1*崩壊する日常/1/
1話1000~3000文字程度で頑張って行きます!
俺の名前は晃峰 蒼。
高校三年生の兄と高校一年生の姉、小学生五年生の妹を持つ中学生。
学年は2。
その為、姉とも妹とも2年以上離れている。
小学生の頃はサッカーをやっていたが、運動神経はかなり贔屓目に見ても人並み以下だ。
中一の時、一時期不登校だったせいで頭も良くない。
ゲーム、小説、アニメ等のサブカルチャーは大好きで、学校に行けなかった時期も良く見ていた。
『未だに各国と連絡が取れず━━』
「まだなのか。」
思ったことを深く考えず、そのまま呟く。俺が今見ているのは全国放送のニュースだ。
画面の向こうでは、女性ニュースキャスターが一言も噛まずに長い文章を読んでいる。
実は、最近。
日本では、他国と連絡が取れていないらしいのだ。
1ヶ月程前からユーラシア大陸の国々と。
それからだんだん連絡が取れる国が減って行き、既に今連絡が取れるのはオーストラリアくらいだと、ニュースで連日放映している。
「蒼にぃ!ご飯だよ!」
妹の晃峰 萌が態々呼びに来てくれた。
萌は、元気が取り柄と自分で公言している。
髪型はショート。
身長はやや低めだが、顔立ちは身内贔屓を抜いても整っていると思うし、愛想もいい。他人から見ても、美少女に入る筈だ。
「ありがとう。今行くよ。」
━━━━
「行ってきます。」
「行ってきまーす!」
外出前の挨拶をする。
と言っても、返事は返って来ないのだが。
1年前、母と父は交通事故で死んだ。
幸い保険金で生活は出来ているが、姉の晃峰 涼葉と兄の晃峰 暁は死ぬ気でバイトをしてくれている。
涼葉姉と暁兄は朝が早い。
勉学も怠らず、時間の余裕が余り無い為、既に家を出ていて居ないのだ。
萌は、俺の通っている中学と途中まで通学路が同じな為、いつも同じ時間に出る。
いつも通り戸締りの確認をして、家を出る。
「よし、じゃあ行こう」
………………………。
………………。
「っ!?」
今は2時限目、学期末テスト前の自習時間。
自習は何をやろうかと机を漁っていると急に、頭にキーンと高い音が響いたかと思ったら、直後物凄く激しい、割れるような痛みに襲われる。
耳鳴りも酷い。
「っ!?あぐ、あがっあぁぁぁああ!」
「えっ!?蒼君どうしたの!?」
死を連想するような程の強い痛みに、思わず叫び声のような物が漏れる。
左隣の席に座っている女子で、学級委員の命蓮坂華蓮が何か言っているが、痛みで声がかなり遠く聞こえ、聞き取る事が出来ない。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い━━━━━━
………。
……………………。
「っ!はぁ…はぁ…」
「大丈夫…?」
大分、痛みと耳鳴りが引いてきた。
すぐ近くから声がしたので、左を見ると、華蓮が心配そうに話しかけて来ていた。
…頭が痛み始めた時も声をかけてくれていたようだったし、もしや、ずっと声を掛けてくれていたのだろうか。
…痛みで思い切り大きい声が出ていたからか、クラスメイト全員が、何事かと俺の方を見ている。
「…いや、大丈夫。皆ごめん」
「ったく。」
手を合わせながら、頭を下げる。
謝る俺にクラスメイト達は直ぐに興味が失せたのか、視線を前に戻し自習に戻る。
俺は、虐めとまでは行かないが、クラス内の扱いがそこそこ悪い。
苦笑いを浮かべながら、クラスメイト達に謝り続ける。
痛みは俺のせいでは無いとはいえ、大事な勉強時間の邪魔をしたのだ。しっかり、ここは謝るべきだろう。
「本当に大丈夫?」
「あぁ。大丈夫だから」
「そっか。…何かあったら遠慮なく言ってね?」
そう、華蓮が上目遣いで言ってくる。美少女がやると、破壊力がやばい。
華蓮は黒髪ロングのストレートで、容姿端麗、成績優秀。しかも、基本誰にでも優しい。
あまり人と関わらない、俺にすら優しい。そんな女子に人気が出ないわけが無いだろう。
…まぁ、そんな人気者が隣に居るせいで俺への当たりが強くなっていると言う側面もあるのだが。
「あ、あぁ。大丈夫だ。」
あまりの破壊力に、若干キョドりながらもそう言って、視線を前に戻す。
…それにしても、さっきの頭痛はなんだったんだろうか。
痛すぎて、比喩でもなんでもなく、本当に頭が割れるかと思った。
「ね、ねぇ、あれ何?」
怯えるような声が聞こえた為、思考を中断し声の方を向くと、窓際に座っているクラスメイトの女子が校門の方を指差して聞いている。
それを確認するために、何事かと他のクラスメイト達も窓際に集まっている。
……どうやら、誰も分からない様だ。
