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202/202

そういえばバニーガール

実は書く時はベロンベロンに酔っ払って勢いで書いているので勢い余ってボツになった編が二つあります。龍の里編と月編です。龍の里編はござるくんの正体と出生についてのお話で、月編はニート飲んだくれ母上についてのお話です。構想自体ふわふわだったってこともあるんですが、今の更新スピードでまともにやったら未だに完結してねーなってなって別に金もらってやってるわけでもねーしまーいいかって思ってたんですけど、需要ある?

「おにーちゃーん」


「へぇー?↑」


「テレビ見てー」


「なんじゃこりゃ…」


吾輩の家は和室がリビング兼和室。春夏秋は掘り炬燵からこたつ布団を取って蓋して普通のテーブルこたつになり、冬はエアコンで暖房掘り炬燵も点けてこたつ布団も被せてフル装備でござる。


「まあいつかはやるってレイミさん言ってたけども本当にやるとは」


「これはひどい」


初夏の緑が彩る5月。いや5月は初夏じゃないけど何故かゴールデンウィークあたりで30℃を記録する初夏。畳の匂いを嗅ぎながらリビングでゴロゴロしてた吾輩に言う妹君はテレビに釘付け。映っているのは武蔵野コンツェルン本社の受付にいつかの絶壁クレイジーサイコレズ2人。


「この人達ってオリジナルの世界から来たんだっけ?何しに?」


「バニーガール?」


んなワケあるかーい! 核に代わる人型汎用決戦ユニットのその量産型試作機強奪事件の主犯2人。装備を壊し本社ビル最上階の会議室も壊しレイミさんの逆鱗に触れ、罰ゲームとしてバニーガールさせる!というレイミさんの強い意志によって今全国放送のテレビで晒し者にされてるでござる。


「Twitterでトレンドになってるでござる。絶壁で草だって」


「誰が絶壁かぁ!」


ごき!


「ケバブ!」


「こんなに笑顔が引きつったバニーガール初めて見たよ」


そんなこんなで生で見てみようと武蔵野本社に向かうもそこは既に大行列というか大量の人混みとマスコミでまともに近寄ることも出来ない状態になってたでござる。


「握手は一人500円でーす」


「そこ! 写真は一枚1000円取るわよ!」


「こりゃひどい」


「すごーい」


なぜかレイミさんとリーシャさんがアコギに小遣い稼ぎしてたでござる。どーせレイミさんのことだから兵器開発に突っ込んだお小遣いが兵器と一緒にパーになったからセコい稼ぎをしてるとかどーせそんなん。


「こりゃダメそうだから帰るでござる。こんな中で二人に見つかって声でも掛けられたら…」


とかなんとか言ってるといわゆる死亡フラグというやつ。


「あ」


「え? なんですかお姉様…、あ!」


「げぇっ」


目が合ってしまったでござる。ビルの外までごった返してしっちゃかめっちゃかで混雑してて顔なんか全然見えないのにこういうときだけ見つかっちゃうやつ! 能力者のカンと視力が半端ないのは甘く見ちゃいけないパティーン。あっとか言うからそこら中の人らが皆してこっち見るでござる!


「ここで会ったが百年目ぇ!」


「いやいやいやいやいやいやいやいやいや?! アレ吾輩なんも悪くないからねぇ?! 騒動起こしたのはお二人!」


「人の胸に手ェ突っ込んだでしょうがぁ!」


「この下劣な豚がぁ!」


やめてぇぇぇぇ! 野次馬の皆様があっち向いてホイみたいにそっちとこっちを見てるでござる!


「おりゃあぁぁぁぁぁ!!!」


「ちょおぉぉぉ! ヒールで飛び蹴りは危ない!」


というか人前で何メートルも飛び上がらないでぇ! 受付からビルの外まで何メートルあるかと小一時間!


「わ、わ、わ」


「はァァァァァァ!!!」


「あっぶねマジで!」


「お姉様!」


「はいはい瑠姫ちゃんはこっちに逃げてようねー」


「はーい」


「リーシャさんナイスー!」


んもー! 妹君も危ないでござる!


