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顔パス


もふもふ


『どーせ向こうが勝手に言ってることだから気にしなさんな』


『いやー、相手が相手でござる』


もっふもっふ


『武蔵野のババアもこんな遠回しなことしないで自分で言えって話だのう』


『まあ詳しいことはおばあちゃんに直接聞くでござる』


もっふるもっふる


『どうでもいいけど、お前しっぽをいつまで触ってるつもりだい?』


もふんもふん


『いやー、やっぱり9本もしっぽがあるとなかなかの触り心地でござるなあ』


ふんもっふ


『一本100万!』


『たっか!』


(ということだったんだけどどうしよう。取り敢えず武蔵野のおばあちゃんに聞くしかないでござる)


そんなこんなで武蔵野グローバルコーポレーション本社ビルにアポなし訪問。


「すいません、会長のおばあちゃんにちょっとお話が」


「アポイントメントはお取りですか?」


「いいえ全然まったく」


「大変申し訳ありません、アポイントメントのない方はお通し出来ません」


「ですよねー。じゃあ今度の中国旅行について聞きたいことがあるとお伝えください。戦野武将と申します」


「大変申し訳ありません、すぐにお繋ぎいたします。少々お待ちください」


アルェー?吾が輩ひょっとして特別扱い?しかし神剣が絡んでておばあちゃんの根回しじゃ直接話を聞いた方がいいでござる。お師匠さまは人選ミスですね。というか家族にどう説明しよう……。


「お待たせいたしました」


「いえいえ、五分と待ってないでござる」


一階ロビーの受け付けて突っ立っていると秘書さんがやってきた。何を隠そう、この秘書さんも女性。黒いパンツスーツでビシッと決まっている、見た目通りのキャリアウーマン。


「お師匠さまにあらかたお話は聞きましたが、いかんせんお師匠さまなもんで細かいことが分かりませんで」


「会長は忙しくお会いできる状況にありません。応接室にご案内します」


ちなみにこの秘書さん、吾が輩の周りには珍しい黒髪ロングストレートの真っ黒なお方。黒髪ならトモミンがいるけどあの人はツインテでござる。


「ふと思うんですが、会長のおばあちゃんは何人秘書さんがおるので?」


「部署ごとにいます。私は総合的な窓口の役割をしています」


「うへえ」


本社ビル、六本木の一等地に建つ巨大な城。部署ごとにって簡単に言うけど一体どれだけの数が存在しているのか、その規模は図り知れないでござる。今どきは子会社作ったりしてさらに細分化してるとかしてないとか。


「では今回の中国行きについてお話いたします」


エレベーターで昇ること十分、歩くことさらに五分。ようやく応接室にたどり着く。本当にビルかいな……。


「国家首席のご子息は四神剣が中国の外にあることをよろしく思われていないそうです。ただロイヤルセブンから権力で取り返すことは不可能です。なので決闘しようと」


「唯一、表に出ている四神剣は青龍のみ。だから吾が輩が呼ばれると。ついでに新人だから弱いだろと」


「ご理解が早くて助かります。他の三本は表向き、姿形すら不明ということになっていますから」


下手すれば吾が輩の正体も個人情報も世間にバラされかねない相手でござる。慎重に事を進めたいのだ。


「と、いうのは建前です。正確には騒いでくれたおかげでいい身代わりといいますか口実と言いますか」


「ひょ?」


「本来いくら中国国家首席のご子息といえどもこんなワガママは通りません。本当の目的はこちらです」


脇から大きな封筒を取り出し、大きな写真をテーブルに広げた。写真はどうやら拡大写真のようでなにやら獣と思われる動物の姿が写っている。


「これは?」


「未知の生命体です」


未知の生命体ですって言いますけどね、こりゃ狼か野犬の類いでござる。わざわざ吾が輩に見せるものではないでござるなあ。


「その……、意味が分かりませんだみつお」


「なはなは。この未知の生命体。一見どこにでもいそうな風をしていますが、この世界におけるどの動物とも骨格が一致しないそうです」


やべえ乗っかってきた返された。


「『そうです』ってのは?」


「様々な生物学者に秘密裏に特定を依頼したのです」


そんなバナナ。山に住み着いた野良犬に見えるこの動物が?


「この未知の生命体はこの数ヶ月で付近の村を襲い、多数の死者を出しています」


「はあ……」


そんなん人民解放軍の暇してる部隊でも動かせばいい話でござる。暇してるとか言ったら怒られそうどけど、向こうが討伐して死体を研究所にでも持っていって調べてもらうなりなんなりでいいような希ガス。


「次に、これが死体の写真です」


「冗談。これはただの灰じゃないでござる?どこが死体だって言うんですか」


「この未知の生命体が襲いかかってきたので殺害したところ、こうなったそうです。正直、私もバカにされているんじゃないかと感じました」


んなアホな。どこの世界にそんな生命体がいるでござるか。でも、見覚えはある。はっきりと覚えている。


「捕獲してしばらく経つと同じように死んでしまうのでどんな生物なのか調べようもない、と中国当局はお手上げだそうです」


「まさか吾が輩に中国まで行って調べてこいと?」


「そうです」


そうですって軽く言いますけどね…。灰の写真を手にとってまじまじと見る。


「もちろん単身でとは言いません。私も同行します。飛行機ではファーストクラス、ホテルはロイヤルスイートです」


「露骨ですね…」


「国家首席のとこのボンク…ご子息がちょうどよく言い訳になってくれましたから、この機会に解決出来れば恩を売れます!」


(今この人ボンクラって言おうとしたでござる……)

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