変態で紳士
「今から式を執り行うからリエッセ、ウェディングドレスに着替えろ」
「誰が着替えるかこのパチンコ玉! 電球! ミラーボール! 太陽拳! ハゲ親父! 海坊主! 海ん中でスミでも吐いてろこのタァァァーコ!!!!」
「なんだと! いっこだけストレートに言うでないわ!!! まだ前髪が残っとるわ!!」
「父上!」
「なんだ」
「私も(毛根は)潔く諦めた方が良いと思います」
「お前に言われたくないわナイチチ!!」
「ぅわぁん!」
「連れ出せ! M2だろうが麻酔だろうがなんだろうが何を使っても構わん! 早くしないと奴等が来るぞ!!」
「! 奴等がってどういうことだ」
「…お前の仲間がバルトの海で暴れまわっとるわ」
「なに?! アイツら来てんのか?!」
「どんな手を使ってでも無理矢理にでも着替えさせい!」
「だぁー! 離せー!」
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「そろそろです」
「すいませんでござる案内してもらって」
「ぶっちゃけ隣国の皇子とかありえないんで、いちファンとしては誘拐してもらった方が万々歳です」
「そこまでだ!」
「おっと」
「この先へは通さん!」
ブッ飛ばした兵士を脅し城内を案内させ、あともう少しというところで大量の兵に行く手を阻まれるでござる。
「May! そこをどきなさいでござる!」
「やだ!」
「ええい! 雑魚に構ってる暇などないというのに! 押し通ぉぉぉぉる! どすこいどすこいどすこいどすこいどすこいどすこいどすこいどすこいどどどどどどどすこい!!!!」
「ぐわあああ!!!」
囲んできた兵士達を無理矢理押しのけて中庭へ出る。とちょうどそこへ手枷に鉄球を嵌められ連れてかれているリエッセさんとかち合ったでござる。ヘシン! してないあたり恐らくあの手枷も鉄球もM2素材か。
「リエッセさん!!!」
「タケ! タケマサぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ウェディングドレス似合ってます!! 主に胸元と太ももが!!」
「呑気なこと言ってねーではよ助けろや! ブチのめすぞ!!!」
「リエッセさんになら喜んで!!!!」
「お前は頭のネジどこに忘れてきたの?!」
「もう通さんぞ!!」
またしても大量の兵に行く手を阻まれたでござる。ううむ、いちいち相手をしてたらキリがない…。ここは一つ、味方にするしかないでござる。
「…諸君、俺達はこれから一つのおっぱいを失うのだ」
「!!!!!!」
「しかし、これは敗北を意味するのか? 否! 始まりなのだ!
アルシオーネの兵力に比べ、我がロイヤルセブンの人数は1万個分の1以下である。にもかかわらず今日までシコッてヌいてイッてこられたのは何故か?
諸君! 俺の戦う目的がハーレムだからだ。これは諸君らが一番知っている。
俺達は自由の生活を追われ、ただの変質者にさせられた。
そして、一握りの規制派らが世界に膨れ上がり地球を支配して数世紀、俺達が自由を要求して幾度踏みにじられたか。俺の掲げる人類一人一人の自由のための戦いを神が見捨てるはずはない。俺の嫁! 諸君らが愛しているリエッセ・ダリア・アルシオーネは知らぬ男と結婚させられる! 何故だ?!」
「私がなすりつけたからな」
「新しい時代の谷間を選ばれた国民が得るは、俺達、変態紳士の必然である。
ならば、俺達は裸ネクタイに扮し、この結婚を阻止しなければならぬ。俺達は慎ましくも過酷な貧乳を目の保養としながらも共に苦しみ、慰めあって今日の股間を盛り上げてきた。
かつて、俺は人類の革新は変態紳士たる俺達から始まると言った。
しかしながら地球の規制派は、自分たちが人類の支配権を有すると増長し俺達に抗戦する。
諸君の乳も、尻も、鎖骨も、くびれも、うなじも、ふとももも、ふくらはぎも、脇も 二の腕も! その無思慮な抵抗の前に死んでいったのだ!
この悲しみも怒りも忘れてはならない! それを、諸君らの姫は! 死をもって俺達に示してくれた!
…俺達は今、この怒りを結集し、規制派に叩きつけて、初めて真の勝利を得ることができる。
この勝利こそ、自由なくしてイッてしまった者達全てへの最大の慰めとなる。
国民よ勃て! 貧乳を巨乳に変えて、勃てよ! 股間よ!
