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満員電車

作者: APP3
掲載日:2020/07/13

 今日は朝から台風の影響で15分の遅延、腕時計を確認する。


 時間は7時8分、会社は8時から、なんとか間に合うか?


 次の電車には絶対に乗らなければ。


 辺りには苛立ちながら傘をさす人達でごった返している。


 駅にアナウンスが響き渡る。


 そろそろ来そうだ、少し待っていると雨の音とともに、キィー!! という音が乗せられ電車が止まる。


 扉が空き乗客が降り終わった後、押し潰されるように中へと押し込まれる。


 ギュウギュウ詰めにされて動く隙間が無い。


 そんな中、俺の右手の甲に柔らかい感触を感じる。


 何だ? と手の方を見ると目の前には制服を着た女の子が涙目で俺を見つめていた。


 マズイ、不可抗力だ。不可抗力なんだ!


 断じて痴漢じゃない!!


 慌てて手を動かそうとするが後ろの人に押されていて手が動かせない。


 俺はすまないと彼女に向けて呟く。


 彼女は涙目で俺を見つめたまま、唇が震えている。


 すまない、すまない、頼む、痴漢じゃないんだ。


 とは言っても男なのでその胸の感触を大切に噛み締めていると、ある事に気が付く。


 彼女の顔は青ざめ、尋常ではないくらい震えているという事に。


 

 流石におかしい、何かあるのか? もしかして俺以外にも痴漢が? 


 電車が揺れ少し後ろにスペースが出来たので手を離す。


 そして彼女の下半身に目を向ける。


 特にそのようなことをされている様には見えない。


 彼女の後ろにいる男は背を向けている。


 ふと、足元に目線を落とした。


 そして、見てしまった。


 彼女の足首を何者かが掴んでいるということに。


 なんてマニアックな人がいるんだと思い、助けようと声をあげようとしたが一つ、疑問に思った事がある。


 ──何故、足首を掴めるんだ?


 空いている電車ならまだしもこの混雑だ、誰かが寝転んでいるのか? 

 

 それだったら誰かが何かしら声を上げる筈だろう?


 彼女は私を見つめて、


「た、す、け、て」


 声は聞こえないが口パクで俺に伝えている。


 次の駅で降ろさなければ!


「次は〜駅〜駅、御出口は左側です」


 アナウンスが流れる。


 今俺達がいるのは左側近く、人の勢いに乗れば降りれるはずだ。


 キィー! という音と共に駅に着き、人が流れるように降りていく。


 俺は彼女の二の腕を掴み引っ張ろうとしたが全く動く気配が無かった。


 そのまま出ていく人に押されていき電車から押し出される。


 なんとか戻ろうとしたが、我先に我先にと入ろうとする人達により阻まれ、結局乗る事は出来なかった。



 あれは一体何だったんだろうか? 彼女はどうなるのだろうか?


 様々な疑問が湧いてくるがしかし、一つだけ分かる事があった。


 仕事に間に合わないという事だ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] これはよいホラーですね。 お色気、怪異の流れが素晴らしい。 それが謎のまま読者に考えさせるところまではよかったです。 だからこそ、最後コメディの流れにしてしまったのは残念。
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