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お嬢様鍛える 3

「どうしたもんかね」


「私は普通の人間ですわ!」


「人を人外みたいに言わないでください」


お兄ちゃんの同級生の政略結婚を阻止すべく、同級生本人を鍛えて結婚相手の騎士を倒すという謎の現象が起きています。


「お兄ちゃんが愉快なオブジェであらせられる以上、誰かが鍛えなきゃいけないのは確かなんですけど…、やっぱり無理ゲーじゃないですか?」


私は普通の疑問に口を止められなかった。そりゃそうだ。このご時世に政略結婚、しかもその拒否するための手段が決闘。一体この人達はいつの時代に生きているのか。


「たった一週間でオリンピックメダリスト以上っていうのは、そうねえ」


「というか結婚相手とじゃなくてなんでその付き人みたいな人となのかな」


「そういえばそうじゃな!」


「聞いておらんのかオイ」


まさかのノッブさんがツッコミ役。第六天魔王は伊達じゃないぜ。常識的に考えてこういうときはアンソニーさんと結婚相手の人が決闘するもんだと思うんだけど、なんで『その騎士』さんなのかな。


「…ここだけの話、手加減、ですわ」


ダリアさんの顔が不穏になった。地雷踏んだ。やぶ蛇。


「かの婚約者は例の無人島の件に関わっていたということで表向き体調不良ということで隠居となりましたわ。その代わりの方がこちらですの」


「おやおやまあまあ」


「うっはー、イケメン」


「今の時代はこんなんばっか持て囃されとるのう」


「これも時代じゃな」


ダリアさんが胸の谷間から出した一枚の写真はどうやらお見合い写真として渡されたと思われるそれ。胸の谷間から出すとか喧嘩売ってんのか。こちとらつるペタやぞ。どうやらトレーニングしている様子なんだけど、横顔で写る端正な顔立ちに柔らかい表情、なにかおかしい肩幅、首から下の違和感。


「待て待て待て待て」


「弱っちそうじゃのう」


「最近の男はどうももやしだの」


「そこの二人も待て待て待て待て待て。どう見ても首から下おかしいよね?!」


確かに一見ここ10年くらいで持て囃される細くて折れそうなマッシュルームヘアーのイケメンに見えるけど、それ顔だけじゃん。首から下ゴリラなんですけど。もやしっ子と蔑まれた人が鍛えたら顔以外進化しましたみたいなこんな極端なギャップはアリなの?


「そうですの、こんな男ですの。こんな澄ました顔をしておりますが首から下は戸愚呂100%並みの化け物ですの。こんな恐ろしい男となんか結婚したくありませんわ!」


熱く主張しているところ申し訳なく思うんですけど、なんであなた戸愚呂100%を知っているのかな。わたしだって再放送で知ったのに。


「なるほどねー、こんな化け物みたいな人ならそりゃお付きの人出してくるわよねー」


「これ手加減っていうより気遣いじゃろ」


「気遣いするところが違いますわ!」


「それな」


そんな気遣いするくらいならそもそも政略結婚なんかさせるなという話。しかも断る手段が決闘。普通なら人権侵害を訴えるところなんだろうけど、ここは貴族の権力でいくらでも歪んでそう。でなけりゃウチまで話が来ない。


「ということはダリアちゃんずっと家出しっぱなしなのね」


「はい。しかしこちらでの家に先日政略結婚は続ける旨の手紙とこの写真が送られて来まして、たとえ私不在でも籍は動かすとのことでして…」


「どうしたもんですかねぇ…」


「やっほー、ござるくん死んでる?」


「こんにちは朋美さん。その挨拶おかしいですよ、ね……え?」


唐突に庭に入ってきたのは我らがお兄ちゃんの憧れの人ともみん。と、隣にいるのはとも…みん…?