「ちょっとアンタら何やってんのよ! まだ私の1日の小遣いも稼いでないのよ!」


「ならアンタも同じ格好しなさいよ!」


「ふざけんじゃないわよ! そもそもアンタ達が吹っ飛ばした会議室直すのにいくら掛かったと思ってんのよ!」


「会議室一つに何億も使う方がおかしいのよ!」


たし蟹。なんやかんやで打ち上げ。


「いや打ち上げいるでござる?」


「じゃ帰れトンテキ」


「うーん、調理済み!」


もはや吾輩加工品どころか調理されて提供されてるでござる。あのあとなんやかんやしてるうちに七条さん※お巡りさんがやってきて怒られたので解散という流れに。


「それにしてもよく馴染んでるでござる」


「え?」


「こっちの世界に来てまだ浅いんでそ?」


「ああ」


「ゲフー」


げえっぷ!ってマジでゲップしてるの下品でござる。性格と胸のサイズさえ目をつむったら非の打ち所がないほど美人なのに。いや胸のサイズ込みにしたってそれはスレンダー美人で通るし、胸の小さい人にしか無いスレンダーな美しさは巨乳の人には持ちえないもの。そうです、この人達ビール飲んでます、バニーガール衣装のままで。素晴らしいのはおそらくこの衣装、ちゃんと注文して作ってもらったものでござる。既製品だと細部のサイズは合わないしそのため微妙なシワが起きるし何よりこの手の衣装に目が慣れていると微妙に合わないサイズ感が嫌で画像保存もしないなんてよくあること。特に微妙になって残念なのはハイレグの部分でこれが妙に角度がキツかったりサイズが緩いせいで露出が甘かったり網タイツのフチがたわんでいたりとする上、コルセットが入っていないことはまだ経費的にしょうがないにしても胸のから背中を繋げて支えるストラップがエラい露骨だったり接着部分の処理が衣装の表面に浮いてしまったりしていてそれが光の反射で見えてしまうことなど日常茶飯事。しかし二人が着ている衣装はストラップは無くサイズもピッタリな上エナメルでTバックとオーダー物でも珍しい。



「私達アンチコピーの異能力者は身分と生活が保証されているのです。そして私達のオリジナル世界ではアンチコピーが人口の8割を占めているので、こちらと変わりないそれなりの生活をしてきているのですよ」


結局このレズ姉妹も武蔵野預かりとなったので、空いてる部屋のあるサロンで匿うことに。で、そのサロンでビールを開けていると。くっさ。


「アンチコピーか…。どうしてそこまでオリジナルの人達は吾輩達…というかコピー世界の存在が嫌いなのです?」


「どうして…どして?」


「いや聞き返すんかーい」


「強いて言うならば、思春期に知らないところで両親が離婚していつの間にか再婚して腹違いの兄弟まで生まれていて今日から一緒に暮らすから!と言われたら、貴方は納得出来て?」


「無理ゲーでござる。ただでさえデリケートな思春期に両親の離婚再婚なんて話だけでキツい話はそこそこ聞く時代なのに」


「そうでしょう? やられたこっちはたまったものではないのよ」


むむむむむむ。無茶苦茶やらかしたレズ姉妹なのに道理の通る話をしてくるとは。おまけにオリジナルの方のスーさんの話を聞く限り、こっちの世界よりも格差社会は酷い。あんな小さな女の子が泥水すすって生きてきたなんて少なくともこっちでは無い。


「しかしでつね、世界のコピーについては我々がもちろん出来るはずもなく、それをやった誰かがいるということでござる。そっちに怒りが向く方が自然だと思うのですが?」


「…それは有り得ませんわ」


「なぜにwhy?」


「ソイツがこちらで唯一神として直接世界の管理をしているからですわ」


「oh…」


見えるラスボス、面倒な現実。


「ゲフー。問題はこちらのコピー世界の方が全てに於いて底上げされた、私達オリジナルのアップデート版だということですわ」


「唯一神がその不都合さ故に黙っていたことが、ある日ドッペルゲンガー現象によって暴かれてしまった。貴方も聞いたことあるでしょう?コピーをオリジナルが乗っ取ってしまう、アレよ」


