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見えないものほど恐いものはない

「これをやったのは青龍だな」


「いつのまに香港スターが鍛冶師に…」


「それは成龍」


「武術指導師は?」


「サモ・ハン・キンポー」


見てる。この人は見てるでござる。吾が輩の心の師匠、サモ・ハン・キンポーを知っているとは。吾が輩が敢えてダイエットしない理由の一つでもあるでござる。


「って、そうじゃなくて」


「お前が振ったんだろ。言っとくが私は燃えよデブゴンから観てるからな」


「素晴らしい!ってそうじゃなくて、青龍ってどういうことでござるか」


「言った通りだよ。この剣は鉄でもなんでもない、神聖な力の塊の未知の物質だ。神々しい四聖獣から授かったまごうことなき神剣さね」


「神剣の青龍のことを言ってるなら中国の博物館にあるじゃないですか」


「あんなんただのバッタもんだって。本当は行方不明で見つからないのがカッコ悪いからって秘密裏に中国政府が造らせたんだよ」


えぇ……、なんという政治的理由。夢も希望もあったもんじゃないでござるな。正直こういうのは見つからない方がロマンがあっていいと思うんですが。


「中国政府じゃ四神剣の青龍・白虎・朱雀・玄武は今でも行方不明、ということになっているはずだ。たぶん弾かれたのは結界じゃないかもしれない。化け狐ごときが持つなっていうか?」


「お師匠さまより弱い吾が輩が持てる謎」


「お前の食った石が実は神様寄りのモノなんじゃないか?」


「それならあんな暗くてじめじめした洞窟に祭壇なんかおかしいでござる。もっと歴史ある神社とかの御神体とかそんなんじゃないと」


「まあ、確かに」


とにかく、この剣の正体が判明したでござる。四神剣・青龍。変幻自在、一刀両断の美しくも流れる切っ先。静の剣。


「しっかしお師匠さまよくこの剣のこと知ってるでござる」


「始皇帝と遊んでた時に見せてくれたんだよ。あの頃は四本揃っててな、それはそれは凄まじい光景だったねぇ。鎮座するその部屋が聖域になっちゃうくらいにな」


「…これ返してきてもよろしいですかな?」


「お前なんともなくコイツ持てたんだろ? 剣に認められてるってことだしお前が生きてる限り、お前以外が持つことは出来ないぞ? つまり…」


「つまり?」


「バレたら暗殺される?」


「ヒエッ」


あかーん!冬将軍はとんでもないもの寄越しやがったでござる!吾が輩に何か恨みでもあるでござるか!もはや是が非でもこの存在を隠さねば…!


「この剣のこと誰にも言うなよ?」


「吾が輩を売ったお師匠さまに言われたくないでござる」


「いやー今日もいい天気ダナー」


ん?ちょい待てよ?


「…吾が輩、この剣もう出しちゃったじゃん」


「ああー、テレビにバッチリ映ってたな。カッコよかったぞ?」


あァああァああああァあああああああアアアアアアアアアア!


「ど、どうしよう…」


「知らんよ」


なんということでしょう。説明しよう!中国の国宝を堂々とカメラの前で使ってしまったのでござる!全国に放送されてます!ちなみに中国の博物館には本物とされているレプリカがあるよ!


「だが他人を経由して渡ってきたにしても本物なら中国政府が知らんはずないだろう。仮にも国宝が他人の物になるだんぞ?」


「もう何がなんだか…」


会長のおばあちゃんから送られてきた書類にはそんなこと何にも書いてなかったのにどないせえっちゅーねん。


「だいたいお前、一般人が真剣なんか持ち歩けないはずだろ。なんでここに来るまでに捕まらないんだよ」


「諸々の許可証ならあるでござる。ほら、持ち出すときは常に携帯していないといけない帯刀許可証」


「ますますもってワケが分からない。国の発行にお前の名前書いて通ってるなら日本政府はソレが中国の国宝だって知ってるはずだし、今やってる歌姫襲撃の映像見たら八人目がお前だって知ってることになるぞ?」


ピャー


「お前、その剣を見たヤツ他にいるのか?」


「か、家族がバッチリ。つーか普通にリビングに飾りました…」


「アレだな、レプリカって言っておけ。剣に

何か能力があっても使わんことだな。自分から八人目って正体バラしてるわこれ」


もうどうにでもなーれ(AA略


色々と吾が輩の理解の範疇にないということだけは分かったでござる。しかしなんてこったい。日本政府と中国政府には正体がバレたでござる。しかしいまさら後戻りも出来ない…。


「取り敢えずお前は味噌汁作って帰れ。私は私で雪女から油揚げもらっててまだ余ってる」


「へえ、さいですか」


剣の正体を聞くだけだと思ってたら結構しんどい話になってしまいました…。母上と妹君にはちゃんと言い訳しないとむちゃくちゃな騒ぎになって家族会議になってしまうでござる。ええい! どうしてこうなった!


「ただいまー、でござる」


「お兄ちゃんおかえりー」


「あれ? 妹君学校は?」


家に帰るとなんと妹君がパジャマのままでこたつに入ってスマホ弄ってるでござる。そういえば今朝は家を出ていく気配がなかったでござる。


「なに言ってんのお兄ちゃん。この間の三連休からもう春休みだよ?」


「ああ、なるほど」


「あれ、剣なんか持ち出してなんかあったの? そういえば仮面ヒーローの男の人が使ってたのとお兄ちゃんの剣同じのだよね…」


ビクッ


「え? ああ、いや、コレハデスネレプリk(ry…」


「お兄ちゃんはポカーンてしたまま固まってたけど」


「ウェ?」


「あれ? もしかして映ってたの気付いてない? ほら、ニコ動にもニュースの動画上がってるよ」


吾が輩がポカーンてしたまま固まってたけどってどういうこと? 妹君がニコニコ動画で例の衝撃的瞬間の動画を見せてくれた。なんということでしょう(二回目)。吾が輩、映ってる!え?なんで?あの時飛び出した吾が輩が吾が輩の特別席に映ってるでござる。


「お兄ちゃんの物真似しまーす! ( ゜д゜)ポカーン!」


いや( ゜д゜)ポカーンはこっちのセリフでござる。混乱の波を越えたと思ったらまた混乱してきたという謎。冷たい水分が背中を這う。喉が乾いて飲み込む唾液もない。吾が輩、いつの間に多重影分身の術を会得していたでござるか。しかも片方は変身前、もう片方は変身して戦っている…。剣の振り方はジェ○イの騎士を参考にしますた(キリッ


(キリッ、とかやってる場合じゃないでござる。何がどうなってるでござるか)


そういえばリエッサさんが、スタッフは武蔵野グループの息が掛かった人間しかいないとか言ってたような言ってなかったような。まさかあらかじめそっくりさんを連れてきていた?いやそれだと瞬間的に入れ替わることは至難の業。しかも不意打ち。ならば合成?ニュース映像でこれってことはつまり、吾が輩は最初からそこにいたってことになるでござる。


(この剣のことにしたって、このニュース映像にしたって随分と大きな権力が動いているでござる…。なんと恐ろしい…)

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