「え…誰…」


なずなさん’sじゃないのにともみんと同じ感じがする……。戸惑ってお母さんにヘルプの視線を送ると日本酒の酒瓶が変わっている。早く死ねよアル中。妖子さんとノッブさんはへー、こっちに来たんだふーんみたいな顔してる。説明プリーズ!


「あっごめんね、瑠姫ちゃんは困っちゃうよね」


なぜかともみんに気を遣わせている。


「私とそっくりのこの人は私のオリジナルの方なの。なずなお姉ちゃんが二人いるのと同じように、私も私がコピー側でこっちの人がオリジナルなの」


「ややこしい」


「「ですよねー」」


言われれば分からなくもないけど、いちいちコピーとオリジナルとかめんどくさいったらありゃしない。


「取り敢えず、初めまして。オリジナルの方の天ノ宮朋美です。コピーより強いでーす」


「そういうのいいから」


「コピーより積極的でーす」


「だからそういうのいいからっ! 胸チラしないの!」


「コピーより大きいでーす」


ごちん☆


「真面目にやれ、ぶっ殺すぞ」


「はい」


残念ながらここにその胸チラに反応する人はいません、愉快なオブジェならいますが。


「無人島で脱出してからそのままだったから挨拶に来たんだけど、ござるくんはまだあんなんなのね」


「どういうこと?」


「お兄ちゃんに致死傷食らったとき助けてあげたんです。でもそのときは正体も明かさないでそのままだったから改めて挨拶に来たんです」


「なるほどリエッセがキレるワケじや」


まーたお兄ちゃん女の人に手を出してたんだ。そりゃリエッセさんも怒るよ。一体何股するつもりなんだろう。もう十人くらいいるのかな。


「まー、私も色々思うところあってこっちに来たんですけど、彼がヤバそうな人ならそのまま助けるフリして殺しちゃおうかと思ってたんですけど、逆にこっちが救われたっていうか、話聞いてもらった感じになっちゃったのでお礼くらいちゃんと言った方がいいかなって」


え? なんだって?


「なにか不穏なことを聞いたような気がしますわ…」


「こういうときは知らんぷりしといた方がええぞ」


「まー、本人はあんなですが」


チラッと見るとモザイク。


「あ、あはは…」


「これは彼が悪いのよ、あなたが気にすることじゃないわ」


「しばらくこのままだと思いますけど、朋美さんはウチに来てて大丈夫なんですか? ミレイさんが半泣きでしばらくこっちには皆来られないって電話してきてたんですけど」


「私は私でオリジナルの私のための住所とかの手続きあるからちょっとだけ抜けさせてもらってるの」


「やっぱりややこしい」


なんとなく見たときの肌で感じる印象が違うってことしか私には分からないから、ちょっと気を抜くとどっちがどっちなのか分からなくなるから大変だ。理屈では分かるんだけど、いざそっくりさんって一卵性双生児いわゆる双子と変わらない。どうやって見分けるんだこれ。


「ところで瑠姫ちゃんの格好はなんなの?」


「ようやくツッコミが来た。実はかくかくしかじかで」


「うまうままるまるね。お嬢様も大変ね」


「それお主が言う?」


ともみんもいわゆるお嬢様なんだよなあ。生まれた国が国ならめっちゃお嬢様なんだよなあ。今でもお嬢様のはずなんだよなぁ。本人自覚無いけど。


「そういうことなら私が鍛える?」


「人間の範囲内のなんですけど」


「ちょっと、ちょっとちょっと。私を人間じゃないみたいな言い方」


「そのネタ懐かしいわねぇ」


ともみんのオリジナルでこっちのともみんより強いってことは明らかに人間の強さじゃないですから無理もありません。相手はオリンピックメダリストか同等って話なのに人外に鍛えられたら死んじゃいます。


「まあ、彼を助けたときよりもうちょっと過酷にすれば一週間でもオリンピック選手なんか楽勝だけど、やる?」


「え、一週間でオリンピック選手を?!」


「できらあっ」


それにしてもこのオリジナル、ノリノリですね。

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