奪いました( ー`дー´)キリッ
前回。
黒猫になって魔界から脱走した魔王・織田信長を追っかけて街中を大爆走。十字路を曲がったところで静かに怒りのオーラが出ちゃってる濃姫さんが待ち構えていたでござる。
「新しい嫁ってなんですか」
しかもノッブさんは魔界で新しくお嫁さんを作ってしまっていた。一回死んでるからこう言うのは正しいのか分からないけど、つまりは浮気したってことでござるな。
「いや、あの、魔界で暴れてる時に出会いまして…、その」
「その?」
「む、娘もいたりして…」
アカン、これはアカン。
「おい、信長。お前こっちに子孫いるだろ、なにやってんだ」
「いや~それがなかなか武闘派なのに可愛くてだな~胸はそうでもないが背が高くてスレンダーで腰回りがたまらんのでな~プリプリの尻が…ハッ」
「…」
バカだ。正妻目の前にして新しい嫁のノロケ話とは…さすが歴史の偉人は違うでござるな。吾が輩もまだまだでこざる。見習わなければ。
バチコーン!
「ギャフン!」
濃姫は尻尾を掴んで持ち上げそのままノッブさんを無言で思いきり地面に叩きつけたでござる。凍りついたままの無表情が恐い…。
「行きます」
「え?」
「ど、どこへ…?」
「魔界です」
修羅場が待っているでござる…。
「待て濃姫待ってくれ! それだけは勘弁してくれ!!」
「待ちません勘弁しません。あなたのことです、城も建てたのでしょう。魔界の城まで行きますからその女を連れてきなさい」
「いや、それは、あの…な」
「連れてきなさい」
「はい」
こええ。あまりの恐ろしさでチビっちゃいそうでござる…。
「ちくしょう、お前ら覚えとけよ…。ぜってえ覚えとけよ…」
「早くしろ」
「はい…」
い、一件落着…?
「そこのお二人」
「ぴゃい!」
「お前ビビり過ぎだろ」
だって恐いものは恐いもん! 妖怪や化け物より目の前のこの人の方が恐いもん!
「手続きがあるようですから後日、人を寄越します。お礼はその時に」
「え、ああ、はい、分かりましたでござる…」
人の裏表っていうのは実に恐ろしいものでござる。ついさっきまで氷河期到来していたのに今はやわらかい穏やかな微笑み。まるで春の陽気でござる。
(魔界から来るっていうのは人なのでござるか…? 魔物とか魔族じゃなくて? 大丈夫? 手足付いてる?)
「では、私達はこれで失礼いたします。おい早くしろ」
「はい…」
黒猫のノッブさんと和服美人の濃姫は、吾が輩達に背を向けて歩き出すとスーッと姿が消えていったでござる。ノッブさんには悪いけどこれも100兆のためでござる。願い一つは何にしようかなあ。
「さーってと、帰るか」
「気が付けばもう夕暮れでござるなあ。あ、夕飯炊いてない」
「うーん70兆か、なにするかのう」
ん?
「お師匠さま、賞金は山分けって話でござる」
「7:3な」
「いやいや最初に吾が輩が見つけたんだから言うなら吾が輩が6でござる。お師匠さまが4」
「ああ? お前は師匠より多く取ろうってのかい? 通報して濃姫呼んだのあたいだよ、 8:2」
「いやいやいやいや」
「書類にあたいの名前だけ書いてもいいんだけどねえ」
「ひっ、卑怯でござる」
「別にどっかに寄付しちゃってもあたいはかまわないんだけどねえ、9:1」
「7:3でいいでござる…」
「よっしゃ今日は呑み明かすよ!」
あー、この狐早く退治されないかなー。
「ただいまー、でござる…」
ほんの三時間、四時間くらいのことなのにどっと疲れたでござる。怒濤の勢いで物事が進んで最後は
「タケちゃん愛人ってどういうこと?!」
「ああもうまだナレーションの途中でござる」
リビングに入った途端におかえりの一言もなく突然母上に肩を掴まれた。
「お兄ちゃんおかえりー」
「ただいまーでござる。妹君喋ったね?」
「ねえ愛人ってどういうこと?! 誰の愛人やってるの?!」
「位置的に逆だし、あれはあの人の冗談でござる。からかわれてるだけ」
鬼気迫る勢いで吾が輩に迫る母上。おっぱい当たって潰れてるでござるよ。爆乳は凄いでござる。柔らかいとか気持ちいいとかもあるけど圧力を感じるでござる。
「なーんだねんまつ」
「妹君もよく知らないでホイホイ喋っちゃダメでござる」
「えー、だってお兄ちゃん知らない女の人ばっかり連れてくるじゃん。私がいないときに小学生も連れ込んだんでしょ? 今度はまた知らない女の人だったし」
「連れ込んだとか人聞き悪いでござる。スーさんは中国の時からだし、今日のあの人とはもう十年ちょっとの付き合いで最近始まった話じゃないですしおすし」
「タケちゃん、その人名前なんていうの?」
しまった。な、名前? そりゃあ九尾の狐ですよ…? ってそんなこと言えないでござる。ええー…どうしよ。
「よ、妖狐さんでござる」
「ヨーコさん? 普通の名前ね」
間違ってはないはず、間違ってはないはず。だって自分で万年妖怪って言ってたでござる。
「お兄ちゃんって年上の女の人ばっか連れ込むよね。ひょっとして年上が趣味なの?」
(妖狐さんはめっちゃ年上だけどね…)
「ああでもこの間タマちゃんから聞いたわよ、ハワイ行ったとき女子高生とラブラブだったんだって? んでレイミちゃんとその子と消えて朝まで帰ってこなかったとか」
「姉上ぇぇぇー!」
余計なオヒレ付けて何を言ってるでござるかあの人は! ちゃんとアメリカ海軍の偉い人の接待って言っといたのに…。つーか吾が輩を呼びに来たの姉上なのに…。
「ところでタケちゃん」
「はい」
「はいじゃなくて、ごはん作って」
「はいはい」
<ピンポーン!
インターホンが鳴る。こんな夕暮れにお客さんとは珍しいでござる。しかし吾が輩はごはん炊いてすらないし、ということで
「妹君、GO」
「え~」
「え~じゃない。吾が輩ごはん作らなきゃいけないから」
「は~い」
妹君を玄関に向かわせて吾が輩は冷蔵庫を開く。冷凍庫ものぞくけどコロッケやメンチカツ、餃子に春巻きといったいつものヤツばっかりでござる。
「今日はまだなんにも考えてないでござる」
「なんでもいいんじゃねぇ? あるもので間に合わせれば。家庭持ちでもOLの一人暮らしでも変わんねえよ」
「そうでござるね」
……………………………………………………………。
「瑠姫ちゃん? 知らない人家に上げちゃダメよ?」
「だって結婚を前提に付き合ってます、恋人ですって言うから、玄関で話すのは失礼かなって」
「瑠姫ちゃん? お財布渡すからお赤飯買ってきて。タケちゃんは何股してるのか聞かせてもらおうかしら」
「大丈夫ですよお義母さん、ちゃんと交際してるのは私だけですから」
「大嘘つき。お義母さんじゃなくて、なんでここにいるでござる」
「だってLIMEも電話も出ねーんだもん、そりゃ来るだろ」
「あの、タケちゃんとは本当にそういうご関係で?」
「ファーストキス奪いました」
「「おおおおおおおおおおお!!!!」」
「イケボすんのやめて」
あー、おかず何がいいかなー。