10*避難所生活 /4/
よし…!
声にこそ出さないものの、思わずガッツポーズする。
確かに、最悪武の極みに任せれば殺れると言う安心感はあったが、最初の戦闘は俺自身、何もしていない。
ただ力に身を任せていただけだ。
だが、今回は自分の勝利という達成感がある。少しでも自分で何かをやるだけで、ここまで違うとは。
……そうだ、早く帰らないと。
俺は我に返り、来た道を戻る。
今、何時くらいだろうか?あまり時間は掛かっていないような気がするが、実際にはもう、かなり時間が掛かっているような気もする。
戦闘に集中していたからか、どのくらい経ったかが分からない。
まだ辺りが暗い事から、6時は過ぎていないと思うが…。
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避難所に着いた俺は、そーっと、人を起こさないよう、出来るだけ音を立てないように避難所に入る。
そのまま奥の萌と涼葉姉が寝ている所に行くと、まだ2人ともすやすやと寝息を立てていた。
…よかった。
ほっと胸を撫で下ろす。
起きて心配されていたらと、避難所への帰り道、気が気出なかったのだ。
俺は萌と涼葉姉を起こさない様に傍に座り、今のうちにと目を瞑って“店”の能力を発動する。
すると、閉じている視界の中央に、文字の羅列…商品一覧、左上に所持ポイントの表記が現れる。
所持ポイントは4ポイント。どうやら、食屍鬼一体に付き2ポイントのようだ。
俺の能力だからか、念じれば4ポイント以下で購入出来る一覧が出て来る。
割と便利だ。
…だが、この能力、予想はしていたがやはり使いながら動く事が出来ない。
目を瞑るのだから、当然といえば当然だが。
因みに、もう1つの倉庫に関しても、入れるのは早いが出すのは遅い。
しかもこれまた、使用中に他の行動が出来ないと言うデメリットがある。
閑話休題。
それはさておき、今の所の購入候補はこんな感じだ。
…1ポイントで小さめの氷3つ。
…3ポイントで500mlの水。
…4ポイントで小さめの桃缶。
…4ポイントで小さめの蜜柑缶。
…4ポイントで250mlのオレンジジュース。
そろそろ夏だ。
この避難所にはクーラーやエアコン等無いし、昼はかなり暑くなる。
少しでも暑さを和らげるなら、氷だろう。
水は生きていく上で必要な物だ。
特に、夏は脱水症状に気をつける為にも、多めに持っておいて損は無いだろう。
…因みに、米等の炭水化物は高かった。
1番ポイント消費が低い、乾パン5個ですら食屍鬼3体分、6ポイントだ。
この際、誰が決めているのかとかどこから、何から作ってるのかとかは気にしない。
使える物は使っていこう、生き残る為に。
桃缶は、萌の好物だ。
萌は桃が大好きで、誕生日には毎年食べていた。渡せば、きっと喜んでくれるだろう。
蜜柑缶は、涼葉姉の好物だ。
両親が事故で死ぬ前は、良く食べていた。…最近は、食べている所を全く見ないが。
オレンジジュースは、2人とも好きな飲み物だが、そこまで好きかと言われると首を傾げるレベルの物だ。
うーん。
…ここは、オレンジジュースにしよう。
桃缶を買っても涼葉姉は文句等言わないと思うが、涼葉姉にも休んで欲しい。
能力を発動する要領で購入と念じると、どうやら手に持つわけではなく、倉庫に自動で入ってくれるようだ。
バレにくさを考えるとありがたいが、緊急の時は逆に使いにくいだろう。
…記憶を辿って思い出してみると、どうやら切り替えも出来る様だ。
ありがたい。
……ただ、買ったは良いが何処で渡そうか。
他の避難民が見ているところで渡すと、要らない嫉妬を買う可能性が高い。
…機を見て、外で渡すか。
そう結論付け、能力を解除し、目を開ける。
すると、涼葉姉が起きていた。
「おはよう。涼葉姉」
「ん…おはよう、蒼くん。」
寝起きの涼葉姉は、大体髪が凄く跳ねている。
芸術レベルだ。
…櫛は、何ポイントだったかなぁ…。