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余話

31話くらいの頃のお話として書きました。モービウス見てきてなりたてのヒーローってやっぱこういう体験とかカタストロフィとかあった方が良いよなー面白いよなーとか思ってやってみようとチャレンジしましたがいつものバカ話でした草

奴の成長は著しい。石との同化からニ、三週間程度経つのだが奴はおそらく私の知る限りでは私ら7人のそれとは異質と言える。


「アイツ何か武道武術の心得があるのか?もしくはなんかしらの経験が?」


「下調べではそういうことは無かったわ。その…あくまでも表向きということでは、ということだけれど」


冬将軍との一戦で驚くべきことはいくつかあった。100%素人の動きと多少の経験がある動きは微妙に違いを見せる。が奴の動きは相手を見てタイミングを知っている、つまり素人ながらもなんの経験も無いという動きでは無かった。


「奴は同化してからと同化する前とを知らないからなんとも言えんが、私から言わせてもらうと奴は本当にニートだったのかって感じだな」


「うーん…」


「最終的には斬られて終わったワケだが、その間に割って入るタイミングが妙に上手かった。早くても遅くてもいけない瞬間にきっちり入っている。本来実戦経験でようやく覚える立ち回りを奴は最初から持っている」


少しずつチカラに慣れている様子ではある。ただどう見ても精神的な認識に肉体で確認しているという印象だった。自分は忘れているが体は覚えているという状態。体が覚えていることに頭を追いつかせるとでもいうのか、確認作業をしている風な動きをしていた。さらに奴は早くも順応し始めている。奴を別の日に呼び出した。


「体がなんかもう凄いんでござる。何が凄いってそりゃもう色々と凄い」


「出川哲郎みたいな言い方すんなよ。たとえば?」


「車や新幹線より速く走れたり、飛行機よりも速く空を飛べたり! あとめっちゃ目が良くなったし耳も凄い良くなって遠くの会話でもすぐそばで話してるみたいでござる!」


早い、早すぎる。私がそこに辿り着くまで何年掛かったと思ってやがる。それをコイツは数週間だと?


「新幹線と並走して手を振ったら驚かれたでござる」


「やめろよマジでそういうこと」


「おまけに反対側から来た新幹線にぶっ飛ばされたでござる」


「そういうのニュースになって怒られんの私達なんだからね」


「…他に何かあるか? 肉体的な変化もそうだが、思想やら人格面での変化は?」


「思想とか人格? うーん…そういうのは特に無いと思う…でござる。家族になにか言われたりとかも無いし自分でもそういうのは」


「無いか」


「ただのバカなんじゃないの?」


「レイミさんヒドス」


どうにもおかしい。たいていなんかしら異能を取得したばかりの能力者ってのは己の万能感に浸って今なら何でも出来る、それこそこの能力を使って世界を手中に収められるとすら考える。コイツにはそれが無いのか。


「まー、今の貴方はただの変身能力者で特にこれといったものないしね。素手で戦うしかなくて能力的な尖った特徴っていう特徴無いのよね」


「ネットで吾輩なんて呼ばれてるか知ってるでござる? 地味だからジミー君です」


五感の強化か。珍しいことじゃないがやはりおかしい。感覚の強化にしても変身能力者ともなると超絶的な能力になる。頭の中に直接他人の思考をブチ込んでいるかのようにおびただしい情報が流れ込んでくる上に、能力に目覚めたら直後はそれらをコントロール出来ずに気が狂う思いをする。だがコイツにはそれも無さそうだ。


「趣味や嗜好に変化は?」


「うーん…、最近は完全遮光断熱カーテンに変えたぐらいでござる」


「そのこころは?」


「太陽光が眩しすぎて浴びると灰になりそうで。特にネトゲで徹夜明けなんてとき」


「ドラキュラかお前は」


肉体的な変化無し、精神的な変化も無し、周囲から見ても変化無しか…。


「ああ、でも一個だけ気になる事が」


「あるんじゃないのやっぱり」


「吾輩この能力を持った直後に気絶してぶっ倒れてるでござる。しかも県外で。なのに気が付いたら家のベッドで寝てたっていう」


「記憶無くなるまで飲みに行った親父が翌日記憶の混濁に惑わされてるみたいね」


「言い方!」


「なんかこう、もっと正義感とか野心とかないの? どんなヒーローになるか分かんないじゃないの」


「ヒーローねえ…。そもそもヒーローって何でござる? 正義だから? 悪だから? 正義が悪を倒すから? 悪が悪を倒すから?」


「その時代を生きてる人間にとって都合が良いからよ」


「だから言い方!」


なんだかバカバカしくなってきた…。主にレイミのせいで。目覚めたばかりの能力者は思い上がりが激しいと決まってる、さらに自分より強い奴に噛み付いてその思い上がりと高くなった鼻をへし折られるまで定番だ。だというのにコイツは本当に何にもなさそうだ。新しい自分に目覚めて酔いしれたりショックを受けることもなく、かといって調子に乗ってる風でもない。


「なんかやりたいこととかあるか? 能力使ってだ」


「変身能力者系YouTuberやって働かないでお金が欲しいでござる。ゲーム実況とか布団から出なくて済む感じで」


「ダメ人間か!」


「ダメ人間でござる!!」


「少しでも心配した私がバカだった」


真面目に悩んだ私がバカだった。もしコイツが危険な存在になるなら消すことも辞さないつもりでいたが取り越し苦労だった。

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