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ストレートほど突き刺さるものはない

「ちょっとあっつ……」


「まだ5月だから、ハワイ的にはそんなに高くはないんですけどね」


「日本なら初夏ね」


「おらおら、引率は仕事しろやタケ」


「いやそれ姉上だから」


ハワイに到着し、今は船の上。どうやらハワイといっても本当にハワイではなく近くの無人島に行くようだ。もちろん無人島は武蔵野グループ所有とのことでござる。金持ちパネェ。


「しっかしまあ、遠足にこんな大きな豪華客船二隻とはおそれいるでござる」


「スケール違うよねー」


「クルーザーくらいならウチにもあるけど、豪華客船は持ってないよね~」


(一般家庭にクルーザーくらいもないと思うんですがそれは……。自分達が持っている『桁違い』を自覚しないとは恐ろしいことでござるな)


甲板に出て潮風を浴びる。眼前には日本ではお目にかかれないほど美しく、同じ海水とは思えないほど透き通ったエメラルドブルーが広がっているでござる。


「ござるさん、これ」


女子生徒達と客船の大きさに圧倒されているとカレンさんがこっそりPDAを差し出してきた。


「これは?」


「レイミさんから。ござるさんが女の子に囲まれてて呼び出しにくいから、これに今回のミッションの内容を入れておいたから寝る前にでも目を通しておいてだって」


「了解。あくまでも今回のミッションも秘密裏に、ということでござるな」


関係ない生徒の目の前で堂々と呼び出せばまたいらん噂を呼ぶと、あくまでも学園行事で来ているのだということでござるな。なるほど、レイミさんにも常識はあるようだ。


「ここの部屋も、私達二人だけにしておいてもらったから」


「…なぜにwhy?」


そういえばまだ部屋の鍵をもらっていない。家から黒塗りに乗ったとき、学園からバスに乗るとき、バスから空港、空港近くのホテルで一泊するとき、ホテルから客船に乗るときと荷物の移動すら全て学園スタッフのお仕事らしく吾が輩達は一切触っていないでござる。


「それは……言わせるの?」


上目遣い…、しかも今は私服…。肌色の多い女の子らしい露出…。なによりこのチラ見え。上目遣いをされるという位置から見える、このエメラルドグリーンよりも美しく流れる鎖骨、たわわに実った谷間、ぷっくりしながらもそれでいてしっとり柔く艶かしい唇、少し目を逸らせば肩に覗くブラジャーのストラップ…。素晴らしい。これこそがフェチズム。これこそがエロス。丸見えなぞは愚の骨頂。いやそうじゃないそうじゃない、なに流されそうになってるんでござる。頭をブンブン振って取り憑いた煩悩を振り払う。途中のホテルでも部屋が一緒でしかもカレンさんと二人きりだったからそわそわして落ち着かなかったのに……。って部屋割りをレイミさんが知らないはずがない、自分の部屋に呼ばないでカレンさんとくっつけるってなんなんでござるかあの人!


「す、好きだからに…決まってるからじゃないですか……」


「ええとその、あうあう……」


(((まーた二人だけの世界作っちゃってるよ)))


ド直球を食らい挙動不審に戸惑う吾が輩、耳まで真っ赤に染めるカレンさん。次の瞬間、黒い影が突如として現れ瞬く間に閃光を放った!


「ひゅーひゅーアツい!アツいねえお二人さん!ちわーっす、新聞部でーっす!」


バシャバシャバシャバシャバシャバシャ


「えっ、ちょっ」


「二人の馴れ初めは?初めてのデートコースは? 今どこまで進んでるの?A?B?C?それとももうSEッ」


「「「「言わせねぇよ!」」」


「おらっしゃあああ!ウチの弟になにしてくれとんじゃあああああ!!!」


「お助けぇぇぇぇぇぇぇ」


突然現れた新聞部という少女は姉上の背負い投げによってダッパーンという音ともに美しい海の底へと消えていった。アーメン。カメラは無事だろうか……。

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