(02) 冒険者になったけどお金が必要なようです
しおりにのっている地図を頼りに進んでいくと、森を抜け道に出た。それからは道なりに進んでいき、夕方手前にはナバナの町についた。町といってもこの町は王都と大都市を結ぶ中継地点の一つとして栄えたため意外と大きい。
門の前には馬車を含め列ができていた。しばらくすると順番がまわってきた。窓から金属のプレートメイルを装備した門番がいた。
「証明書カードを提示してもらう。」
「証明書カードとは何でしょうか。ギルドカードのようなものだったらあいにく持っていません。」
「わかった。ではそっちの個室にはいるように。」
「分かりました。」
指さされたほうには筋肉ムキムキのこわもての中年男性がいた。
「証明書カードがなくてこちらに行くようにと言われてきました。」
「なぜ君はこの街に来た?そしてリュックをこっちに渡せ。」
リュックを渡しながら答えていった。
「自分の出身地から旅に出たばかりでここが一番近い大きな町だったからです。あとこの子は大丈夫ですか?」
両手に抱えた狼は疲れていたのかぐっすりとしている。
「なついているようだから構わない。リュックの中も大丈夫だ。ペットを含め通行許可証料は20ぺリルだ。」
「えっとこれでいいですか?」
リュックの中の銀貨を二枚手渡した。
「あぁ、ちょうどだな。これがペットとお前の通行許可書だ。早いうちにこの許可書を見せてギルドカードを作るといい。あとペットには首輪が必須だ。必ずつけておくようにすること。以上だ。」
「あの、いくつか質問いいですか?」
「構わない。」
「ありがとうございます。まずはここのお金の単位はぺリルで銅貨一枚で1ぺリル、銀貨一枚で10ぺリルで金貨で100ペリルであってますか?」
「金貨は1000ぺリルだ。大金貨は100金貨、まあまず見ないだろうが白金貨は1000大金貨だ。」
「分かりました。あとペットが大丈夫な宿はどこにありますか?」
「そうだな、冒険者ギルドからまっすぐ行ったとこにある大熊亭なら亭主が優しいから大丈夫だろう。」
「ではそこに行ってみたいと思います。ありがとうございました。」
「あぁ。」
門を通過し町の中に入っていく石レンガと木を組み合わせた家が立ち並び、大通りには俺から見たら変わった服を着ている人が行き来している。自分の服を見たら同じような服装になっていた。とりあえず大通りをまっすぐに行くと大きな建物があり看板には‘冒険者ギルド’と書かれている。その隣には薬師ギルド、さらに隣には商業者ギルドがつらなっている。だがせっかくの二度目の人生だ。しかも違う世界。いろんなところを見て回る‘冒険’をしてみたい。俺は迷いなく冒険者ギルドに入った。
道続きの石レンガの床に入口手前は吹き抜けに木の梁があり、その下には木のテーブルとイスが配置されている。その奥には受付があり右端には二階へと続く階段と左端に大きなボードがある。テーブルにはそれぞれの格好で装備している冒険者たちが料理を食べたり、話をしたり、こっちを見たりしている。ゆっくりと受付へと歩みを進めた。
受付には数人の冒険者が受付嬢が対応している。しかし冒険者が並んでいない受付嬢もいる。俺はその受付嬢に話しかけた。
「あの、すいません。」
「は、はい!冒険者ギルドへようこそ。クエスト受注ですか?それとも登録ですか?」
「冒険者の登録をお願いします。あとこの子の登録もお願いします。」
「かわいいシルバーウルフですね。では、許可証と登録料の50ぺリルをご用意してください。」
「分かりました。」
リュックから許可証と50ぺリルを用意し、カウンターに出した。受付嬢は許可証を一目通した。
「大丈夫ですね。ではこちらにカードにあなたのお名前とペットの名前を書いてください。」
免許証ぐらいのカードに羽ペンで自分の名前を書いた。この子の名前はどうしようか。この子はメスのようだ。足以外のけががないか見るときにぱっとみて、なかったからおそらくそうだ。狼だからなぁ。
…じゃあ、ウルフだから‘ルゥ’なんてどうだろうか。可愛らしいし、呼びやすいので親しみやすい。よし。
「今日からきみは、ルゥだよ。」
未だに寝ているルゥの頭をそっと撫でた。カードに‘ルゥ’と書き、受付嬢に渡した。すると、彫り物が豪華なハンコを最後にカードに押し、カードを手渡してきた。
「これで登録は終了です。あとこれをえっと、ルゥちゃんにつけてください。つけないと罰金を取られますので気を付けてください。リュウマさんをこれから担当するのはこの私、ミーナが担当します。クエスト受注や報告は私をお呼びください。」
ミーナさんから冒険者カードとルゥに付ける首輪をもらった。
「ありがとうございます。ミーナさん、これからよろしくお願いします。担当の受付にすることは何かあるんですか。」
「えっとですね・・私たちのお給金は担当する冒険者さんのクエストクリアに応じているんです。私は新人でまだまだなんですよ。えへへ…」
「そうですか。では、少しでも貢献できるように頑張りますね。」
「無理をして、けがをしちゃだめですからね。あ、そうでした。人頭税やペット税は一年に100ぺリルと10ぺリルで110ぺリル支払う必要があります。初回は30日以内にこちらでお支払いください。」
「じゃあ、今日でも構わないということですね。ではこれで。」
「ちょうどですね。でも無茶してはだめですよ。」
「そうですね。今日だけでもかなり使っちゃいましね。明日から頑張ります。」
「分かりました。ではこれから頑張ってください。」
「はい。」
ミーナさんに挨拶して冒険者ギルドを後にした。外に出るとここへ来た道に冒険者ギルドの正面にトの字に道がある。門番さんが言っていたのはおそらくこっちの道だろう。その道に歩みを進めた。
しばらくすると道に大きな木彫りのクマに看板がかかっていて‘この道の先‐大熊亭‐’と書かれていた。そこのわき道に入ると大きな建物があり、何匹もの木彫りのクマがあった。ここが大熊亭で間違いないだろう。扉を開けて中に入った。
「おう、いらっしゃい。一人かい?」
まるでクマのような大男が入口にいて声をかけてくれた。
「この子もいるんですがいいですか?」
「かまわんよ。まぁ、ベッドを汚したりしたら追加料金をもらうぐらいかな。何日泊まっていくんだい?」
「とりあえず10日で。」
「じゃあ、一日10ペリカだから100ペリカだ。」
「これで。」
「ちょうどだな。これがカギだ。夕食と朝食は時間が決まってる。昼食は10ペリカで用意するから言ってくれ。建物の裏に井戸があるから自由に使ってくれ。オレはベルデ、妻のフォーネと一緒にやっている。ゆっくりしていけよ。」
「わかりました。」
部屋はベッドとテーブルがあり、後でフォーネさんがルゥ用のベッドタオルを持って来てくれた。夕食もルゥ用に作ってくれてありがたかった。明日からクエストをどんどんやらないといけない。今日だけでもかなりお金を使ってしまった。これからの生活に必要なものも増えるだろう。別に世界での生活の期待と不安を胸に眠りについた。
読んでくれてありがとう。