俺達変態紳士こそ選ばれた民であることを忘れないでほしいのだ。
変態紳士である俺達こそ唯一人類を救い得るのである。ジーク・おっぱい!」
「死んでねえし示してねえしお前なんも言ってねえし変なルビ振るんじゃねえ!!! お前これやりたいだけだろ!」
「うん、まあね」
「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!! ( ゜∀゜)o彡゜おっぱい! おっぱい! ( ゜∀゜)o彡゜おっぱい! おっぱい!
」
「お前らも靡いてんじゃねえ!!!」
中庭へ出るとウェディングドレスを着させられたリエッセさんと恐らくお姉さんであろう女性、それと国皇らしきハゲがいたでござる。両手を手枷と鉄球で繋がれて無理矢理歩かされていた。たくさんの兵士を連れていて、その脇には見知らぬ男…? が怯えながらこっちを見ているでござる。
「長々演説やって語ってることはおっぱいだけかよ」
「人の嫁をどこへ連れていくつもりでござる!」
「貴様に我が娘を嫁にやった覚えはない。これから真の儀式を執り行うのだ」
「そ、そうだぞ! この女はボクんのだ!」
「ああ? アンタどなた?」
「ひいっ!」
この小枝みたいな男は何者でござるか。人の嫁をこともあろうにこの女呼ばわりとはチンコ八つ裂き光輪の刑でござる。
「メンチ切るなよ。この白もやしが相手だとよ」
「所詮貴様などお守りがいなければ何も出来ないただのガキ。フン、仲間はどうした? ひとりぼっちか? お似合いだな」
「ああ、アレのこと?」
バルト海で暴れまわる他七人。海は凍りつき、稲妻が降り注ぎ、巨大な樹がそびえ立ち、燃え盛る焔の翼が流星群の如く埋め尽くしている。さらに巨大なハンマー二つが戦艦をホームランしながら遊び、白いトラン☆ザムが拾った砲弾でサッカー選手のようにリフティングをしては蹴り飛ばしているでござる。カオス。
「のわあああ!! お前ら何してくれとんのじゃ!」
「なんともまあやってくれるな」
「あちゃー。ありゃあ兄上達は死んだか? ここにいないってことは向こうに出てるんだろ?」
「殺しはしないと思うでござる、…たぶん」
「ふふふふふざけるな! 貴様ら何をしているのか分かっているのか?!」
何をしているのか分かっているのか? 愚問でござる。
「取られたもんは取り返すでござる。そばにいて落ち着くと言ってくれた女を」
「国家が相手でも向かってくるとな? 感動的だな、だが無意味だ。やはり私が相手をしよう」
「そこをどけええええ!!!」
「ハアアアアアッッッ!!!」
一瞬の剣の閃き。
「…グフッ」
(流石の姉上でも今のアイツには…)
「…少年、いい強さだ。剣に迷いはなかった」
「あなたもでござる…」
バキッと仮面が割れる。仮面だけとはいえ、天照モードの吾が輩に肉迫するとは凄まじい…。額から血が流れ、顎を伝って滴り落ちる。危なかったでござる。
「つー…、いってえ。青龍たん、どうなってんでござる? あの人は」
「この人はリエッセさんよりずっと強いんですよ。異能も、武人としての強さも。強い強いチカラを感じます」
「そういえばこの国の皇族は代々異能者とか聞いたような聞かないような。ということはトモミンと同じでござるか? そりゃ強いワケだ」
「くっ、くそっ! この役立たずが! こうなれば最後の手段だ! おい!」
「皇子なにをする!」
「! やめっ」
手枷をぐいっと引きつけると顔を両手で掴み顔を近づけ口づけをしようとした。ちょっと歯ァ食いしばれやこのクソ野郎!!!
「吾輩の奥さんに手を出すなぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ぐはあああぁぁぁぁぁぁ!!」
右ストレートでブッ飛ばす。真っすぐ行ってブッ飛ばす。ズデンズデンと地面を転がり土にまみれ動かなくなった。起き上がってやり返してくるかと思ったけど、少しの根性もなかった。うずくまって泣き出したでござる。
「くそっ!! くそっ!! くそっ!! なんでお前みたいなヤツばっかり! こんなはずじゃない! こんなはずじゃなかったんだ…!」
「アータが今までどんな境遇だったのかなんて興味ないし、知らねえでござる。だけどね、誰だってこんなはずじゃなかったって思って生きてるでござる」
吾が輩の人生もね。