これ、少なくとも左腕骨折してる時にやることではないな。かなり痛い。

投げた瓦礫は一体のミゴに当たったが、殆どダメージは無いようだ。


ただ…ヘイトは買えたらしい。今まで幼女を追っていた食屍鬼の内、五体が俺の方に向かってくる。

……丁度、3分の1。

もしかして、それぞれが指示出来る食屍鬼が決まっていたりするのだろうか。

それなら、それぞれ一体ずつヘイトを買えば、分断出来る。


「援軍です!こいつら、多分それぞれ5体ずつ指示出来るやつが違う!分断しましょう!」


そう叫び、俺は涼葉姉から見える範囲で、他の避難民から距離を摂る。

ミゴと五体の食屍鬼は、しっかり着いて来てくれている。

有難い限りだ。

……それにしても、さっきのでしっかり伝わっただろうか。

………まぁ、伝わって無くても、やるしか無いのだが。

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