誰も窓際から退かないせいで、既に人集りが出来ている。
俺も好奇心に駆られ窓際により、人集りの端の方からそれを確認するため、覗いてみる。
すると、校門の外には━━━
━━━━首が無く、身体が黒い、腕や足が異様に発達した人型の何かが居た。
……いや、「首が無い」と言うよりは、「頭部と胴体がくっ付いている様に見える」という方が正しいかもしれない。
ソレは体が成人男性の2倍の大きさはあり、目は血走っている所か最早赤黒く、口も血を流した様に真っ赤で、だらしなく開けている。腹部は膨らんでおり、肥満体型と言えるだろう。
いち早く駆けつけた体育教師が、ソレに向かって一応声を掛けているが、どう考えても人ではないため、返事はまずないだろう。
……予想通り返事が無く、反応を示さないソレに苛立ったのか、近くに居た清掃員の人から箒を借り、体育教師が近付いて行く。
その時俺は、勇気あるなぁと、他人事の様に見ていた。
体育教師が、ソレの腕が届く距離まで来た時。体育教師が、箒でソレをつつこうとした時。
それまで反応を示さなかったソレは、その体躯からは想像出来ない速さで、箒ごと体育教師を掴んだ。
そのまま、だらっと開けている口に運ぶ。
━━グシャ、グチャ…グチャ。
そんな音が、聞こえて来るようだった。
「は?」
それは、誰の声だっただろうか。
余りに現実離れしたその光景に、俺も含め窓際に集まった全員が、時間が止まった様に思考が停止し、動けなかった。
「きゃぁぁぁぁあ!!!!」
数秒後。
クラスメイトの女子の悲鳴を境に、思考が戻ってくる。
そして、状況を理解したクラスメイト達は、パニックに陥る。
ソレに食われた体育教師は、既に頭がなく。
握力で潰されたからだろうか。全身はボロボロ、腕は本来曲がってはいけない方へ曲がっていて、遠目から見ても間違いなく死んでいる。
「み、皆っ!落ち着いてっ!」
華蓮がクラスメイトを落ち着かせようと声を上げているが、それで落ち着けるのであれば、苦労は何も無いし、避難訓練等の災害対策ももっと少ないだろう。
皆が皆、一様に逃げ出そうと動いているため、廊下が軽く渋滞を起こしている。
互いを押しあって、まともに進めていない。
━━皆と合流しなければ。
即座にそう判断した俺は、両親が死んでしまった日に予め家族で何かあった時の集合場所と決めていた所に行く為、鞄を持ち外へ出ようと動き出す。
どうせ、学校全体がすぐにパニックになるはずだ。俺一人居なくなったくらいで、誰も気が付かないだろう。
『皆さん!落ち着いて下さい!冷静に!』
……騒動に気付いた学校側は校内放送で生徒達を宥めようとしているが、効果はほとんど無いようだ。
耳を澄ませば、「殺されたらどうするんだ!」だの「なら守ってよ!」だの、色々な怒声が聞こえる。
とんだ魔境だ。
死んだらどうしようも無いし、アレを見て、自分や大事な人を守れる自信があるなら、そもそも逃げてない。
学校の敷地外へ行く道が何処も人で塞がれているのを見て、内心で舌打ちをする。
残る選択肢は……塀を越えるか、アレの横を強行突破するか。
そう考えた時、頭に浮かぶのは先程の、アレが体育教師を掴んだ動き。……どう贔屓目に見ても、俺じゃアレの横を通って、逃げきる事は出来ない。
なら、選択肢は一つ……早く集合場所に行くには、塀を越えるしかない、か。
そう思い、校庭へ出る。
この中学の塀は高いが、網目がある為、足をかける所がある。不可能では無いだろう。
どうやら、塀が高い事に幸いして、登って逃げようと考えた人は、少ない様だ。……それでも、数人は居るが。
先に来ていた生徒から少し離れた位置を選び、登り出す。
俺が登りだして直ぐ━━後ろの、校舎の扉が吹っ飛んだ。
吹っ飛んできた扉は、幸い俺に当たりこそしなかった物の、塀に当たり、その衝撃で大きく揺らす。
「…は?」
衝撃の揺れで落ちないようにこらえながら咄嗟に後ろを振り向くと、そこには、腕を振り下ろした体勢のアレが居た。
どうやら、扉を殴って、文字通りぶっ飛ばしたようだ。
なんて腕力だよっ…!
アレに捕まる前に、早く逃げないと。捕まったら、間違いなく逃げられない。
即座にそう判断し俺は、衝撃に耐えるために留めていた手足を動かし、再び塀を登り始める。
揺れで一瞬落ちそうになったが順調に登って行き、何とか塀の頂点に付いた。そこで、正門が目に入る。
そこにも、アレが居た。
確かに、距離があるし、おかしいなとは思ったが。
━━━一体じゃ、ねぇのかよ…!!
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