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玄武

「…………」


「…………」


いない。どこにもいない。


「もう帰りたいでござる」


「ダメです」


村で見つかった報告になかった新しい大きな足跡。村の中をあちこち荒らし回った後、山に向かっていく。それを辿ってみるがまだ姿は見えない。


「デブには辛いでござる……」


山登り用のゴツい靴を買っておいて正解でした。運動靴じゃとても登ってられない斜面に這いつくばるハメになるとは。しかし長袖長ズボンは暑いでござる……。


「ダイエットした方がよろしいかと」


「秘書さんは流石と言うべきでござるな」


装備でいうとバ○オ4くらいの武器一式を担いだままひょいひょいと軽快に斜面を登っていく。引き抜きって話だけど元軍人で傭兵、PMCを経てどうやったら会長秘書になるのかはよく分からない。ただそれだけとんでもない人だということは確かでござる。


「はぁ、はぁ、はぁ」


「まだ出てきませんね」


「お腹空いたでござる、おやつ持ってきたから食べるでござる」


(このデブ……)


お昼ご飯はちゃんと食べたでござる。未だ接触がないまま半日が終わり残り三時間ほどで夕暮れという状況になった。大きな足跡の持ち主はそれなりに巨大な体格のはず。足跡の通った木々も折れて傾いている。にも関わらず、獰猛なワンワン一匹にも遭遇しない。


「どっちみち、そろそろ戻り始めないと暗くなる前に撤退出来ないでござる」


「何言ってるんですか?野営するんですよ」


「ホー! テー! ルー!」


(うぜえなこのデブ……)


なんで!なんで!ロイヤルスイートって言ったじゃないですか!野営なんて聞いてないでござる!ふかふかのベッドは?温かいお風呂は?一流シェフの高級ディナーは?!オンドゥルルラギッタンディスカー!!!


「ハア…、だいぶ奥まで来たからもう少しだと思うんですが仕方ないですね…。戻りましょう」


「いやっふーい!」


撤退ケテーイ!やったね!ため息付かれたけど!


「ゴガアアアア!」


「ウェ?」


吾が輩がガッツポーズしていると、巨大な体躯を揺らしながら筋骨隆々、地面を抉る爪、一瞬で獲物を噛みちぎりそうな牙を持った怪物が雄叫びを挙げながら迫ってきた。


「実は追われていたのは私達の方だったんですね、大声出すからバレたんですよ。あなたバカなんじゃないですか?」


「トェェェェイ!ヘシン!」


大急ぎでヘシン!するも山林の斜面では足場が悪い。しかも木々のせいでヤツがよく見えない。こりゃー分が悪いでござるな。


「ハァッ!」


まずは一撃。突進をやり過ごし背後から脇腹を狙って拳を入れる。大丈夫、モン○ンの旧森林マップと同じでござる。立ち回りもきっちり頭に入ってます!


「ガア! グアアア!」


「どわあ!」


しかし怪物はものともせず華麗に体を翻し、鋭利な爪を振り回した。すんでのところで避けて秘書さんに指示を仰ぐ。


「どうしましょう、これ」


「相当厚い筋肉なんですね。表面の毛皮の上からでも形が分かります」


「修行中の吾が輩には手に負えませんな」


「ロケットランチャーを当てて様子を見ましょう」


突然背中に担いでいたロケットランチャーを構え始める。


「ちょちょちょあぶ」


こんな近くでそんなん打ったら危ないでしょう!という抗議をする暇もなくロケットランチャーは発射され着弾した。凄まじい爆音と爆風を起こし視界が煙で遮られてしまった。


「何やってんでござる!それ様子見るものじゃないから!」


「顔面直撃です、我ながら綺麗に出来ました(フンス」


ダメだこの人、早くなんとかしないと。


「ガアアアア!!!」


「逃げましょう!!」


「手のひら返しはえーよ!」


近距離からロケットランチャーの直撃を食らってもなお健在の怪物。牙の一本でも折れているかと思ったが、どうやらそんな甘い相手じゃなさそうだったでござる。


「こんな時にヘヴンズ・ミスさんがいてくれたら一撃なんですが…」


ヘヴンズ・ミス。ロイヤルセブンで最年少にして最小のロリッ子にして褐色ボクッ子。そしてロイヤルセブン最大の武器、天獄ハンマーの持ち主。一部の特殊な性癖の大きなお友達からの支持が厚い。


「オギャアアアア!!!」


突如、山をも揺らす轟音とともに怪物が悲鳴を挙げながら『何か』に叩き潰された。頭の上から声が降る。


「ボクのこと、呼んだ?」

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