「少しなら」


「問題点はおそらく唯一神は世界をコピーするあたり、魂を株分けしてこちらの世界を作ったこと。そしてなんらかの拍子でリンクしてしまった魂同士が元に戻った、親株に吸収される形で。これが発覚した時はただでさえ酷かった私達の世界はもっと酷くなったわ」


勢力は二極化し、なおかつその割合は極端と言えるほどになったと。


「唯一神とも言えど無断で魂の株分けを行ったことは事実。しかし唯一神は私達の世界では敬い慕う存在。崇拝と同時に依存しているとも言えるのです。だからこちらの民衆は唯一神に何か動かならざる理由があったから仕方がないと」


「が、しかし。それはそれとして勝手に魂を株分けされたのは気に障るので取り戻し、豊かなコピー世界から吸い上げることによって我々は救われると考え始めたのですわ。少なくとも、今の地獄からは抜け出せる、と」


吾輩はきっと嫌なやつでござる。こうまでして抜け出したい日常とはどれほどのものなのか、それを見たくないと思ってしまった。そういう人こそ救いたいと思っていたのに今は見たくないとすら感じるなど。目も当てられない有様の世界はどれほど酷いのか、想像を絶する世界の中で生きてきた人達はどうなっているのか。


「ま、一番意外なのは貴方ですの」


「へえっ?」


変な声出た。吾輩?


「貴方のツノのこと、存じ上げておりますわ」


「oh…」


よくそこまでご存知で。


「こちらの世界生まれでもなく、私達の世界生まれでもなく、だのに私達と同等の目に遭い、その上でまだ人を救おうとする貴方」


「異常な強さも納得ですのよ」


「どうしてこんな目に遭わなきゃならないんだ、と考えたことくらいありまして?」


「そりゃあもちろん、そういうことは何度も考えたでござる。時間が経てば経つほど悪い事しか起きなくて、これから先も悪いこと起きる未来が確定してる状態だったときはそれこそこんな世界滅ぼしてやろうかと思ってた」


暗い暗い闇の底に堕ちる心がどんなことを考えるかは、現代に生きる人ならその一片には触れたことがあるだろう。吾輩の場合は、全てを滅ぼして自分のからに閉じこもり、生きているのか死んでいるのか分からない暗闇の中に死ぬまで引きこもるのが理想だったでござる。一切の他人を許さない、唯一存在している自分の生もいらない。夢を見ているうちにいつの間にか死んでいたい。吾輩にとっての何一つ不自由しない生活というのは、気に食わないもの全てを排除した自分のためだけの世界だった。自分以外は何も認めない。血肉を分けた者であっても自分で無ければ他人であり、他人は全て滅ぼすべき敵である。


「正直人を助けるより殺す方が手っ取り早いでござる、世界を救うには」


「ゲフー。でも貴方はそうしなかった、そうするだけのチカラを持ちながら」


「もし貴方がこちら側に来てくれて、この世界を滅ぼして搾り取っていたら、私達はいわゆる普通の生活をしていたのでしょう」


「…吾輩ちょろいからね、目の前の命と世界を天秤に掛けてしまったでござる。たまたま助けた女の子に、手を握られてありがとうって言われたら、ねえ?」


しょうがないでござる。ほら、童貞って勘違いしやすいから。


「まったく反吐が出ますわ………………」


「ええ、お姉様…………………ウッ」


「変なタメになぜに見つめ合ってでござる…アッー!」


アッー!困ります!!困ります!!レズ姉妹!!困ります!!あーっ!!困ります!!レズ姉妹!!あーっ!!なにやってんだこのレズ!!レズ姉妹!!レズ姉妹様困り!!あーっレズ姉妹様!!困りますあーっ!!困ーっ!!レズ困ーっ!!困ります!!レズり様!!あーっ!!レズ姉妹様!!困ります!!困ります!!レズます!!あーっ!!レズ姉妹様!!


「たっだいまー、ようやくお婆ちゃんから解放されたワ゛ーーーー!!!!」


モザイクの海、響き渡るレイミさんの悲鳴。お酒の飲み過ぎには気を付けましょう。

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